中日・岩瀬復活へカギ握る2つの変化球 肘痛改善の一方、伝家の宝刀に異変も…

菊地高弘

キャンプ序盤からブルペンで精力的に投げ込む岩瀬 【写真は共同】

 キャンプインから間もない時期。中日・北谷キャンプのブルペンを見ていて、最も驚いたことがある。

 岩瀬仁紀の表情が、すこぶる明るかったのだ。

 キャンプ序盤にもかかわらず、捕手を座らせて70球を超える投げ込み。ブルペン捕手のミットからは重低音が響き、途中からは右打席にバッター役を立たせてインコースの練習をする熱の入れよう。それ以上に、時折笑顔を見せながら、心地よさそうに汗をほとばしらせている姿が印象的だった。これが1年半以上も実戦マウンドから遠ざかっている投手とは思えなかった。

「もう8割、9割」仕上がりは順調

「ブルペンでの腕の振りの強度は、もう8割、9割はきていますね」

 練習を終えた岩瀬は、淡々とした口調ながら仕上がりの早さを口にした。

 15年連続50試合以上登板、通算402セーブのNPB記録を持ち、通算889試合登板は歴代3位。米田哲也(元阪急ほか)が保持するNPB記録949試合まで、あと60試合に迫っている。

 もはや球史に残る鉄腕の一人になった岩瀬だが、そのダメージは少しずつ体に蓄積されていった。402回にわたって接戦のなかでチームメイトに「勝利投手」という祝福をもたらしてきた、精神的な負担もあったに違いない。

 プロ入り以来、岩瀬は常に左肘の痛みと戦ってきた。

「ずっと痛みを抱えながらやってきました。1球1球、投げるたびに肘に痛みが走って……。表現するとしたら、なんだろうね。チク……というか、重い感じでもないんだけど、まあ、針で刺されるような感じかなぁ」

 その痛みが限界に達したのが、2014年8月6日の広島戦(ナゴヤドーム)だった。1点リードの9回に登板した岩瀬は、イニング途中で肘に強い張りを感じて自ら降板を申し出る。当初は軽症と見られていたが、それ以来、岩瀬は公式戦マウンドに立っていない。

テークバック改善で状態上向きに

 中日の大塚晶文投手コーチは、昨季は2軍投手コーチとしてリハビリに励む岩瀬を間近に見てきた。

「去年は肘の状態が良くなくて、上がっては落ちるを繰り返して、弱音も吐くこともありました。でも、コツコツ、コツコツとリハビリを続けていました。彼の現役生活のようにね」

 大塚コーチは現役晩年に肘や肩を痛め、登板復帰に向けて実に7年もの期間を過ごしている。同じ経験者だからこそ、岩瀬の心境は痛いほど理解できた。

「投げられないことはピッチャーにとってはつらいこと。でも投げられないからこそ、勉強できることもあります。岩瀬の場合、ずっと投げてきましたから、1年間くらい離れて勉強することも悪いことではないと思います」

 岩瀬の状態が目に見えて上向いてきたのは、昨秋からだった。岩瀬は嬉々とした表情で「良くなったんですよ!」と大塚コーチに報告してきたという。

 改善されたポイントは「テークバック」だという。

 岩瀬のテークバックは、バックスイングを大きく取るのが特徴で、俗に「アーム式」と呼ばれる投げ方だ。この腕の振りを変えたことによって、肘の状態が劇的に良くなっていった。

 岩瀬にテークバックの変更について聞いてみた。

――テークバックをどのように変えたのでしょうか?

 今までより大きく使えるように、早めに投げる。テークバックにして、すぐ投げるような感じですね。

――「大きく使う」というのは、バックスイングをより大きくとるということですか?

 いや、そうではなくて、「テークバックから投げにいく」みたいな感じですね。

――「トップをつくる」というような感覚はないということですか?

 はい、ないですね。

――テークバック、トップ、リリースと分けるのではなく、ひとつの流れになっていると。

 そうです、そうです。テークバックからひとつの流れになっている感覚です。

 やや感覚的で理解しづらいかもしれないが、この改善によって現在は「まったく痛みが出ない」という状態に改善された。腕を振っても痛みが出ない。それは今まで痛むことが当たり前だった岩瀬にとって、奇跡のような喜びだったに違いない。

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著者プロフィール

菊地高弘

1982年生まれ、東京都育ち。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書『野球部あるある』シリーズが好評発売中。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。2018年春、『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)を上梓。

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