ストライカーが育ちやすいオランダの環境 2部で下積みを経験したFWが1部で躍動

中田徹

デ・フラーフスハップのフェルマイが2ゴール

フィテッセ戦で2ゴールを決めたフェルマイ(右)。オランダでは今季、2部リーグを経験したストライカーの活躍が目立つ 【VI-Images via Getty Images】

 近年のオランダリーグのチームにしては珍しく、デ・フラーフスハップはイングランド型のサッカーを志向している。2月21日にエールディビジ第24節で対戦したフィテッセの左サイドバック、太田宏介も「今までのチームとは違うサッカーだった。本当にフィジカル重視というか、“ゴリゴリ系”で。そういう難しさはありました」と感じていた。

 試合は16分、フィテッセがMFマーベラス・ナカンバの強烈なミドルシュートで先制したが、ホームのデ・フラーフスハップは縦に速いサッカーで反撃し、ストライカーのビンセント・フェルマイが40分、47分と連続ゴールで逆転した。

 肉弾戦を厭わないデ・フラーフスハップの“骨太なサッカー”に苦しめられたフィテッセだったが84分、MFルイス・ベイカーが枯れ葉の舞うような軌道のブレ球シュートを決めて2−2に追いついた。90分には太田がこの日、2枚目のイエローカードを受けて退場するアクシデントもあったが、試合はそのまま引き分けに終わった。

 太田は1試合の出場停止処分となる。

「(東アジア選手権、アジアカップ、フィテッセ移籍のため)丸2年、ずっと休みなしで来ているし、ちょっと遅目のウインターブレークと捉えて、ゆっくり体を休めます」

 この日のヒーローは2ゴールのフェルマイ(21歳)だ。彼は昨季、オランダ2部リーグで18ゴールを記録し、デ・フラーフスハップの1部昇格に貢献したストライカーだ。1部リーグデビューイヤーで、ここまで6ゴールというのはまずまずの数字だ。

 フェルマイと2トップを組んだカス・ペータース(22歳)は昨季、エメンの一員としてオランダ2部リーグで23ゴールを決め、ポルトガルリーグのナシオナルへの移籍を決めた。現地へ行ってみると、金銭面のトラブルが起こり、すぐに退団せざるを得なかったが、その後デ・フラーフスハップへの加入が決まった。サイズがあって、ポストプレーも巧みなストライカーだ。

下積みを経験したストライカーたちが活躍

 今季のオランダリーグは、2部リーグで下積みを経験したストライカーの活躍が目立つ。ヘラクレスのワウト・ウェフホルスト(23歳)は2シーズン、オランダ2部リーグのエメンで実力を付け、昨季ヘラクレスへ加入した。それまで全く無名の存在だったウェフホルストだが、1部リーグデビューイヤーでポテンシャルの高さを見せつけ、オランダU−23代表に選ばれた。今季も24節終了時点で7ゴールを挙げ、ヘラクレスの5位躍進に貢献している。

 ズウォレのストライカー、ラルス・フェルトワイク(24歳)もスケールの大きなストライカーだ。彼はエクセルシオールで30ゴールの固め取りしてオランダ2部リーグを卒業し、ノッティンガム・フォレスト(チャンピオンシップ、イングランド2部リーグに相当)へ移籍したが、思うように活躍できなかった。今季からオランダへ戻ってズウォレに加わると、23節のフェイエノールト戦で2ゴール1アシストの大活躍でチームを3−1の勝利に導き、オランダ中に名を知られる存在となった。24節のADOデンハーグ戦では角度のないところから豪快なボレーシュートをたたき込み、今季12ゴール目を記録。得点王争いでハーフナー・マイク(ADOデンハーグ)、セバスティアン・ハラー(ユトレヒト)と並び6位になった。

 今、オランダで最もホットなストライカーは、AZのビンセント・ヤンセン(21歳)だろう。彼はフェイエノールト・ユースからトップチームへ昇格できず、オランダ2部リーグのアルメレ・シティで2年間研さんした。1年目に10ゴール、2年目に19ゴールを挙げるうち、オランダの中堅クラブのスカウトから注目されるようになり、オランダU−23代表でも活躍するようになった。今季、AZにステップアップすると、第19節のフェイエノールト戦でハットトリックを達成。22節のフィテッセ戦では、ボールを浮かせてマーカーの頭上を越し、その落ち際にボレーで合わせてループシュートを放つという芸術度の高いゴールを決めた。ここまで今季のゴール数は15。すでに合格点の数字だ。得点王争いでトップに立つルーク・デ・ヨング(PSV)との差は、わずか2にすぎない。オランダでは「3月のインターナショナル・マッチウイークで、ヤンセンがオランイェ(オランダ代表の愛称)に選ばれるのでは!?」と高い期待が寄せられている。

1/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント