「コリジョンルール」で何が変わった? ベースボール・グラフィック・レポート

【データおよび画像提供:データスタジアム】

 答えは2の「ランナー二塁から外野へ単打でホームイン」だけ、である。

 昨季は55%の割合で生還したところが、今季は64%まで増加。昨季は年間通して、今季は開幕1カ月分とサンプル数の違いこそあるものの、10ポイント近く増えたのは、大きく変化したといって差し支えないだろう。

 このシチュエーションで記憶に新しいのが、5月11日の阪神vs.巨人戦(甲子園)。巨人1点リードの3回表、2死二塁から脇谷亮太の打球はセンター前へ。これを阪神のセンター・大和がさばき、本塁へ矢のような送球。ボールは二塁走者・小林誠司が本塁へ滑り込む前に捕手・原口文仁に届き、待ち構えるようにしてタッチ。アウトでイニング終了……と思いきや、リプレー検証の結果「コリジョンルール」が適用され、一転セーフに。原口が禁止されている走路の封鎖を行ったこと、これが同ルール適用の理由だった。

 結局この後も巨人打線がつながり、ジョーンズの適時打で脇谷も生還。昨季までなら入っていない“おまけの1点”を取った巨人がそのまま試合を制し、「コリジョンルール」の存在感の大きさを感じずにはいられなかった。

【データおよび画像提供:データスタジアム】

「コリジョンルール」は刺殺する側に“ひと手間”かかることから、走者の本塁突入すなわち得点機の増加が想定されていたのは、上記のとおりだ。「犠牲フライで三塁から生還」も微増となっているが、一方で4月だけのデータを見る限り、「ゴロゴー」のケースでは生還率が減少している。

【データおよび画像提供:データスタジアム】

 最終的にはシーズン通してどうなるかを待ちたいが、現状で考えられる要因としては、外野手が第一捕球者(打球を最初につかんだ野手)であることと、内野手が第一捕球者であることの違いだろうか。本塁までの距離は大多数の場合において後者が近く、一般的には送球距離の短い方が正確に目標へ投げられる。内野守備もより浅めの体制で、三塁走者を生還を防いでいるのかもしれない。

 この点も含めて、ファンとしては野球の新たな見どころが加わったのは間違いないだろう。ただ、本来の目的は無駄な衝突を回避し、選手生命を伸ばしてあげること。現状、本塁でのクロスプレーが原因でケガを負った等の話はほぼ聞かれない。それがルールを導入して一番の“成果”である。

(文:加賀一輝/スポーツナビ、グラフィックデザイン:澤田洋佑)

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