監督の交代劇が少ないエールディビジ フィテッセのマース監督の行く末は!?
アディショナルタイムのゴールで何とか競り勝つ
フィテッセの太田(左から3番目)は安定して左サイドバックとして出場し続けているが、左ウインガーが定まらない 【Getty Images】
「アイツが前に行くのか足元で受けたいのか全然分からなくって……。(ラシツァから)『最初フェイクを入れて、裏に抜け出してとか、ちょっといろいろやるから見ておいてくれ』と言われたんですが、それが分かりにくくて四苦八苦しました。試合中、ずっとコミュニケーションを取りながらやっていました」
前半34分、イサヤ・ブラウンのスーパーゴールでフィテッセは先制したものの、後半14分にローダJCの2トップ、ライデル・プポンとマイク・ファン・ダウネンのコンビに崩されて失点し、アディショナルタイムに入って試合は1−1のまま。フィテッセとマース監督への重圧は増していったが、途中出場の中国人タレント、ユニン・チャンの貴重な初ゴールが決勝点となり、2−1で何とか競り勝った。
「監督がだいぶホッとしたと思います。試合前と違って、試合後は大分リラックスした表情をしてましたから。いやー、監督が一番ホッとしたんじゃないですか」
オランダ語の新聞は読めないものの、太田は紙面の作りから、マース監督に相当なプレッシャーがかかっていたことを理解していた。
「俺は新聞とかを読んでも何も分からない。でも、この間の試合の後の新聞で、ペーター・ボスとロブ・マースの大きな写真が載っていた。『多分批判している内容だな』と思いました。監督の近くに新聞が置いあって、『あ、これ見せないでおこう』と思ってナチュラルに新聞を閉じました(笑)」
これも太田なりのコミュニケーションだろう。
コミュニケーション能力の上がっている太田
「もうちょっとチャンが早く出てきてくれたら、俺もクロスで終わることができる。アイツは結構狙ってくれているから、練習でも合うんですよ」。そう言ってから太田はため息をついた。
「今日も前半にイージー(イサヤ・ブラウン)にクロスを上げたら、(監督が)『上げんな』って超キレていた。イージーは足元でボールを欲しいんですよ。でも、監督は俺の後ろで『上げろ上げろ』と言うし」
チェルシーから期限付き移籍してきたブラウンはまだ19歳。フィテッセはこうした若い選手が多い。
「みんな若いからうまくいかない時の文句の量がすごいけれど、調子に乗ればいいんですけどね。やっぱり今日も失点した時ぐらいから、ゲームの中の雰囲気がだいぶよくなかった。だから意識的に声を出すようにしました。『カモン、カモン! カモン・ボーイズ!!』って」
そして、太田は少し目を輝かせながら「最近、練習以外でもコミュニケーションが取れるようになってきたんですよ。英語もちょっと上達してるかもしれないです」と言うのだ。
「最近、英語が(文法や発音が)合ってなくても喋ろうと思っている。最初からそういうスタンスでいましたけれど、もっともっと喋っていかないとダメだと思ったら、だいぶコミュニケーションが取れるようになりました」
ローダ戦の出来がよくなかったことは太田本人も自覚している。しかし、フィジカル改善の成果は、当たり負けしない体となって試合の随所に表れている。次節は3位フェイエノールトとのホームゲーム。6位のフィテッセにとって大事な一戦となる。この試合には、太田の母と兄もアーネムへ駆け付ける予定だ。