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対照的な金本監督の怖、矢野コーチの明
宜野座で見えた猛虎の“超変革”

評判通りの活気あふれるキャンプ

新任の矢野コーチ(中央)は金本監督(左)とは対照的な明るさをチームにもたらしている
新任の矢野コーチ(中央)は金本監督(左)とは対照的な明るさをチームにもたらしている【写真は共同】

 今年も沖縄に行ってきた。宜野座村で行われている阪神の春季キャンプを見るためだ。私は毎年この地を訪れているのだが、今年は特に楽しみにしていた。なんといっても、目玉は金本知憲新監督が掲げるチームスローガン「超変革」。これまでのキャンプと比較して、どこがどう超変革なのか。興味は尽きない。


 私が宜野座を訪れたのは第3クールに入ってからだ。


 事前に各種メディアが発信する情報をチェックしたところ、今年の阪神キャンプは実に評判が良い。なんでも、以前より明るく厳しく、とにかく活気に満ちているという。


 実際に練習を見ると、確かに評判通りの活気を感じた。中でも目立ったのは、新任の矢野燿大・作戦兼バッテリーコーチの明るさだ。もともと爽やかな笑顔と朗らかな性格、そして饒舌ながらも知性を感じさせる話術など、すなわちタレント性の高さに定評があった矢野コーチだが、それはコーチになってからも存分に発揮されており、周囲を華やかにさせていた。ノックを打つ際には選手以上に声を張り上げながら、時にはギャラリーとも軽妙な会話を交わす。ファンもみんな笑顔だった。

息苦しくなるほどの緊張感も横たわる

 しかし、そんな明るさ以上に印象に残ったのは、活気ある練習の背後にどっしりと横たわる、金本阪神のもうひとつの顔。それは息苦しくなるほどの“緊張感”だった。


 その緊張感の源は、常にバットを片手に携え、厳しい表情で練習をチェックする金本監督の存在感だ。メディアからはしばしばユーモラスな監督談話が流れてくるため、私は矢野コーチと同じく明るい監督像を想像していたのだが、それは見事に外れた。練習中の金本監督は確かに選手に声をかけることが多いものの、目つきが鋭く、貫録あるオーラもまとっているものだから、雰囲気としては異様に怖い。現役時代にあれだけの実績を残したことから生まれるカリスマ性に加え、ユニホーム姿でもよくわかる筋骨隆々の肉体がさらに威圧感を増幅させる。バットが竹刀に代われば、こわもての体育教師みたいだ。


 そんな金本監督の怖さはブルペンをも包んでいた。捕手陣の背後に仁王立ちし、主に若手投手のピッチングをこれまたバット片手に凝視する。2013年のドラフト1位左腕・岩貞祐太には特に期待しているのか、ピッチングの途中で自ら左バッターボックスに入り、打者目線で岩貞の投球をチェックする場面もあった。


 これも迫力満点だった。通算2539安打、476本塁打の大打者が、現役時代と変わらない威圧感たっぷりの構えで投手・岩貞を鋭くにらみつける。対する岩貞はさぞかし緊張したことだろう。あきらかに肩に力が入っていた。


 それでも翌日の新聞などには、金本監督が岩貞の投球をたたえる巧みなコメントが掲載されているからおもしろい。メディアから伝わってくる金本監督の明るさとは、きっと取材慣れしている金本監督ならではの“練習後”のマスコミ対応によるものなのだろう。少なくとも、“練習中”の金本監督がまとっていたのは緊張感と怖さだった。

山田隆道
山田隆道

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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