ストライカーが育ちやすいオランダの環境 2部で下積みを経験したFWが1部で躍動
監督、クラブ、サポーターの我慢が必要
我慢して起用し続けることで、ヤンセンはゴールを量産するようになった 【VI-Images via Getty Images】
「今、オランダのクラブはどこもお金がない。だから、優秀なストライカーを買うことができなくなった。デ・フラーフスハップの場合、どんなストライカーがうちのサッカー(イングランドスタイル)に機能するか、よくチェックしている。しかし、フェルマイもペータースも、最初は1部リーグのレベルに苦労していた。われわれは最下位でウインターブレークに入った。17試合で勝ち点はわずか5だったんだ。だけど、われわれはストライカーに信頼を与えていた。少しずつ、本当に少しずつ彼らは成長していった。我慢が必要だったんだ」
オランダの監督は我慢強いということなのだろうか?
「いいや、違う。監督、クラブ、そしてサポーターだ。選手は我慢して使うことによって成長することを皆、理解している。われわれは彼らがしっかり機能することを確信して獲得しているから、そこに揺らぎはなかった。勝ち点5でダントツ最下位だったデ・フラーフスハップだけれど、今は17位で何とか自動降格圏を脱出できたよ。今年に入ってから勝ち点9を稼いでいるんだから、チームの成長は間違いない。ストライカーの成長もまた大きい」
フレーマン監督の話に目新しい物はないが、それでも十分に納得できる点は多い。専門誌『フットボール・インターナショナル』の表紙を飾るまでになったヤンセンも、開幕から7試合はノーゴールだった。ウェフホルストも、今季ずっと好調だったわけではない。しかし監督、クラブ、サポーターが我慢して使い続けることによって、やがて1部リーグのレベルに慣れ、2部時代と同じようなフィーリングでシュートを決められるようになったのだ。
オランダのストライカーは生き抜くすべを知っている
VVVの藤田俊哉コーチのスーンチェンス評はこうだ。「ラルフの良さはボールを取られない。大柄で動きが鈍そうだけど、実は器用でもある。あと、走れる。裏へ抜けるような走りはしないけれどね」
以前、藤田コーチからオランダ2部リーグのストライカー事情を聞いたことがある。
「2部リーグにも良いストライカーはいるよ。ゴー・アヘッド・イーグルスのデ・コーヘルなんてVVVに所属したことがあるけれど、ラルフをシャープにした感じの良いストライカーなんだ。オランダはストライカーが自然と生まれやすい環境。まず、この国はボールを持つことにプライオリティーを置く。サッカーの世界では、監督は勝つために守備から積み上げていくこともあるけれど、オランダの監督にとってサッカーはまず攻撃から。その中で、オランダのストライカーは生き抜くすべを知っている。だからレベルが上がっても、そこをかいくぐって何とかしようとする」
果たして彼らはJリーグで活躍できるだろうか。「間違いなくできる」と藤田コーチは断言した。
「だけど、オランダではストライカーに守備をそこまで求めないし、ラルフのように裏へ走って抜けようとしない選手もいるから、そこを見誤って獲得するとチームと合わないから気を付けないとね。でも、2部リーグのストライカーはJリーグのクラブにとっても安いし、実力も確かだから。いったん日本でプレーの幅を広くさせてやって、オランダ1部リーグに戻すということをしたら、Jクラブにとっても、選手にとっても“ウイン・ウイン”の関係になると思うんだ」
かつてオランダ2部リーグはクラース・ヤン・フンテラールやルート・ファン・ニステルローイが学んだ舞台。この偉大な2人の後継者としてヤンセンに期待がかかっている。その他にも化けそうな期待を持たせるストライカーたちが毎週、オランダで鎬を削っている。