レスターの強さは「バランスの良さ」 自信が膨らむ岡崎のチーム評

田嶋コウスケ

サプライズと言えるレスター首位

26節終了時で首位に立つレスターだが、シーズンが進むにつれ、岡崎(右)のチーム評も変化してきた 【写真:ロイター/アフロ】

 今季のプレミアリーグで、特大級のサプライズをもたらしているのがレスターだ。14日のアーセナル戦には敗れた(1−2)が、それでも26節終了時で首位。昨シーズンは残留争いに巻き込まれ、今季の開幕前にも英紙『ガーディアン』が行った順位予想で「19位」(=降格)とされていただけに、ここまでの成績は「驚き」を通り越して「奇跡」とさえ言える。首位のレスターから3位のアーセナルまで、わずか2ポイント差の大混戦で推移しているものの、まさかのリーグ優勝も夢ではない状況だ。

 筆者は、岡崎慎司の取材を通じて今シーズンのレスターをつぶさに見てきた。興味深いのは、試合を重ねるごとにチームとして成長し、経験を積み重ねることで「逞しさ」と「しぶとさ」を身につけてきたことである。シーズン前半戦はどこか勢い任せの大味なサッカーを展開していたが、やがて戦い方に安定感が生まれ、課題とされたディフェンスも強固になってきた(※19節から8試合で4失点。そのうちクリーンシートは5試合)。今や、マンチェスター・シティやリバプール、トッテナムといった強豪にも完勝するのだから、本当に大したものである。

 実際、シーズンが進むにつれ、岡崎のチーム評も変化してきた。「勝ち続けているのが不思議です」(11月7日)と首を傾げていたのが、順位を上げるにつれ「ここまでくると勢いだけじゃない」(12月14日)に変わり、最近は「(強さは)まぐれでじゃない」(1月13日)と胸を張るようになった。おそらく、中でやっている選手たちも、日に日に自信が膨らんでいるのだろう。

シンプルな戦術が選手にフィット

システムに最もマッチする選手をチョイスし、各々の強みを最大限まで引き出しているラニエリ 【写真:ロイター/アフロ】

 クラウディオ・ラニエリ監督率いるレスターの戦術をひも解くと、そこに複雑なメカニズムは見えない。イタリア人指揮官らしく、失点しないことに重きを置き、相手ボール時には4−4−2の「4DF+4MF」で守備ブロックを作る。陣形をコンパクトに保ちながらスペースを与えず、前線から岡崎を軸にプレスをかけていく。そして、ボールを奪うと一気にカウンター──。最後は得点源のジェイミー・バーディーが仕留める、という流れが基本型になる。

 少し乱暴な言い方をすれば、シンプルで分かりやすさを追求したサッカーで、いったん自陣で守備を固め、マイボールになれば前線に飛び出していくハンドボールやバスケットボールのような戦い方と捉えることもできる。加えて、チーム全体に浸透しているのが「ハードワーク」で、フィールドプレーヤーが労を惜しまず走り続けることも、レスターの強力なストロングポイントだ。

 ラニエリが優れているのは、このシステムに最もマッチする選手をチョイスし、各々の強みを最大限まで引き出していること。別の表現をすれば、手元にある選手から「チームの最適解」を導き出したと言える。レスターの強さを「バランスの良さにある」と指摘する岡崎は、次のように語る。

「みんなに役割がちゃんとあって、そこにフィットする選手が集まっている。各々が良い選手というより、このサッカーにフィットする選手が集まっているイメージ。実際、それぞれの選手に強みがある。例えば、(ウェス・)モーガンと(ロベルト・)フートのセンターバック(CB)は頭で跳ね返すのが強くて、クロスやCKでやられない。シュートを打たれても絶対に身体をぶつけるし、サイドから簡単にクロスをあげられても、やられる気がしない」

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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