低迷するレッドソックス、復活のカギは? “ビッグパピ”最終年に高まる期待

杉浦大介

プライス(左)の活躍がレッドソックス浮上の鍵を握る 【Getty Images】

「公約その1:毎年10月にプレーオフに進出することを目指し、究極の目標はワールドシリーズ制覇とする」

 2016年のレッドソックスのメディアガイドを開くと、前書き部分にはそう記されている。最近の成績を考慮すれば、「公約(Commitment)」というよりも単に「目標」と記すべきだったのかもしれない。

 04年以降に3度も世界一に輝いた強豪も過去2年連続、4年間で3度もア・リーグ東地区で最下位。この2年はメジャー4位以内の金額をペイロール(年俸総額)に費やした上での成績なのだから、“惨敗続き”と受け取られても仕方ない。

 13年にほとんど奇跡的な形で世界一になったおかげで、しばらくは許されてきた。それでもここ6年でプレーオフ出場が13年の1度だけでは、ファンもそろそろいら立ち始めるはずだ。

 ただ……そんな迷走する名門チームの評判が、今春はなかなか良い。

 米国唯一の全国紙である『USAトゥデイ』紙は今季の勝ち星を88勝、野球専門のデータサイト『ファングラフ』は同92勝と予想。どちらもレッドソックスがア・リーグ東地区を制すると見ている。

 スポーツ雑誌の老舗『スポーツ・イラストレイテッド』のパワーランキングでも30チーム中8位にランクされ、地区内ではトップ。こういった高評価の背景には、今オフのレッドソックスの補強策、そしてそれを可能にしたデーブ・ドンブロウスキー氏への信頼があるに違いない。

補強と育成でバランス良いチームに

 チームの立て直しを念頭に、昨夏に野球運営部門の社長に就任したドンブロウスキー氏の新たなチーム作りが始まった。タイガースを強豪に仕上げたベテランGMは、今オフまずFAで昨季18勝(5敗)の左腕デービッド・プライスを獲得。さらにトレードで5年連続39セーブ以上のクレイグ・キンブレル、昨季70試合に登板し防御率2.31のカーソン・スミスといったリリーフ投手を手に入れた。

 それに加え、ムーキー・ベッツ、イグザンダー・ボガーツ、ブレーク・スワイハートら自前の若手も順調に育っている。生え抜きと外様がバランス良くそろったロースターは、方向性が見えづらかった昨季までより一段上。群を抜いたチームが見えない地区内で、本命扱いされるのは納得できる。

 なかでも7年2億1700万ドル(約245億円)の新契約とともにエース役を託されるプライスに、“ア・リーグ東地区のディファレンスメーカー(違いを生み出す選手)へ”との期待がかかる。

「もう30歳だから、いつもうまくいくわけではないのは分かっている。ただ、多くのことを経験してきて、良いことも悪いことも、どう対処すれば良いのかを学んできた。今でも向上したいと思っているし、学び続けている。ボストンでプレーする準備はできていると思っているよ」

 インターネットで中継された昨年12月の入団会見時、プライスは自信に満ちた表情でそう述べていた。12年にサイ・ヤング賞を受賞した大型左腕は、過去にレイズ、ブルージェイズの一員として、この地区で活躍。フィールド内外でのリーダーシップにも定評ある選手だけに、本人の言葉通りメディアも厄介なボストンには適した選手なのだろう。

1/2ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント