フィテッセ太田宏介がオランダ初アシスト 「ネットが揺れた瞬間ホッとした」

中田徹

「狙っていた形」で2点目を演出

加入後チームの主軸として活躍する太田は、6試合目となるヘーレンフェーン戦でオランダリーグ初アシストを記録した 【Getty Images】

 太田宏介が所属するフィテッセは今季前半戦で「オランダで最も面白いサッカーをするチーム」と高い評価を得ていたが、太田が加入した今年に入ってからは1勝2分け2敗と調子を落としていた。サッカーの内容も物足りないものが続き、前節(第22節)のAZ戦(0−1)後は「今週の練習は結構張り詰めた雰囲気だった」(太田)という。

「ミニゲームでも、負けたらスプリントとか、かなりキツイ罰ゲームを付けたり。俺、負けてめちゃくちゃ走りましたから(苦笑)。紅白戦をやるにしても『勝利に向けて貪欲になれ!』と」(太田)

 こうして迎えた2月13日(現地時間)のヘーレンフェーン戦。フィテッセは立ち上がりから一対一の競り合いに果敢に挑み、攻守の切り替えで相手を圧倒し続けた。オランダに来てからの5試合、相手との間合いを探りながらの守備をし続けていた太田も、この日は対面のアーバー・ゼネリとの間合いを詰めて自由にさせず、アグレッシブなプレーを披露した。

 フィテッセが1−0でリードしていた44分、ポジションを中に絞った左ウイング(WG)のデニス・オリニクにセンターバック(CB)アーノルト・クラウスバイクがパスを出した。太田が大外からオーバーラップする気配を感じたオリニクは、ボールに触らずスルー。これで太田は左サイドで完全にフリーになり、バレリ・カザイシュビリへ丁寧にグラウンダーのクロスを入れて、チームを2−0に導いた。過去の5試合、太田は何度もクロスやFKから絶好機を演出していたが、これでやっとオランダリーグで初アシストを決めたのだ。

「練習でも、ミーティングでも狙っていた形でした。ネットが揺れた瞬間、ホッとしました。あれはもうCBクラウスバイクと俺の関係だけでなく、左WGオリニクの中へ入るタイミングとスルーもあって抜け出せた。みんなで崩せてよかったです」

 後半早々に3−0とすると、ヘーレンフェーンは戦意を喪失。フィテッセのロブ・マース監督は会心の勝利に「ベンチで試合を楽しんでいたよ」と喜びを表した。

“オランダ仕様の守備”でも貢献

太田(左)はトマソンコーチ(右から2人目)と毎試合後守備面での改善点を話し合い、“オランダ仕様の守備”を意識するようになった 【Getty Images】

 これまでも太田の左足は相手にとって脅威となっていたが、守備でノッキングを起こしていた。太田にとっては“正解”と思っていた守備の仕方でも、チームからしてみれば“修正の必要あり”の箇所があったのだ。

「(ロブ・)マース監督、(ヨン・ダール・)トマソンコーチを含め試合が終わるごとに守備の良くなかった面をミーティングして話し合って、指摘されたところをしっかり今日の試合では表現できたと思います。ファウルしてでも俺のところでボールを止めることが大事かなと思って、前を向かせないことだけ考えました。ちょっと“オランダ仕様”の守備をしないといけないと思っていました」

“オランダ仕様の守備”とは……。

「ガツガツいかないと怒られるから。(対面の選手を)前向かせると怒られます」

 一対一の守備で、ディレイに逃げることをオランダ人は嫌う。

「はい。FC東京の(マッシモ・)フィッカデンティ監督は、常にディレイでした。そういう違ったサッカーをやれて楽しいです」

 一対一でズルズル下がることなくゼネリとのデュエル(一対一の局面)で体をぶつけに行った太田は、守備の面でもチームに機能したのである。

「今日は吹っ切れてやれました。守備にしても攻撃にしても、久しぶりにやりたいようにやれた。ほとんどミスもなかったと思います」

 テレビ解説を務めたヘルト・クライスが「今日の太田は良かったじゃないか」と微笑みかけてきた。あとは、このクオリティーのプレーを毎週保ち続けることが肝心だ。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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