DeNA山口俊、新発想での課題克服で覚醒へ ファンの夢膨らむ春季キャンプの仕上がり

菊地高弘

ラミレス監督が直々に開幕投手指名

プロ11年目を迎える山口俊。重量感のあるストレートで守護神として111セーブを挙げているものの、先発での実績は今ひとつ。ことしこそ覚醒なるか!? 【写真は共同】

 横浜DeNAの豪腕ルーキー・熊原健人(仙台大)に「キャンプで一番驚いた選手は?」と聞くと、即座に「山口さんです」という答えが返ってきた。

「ブルペンで見て、体も大きいし、投げるボールもすごかったです」

 プロ11年目を迎える右腕・山口俊。身長187センチ、体重97キロの巨体から放たれる重量感のあるストレートを間近で見ていると、プロ1軍レベルのなかにあっても「モノが違う」とうならされる。

 1月4日、DeNA球団の仕事始めで、今季から監督に就任したばかりのラミレス監督は「開幕投手は山口にしたいと考えている」とコメントした。クローザーとして通算111セーブという立派な実績はある。だが、昨季は先発投手として3勝しか挙げておらず、自己最高の勝利数は2014年の8勝。2ケタ勝利をマークしたことのない投手を1月時点で開幕投手に指名することは異例と言える。

4日目に245球の投げ込み敢行

 キャンプインから山口は快調なペースで調整をこなしている。2月4日にはブルペンで245球の投げ込みを敢行。その投球練習は一風変わっていた。

 セットポジションからしっかりと投球フォームの形をつくって、最後だけ腕を軽く振る。恐らく6〜7割程度の力加減なのだろう。決して圧倒されるような剛速球ではないのだが、それでも強さを感じさせるボールを次々に捕手のミットへと投げ込んでいた。山口は投球練習の意図をこう語った。

「力を抜いて、そのなかで強いボールを投げようとしました。245球を投げても上半身に張りもこなかったので、狙い通りです。そのなかでいいボールを投げられたと思います。ゲームになるとどうしても力んでしまうので、ブルペンではより一層力を抜くことを意識しています」

山口「肩の仕上がりはだいぶいい」

 力を抜いて多くの球数を投げるのは、チームの大先輩である三浦大輔が毎年やっている調整法でもある。どんな効果があるのか、木塚敦志コーチに解説してもらった。

「力を抜いて投げるといっても、全身をゆるませて投げるわけではないので、かなり難しいんです。体を開かずに、キャッチャーと正対するまでの時間を長く保ったうえで、足を着いてから軽く投げる感じ。フォームのバランスが良くないとできません。また、少ない出力でキレのいいボールを投げられるようになれば、シーズン通してのダメージも少なくなります」

 つまり、この投法で245球を投げ抜けるだけのバランスが、今の時点で山口にはあるということだ。山口も「肩の仕上がりはだいぶいいので、あとは変化球も混ぜて調整していきたい」と仕上がりの早さを強調する。

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著者プロフィール

1982年生まれ、東京都育ち。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書『野球部あるある』シリーズが好評発売中。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。2018年春、『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)を上梓。

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