アンディ・サワー、“キック引退”の真相

遠藤文康

突如オランダで広まったアンディ・サワー“キック引退”の噂…その真相とは? 【Ben Pontier】

 元K−1 MAX王者アンディ・サワーの“ラストファイト”という情報が唐突にオランダで広まった。情報そのままにサワーがキック界から引退するものとして関係者に急速に噂が拡大されていった。サワーも33歳。引退してもおかしくはないが、これほどの大物選手だ。引退ならばもっと先々から宣伝PRもいろいろと打てただろうと残念に思ったので、「WFL3」大会当日、サワーにその真意を訊いた。するとサワーからは意外な返答だった。

MMA集中のためキックは一時休止へ

――引退を決意したのは?

サワー 引退じゃないよ(苦笑)。休止さ。ラストファイトという表現が引退と解釈されたみたいだけど、そうじゃなくて、今後はMMAに集中したい自分がいるので、当面キックボクシングは休止という意味でのラストファイトということさ。

――そういうことでしたか。MMAに専念となると舞台は?

サワー 現在の交渉先はアメリカと日本の2団体。中々すんなりとは決まらないな。交渉真っ最中という段階。いずれ決まるだろうからその時に正式発表するさ。

――シュートボクシング(以下SB)とは?

サワー SBは年1ぐらいで試合するかどうかという感じだろうなあ。やらないかもしれないし。やっぱり当面はMMAに集中したい。

――将来的なキック再開は?

サワー 自分にふさわしい相手が登場してきたらその時の状況で決めます。今の僕にとって対戦相手は誰でもいいというわけにはいかない。僕とやりたいという若手がいるのも分かるけど、僕にだって胸を貸したい気持ちもあるけど、これからは自分が築き上げてきたキャリアにふさわしい相手とやりたい。決して傲慢な意味じゃなくてね。僕だっていつまでも若くはない。もう33歳だ。キックがあと何戦できるかも限られてくるしね。

 キック界からの引退ではなく、キックの一時休止という意味での“ラストファイト”。そのラストファイトの相手はモハメド・カマル。K−1 MAXオランダ王者でもあった彼だが日本での知名度は低い。現在25歳のカマルはオランダ新世代の70kgトップ。ピーク時を過ぎ現状維持ギリギリのサワーと新世代の先頭を走る上昇中のカマルがぶつかる新旧戦。フルラウンドに渡り一瞬の休む間もない攻防が場内に揺れと歓声と怒声を生んだ。

新世代カマルとの激闘を制し17本目のベルト

若さ、パワーで勝る新世代カマルと一進一退の激闘 【Ben Pontier】

 WFL世界タイトルマッチとなったこの試合は国家演奏から開始。両選手の姿が面白い。カマルがまるでSBのスパッツ姿でサワーはMMAパンツのような出で立ち。
 開始とともにパワー全開で襲いかかるカマル。破壊力抜群のパンチだ。まともに被弾すればKO。それを紙一重でかわすサワー。たったこれだけの序盤の攻防にリング下では興奮したファンの喧嘩が勃発し試合が一時中断する。カマルも呆れ顔だ。

 再開となり両者の激闘は一進一退。カマルは額をサワーは目じりをカット。都合ドクターチェックが3回も入る。ドクターも巻き込む全力の戦い。そして再開すれば一歩も退かぬ両者。互いに倒すことしか考えていない。中盤からサワーはヒザを駆使し顔面に叩き込む。
 3Rタイムアップ間際にそれは訪れた。わずかなワンチャンスにサワーがパンチをまとめてダウンを奪い判定が決した。巻き返す時間はなくカマルのサワー越えは失敗した。

新世代カマルを下し存在感を見せつけたサワー 【Ben Pontier】

 若さ、パワーそして破壊力がカマルにはあった。パンチでKOする自信満々だった。そしてその可能性が高いことをカマル関係者は期待していたし、サワー関係者は微妙に心配していた。
 短期決戦狙いで襲い掛かるカマル。しかしカマルが踏み出そうとする呼吸に合わせて瞬時の動作でカマルの気持ちの出鼻をくじくサワーの防御。かまわずに飛び込むカマルのパンチは打点が微妙にずらされている。逆に一瞬の隙に綺麗に顔面を貫くサワーのパンチ。カマルのダメージが蓄積する。カマルが当初描いた流れとは何か勝手が違う。この何かこそがサワーのサワーたる所以。
 カマルはパワーアップのため筋肉を鍛え上げていた。そのせいかカマルの動きは徐々に疲れをみせた。勢いで突進し続けたカマルは最後に失速。プロボクサーでもあるサワーのパンチの前に沈んだ。立ち上がって試合終了。

 サワーが何者であるのかをオランダの関係者もいま一度認識を新たにしただろう。カマル本人は五体でそれを学んだだろう。深い攻防と劇的な結果に互いのファンの感情も昇華され観客全員が満ち足りた気持ちに浸った。濃密な9分は本年のベストバウトだろう。

 ちょっとした隙、ちょっとした油断、ちょっとした気持ちの揺れ、対戦相手のそれらを決して逃すことなく攻め込み、試合の流れを自分の方へ手繰り寄せるサワー。これこそがサワーの真骨頂だし、K−1やSBで複数回の優勝を遂げイッツ・ショウタイムの70kg世界王者としてのラストエンペラーでもあるサワー。保持した世界ベルト17本。これがサワーのキャリアでありその実績と経験は非凡である。サワーがキック界に再び復帰するのはいつだろう?

マサロ・グランダーが無名選手に敗れる波乱

【Ben Pontier】

 またWFL恒例の4名トーナメントが3組おこなわれ、その全てをマイクスジムが制覇するという偉業を達成。しかしながらマイク会長の秘蔵っ子マサロ・グランダーがワンマッチ戦に出てダウンを奪われ敗北という厳しい結果もあった。グランダーは65kg〜72kgで試合可能としているので、あちこちの主催者からオファーが多く毎月のように試合をしている。今回は72kg契約だったが力及ばず危うくKO負けとなるところを判定負けに堪えた。試合ウエイトを考えた方がいいだろうと思える一戦だった。

■メルビン・マヌーフ主催「WFL3」
4月3日(現地時間)オランダ・アルメレ市トップスポーツセンター

<WFL70kg世界タイトルマッチ>
○アンディ・サワー(Tサワー)
(判定3−0※3Rにカマルにダウンあり)
●モハメド・カマル(ボスジム)

<スーパーマッチ 72kg>
○モハメド・メッサオウディ(シムソンジム)
(判定3−0※2Rにグランダーにダウンあり)
●マサロ・グランダー(マイクスジム)

スピーディなグランダーとスローなメッサオウディ。72kg契約の試合はグランダーの思惑通りにはならなかった。打撃が軽いので72kg戦では相手にダメージが与えられない。一方のメッサオウディはスピードに遅れたもののグランダーの攻めに合わせた右フックと左アッパーで2R終盤にダウンを奪う。立ち上がったグランダーだったが足元がおぼつかない。レフェリーによってはKOを宣告する人もいるだろう。何とか3R最後まで持ちこたえたが試合ウエイトはもう少し軽い方がいいのではないかと思えた。全く無名ながらメッサオウディのような選手がフラリと登場し有名選手をKO寸前に追い込むのだからオランダは面白い。

<ヘビー級トーナメントファイナル>
○ファビオ・クワシ(マイクスジム)
(判定3−0)
●サム・デベッテ(マヌーフジム)

巨漢のテベッテは初戦を豪快なKOで突破。クワシの初戦は日本の巌流島初代王者のブライアン・ドウワス。ドウワスの度重なるクリンチホールドに大ブーイング発生しクワシ判定突破。決勝はスタミナ切れのテベッテがグダグダとなり優勝はクワシ。

<76kgトーナメントファイナル>
○マーテル・フルンハルト(マイクスジム)
(3RKO 右フック)
●セム・ブラーン(メジロ)

ブラーンはベテラン。キャリアも経験も豊富。フルンハルトの攻めを老獪にかわし何となく優勝の可能性が見え始めた。しかし終盤で勢いのあるフルンハルトの攻めにつかまり右フックを受けてKO負け。

<レディース65kgトーナメントファイナル>
○アニッサ・ハドーイ(マイクスジム)
(判定3−0)
●イロナ・ウィリアムス(マヌーフジム)

ウィリアムスは半年前の同大会の61kg女子トーナメントで優勝し7500ユーロ(約100万円)を得ている。今回は65kgにもノミネートし決勝進出。マイクスジムのハドーイは大舞台は初参戦。結果はパンチで攻め込んだハドーイがうれしい優勝。
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