中日・岩瀬復活へカギ握る2つの変化球 肘痛改善の一方、伝家の宝刀に異変も…

菊地高弘

実戦後「最初としてはボチボチです」

2月11日、554日ぶりに実戦マウンドに立った岩瀬。登板後はブルペンでピッチングを確認した 【写真は共同】

 2月11日。紅白戦で554日ぶりに実戦マウンドに立った岩瀬は、登板後に多くの報道陣に囲まれた。

「マウンドに立って、コントロールがどうなるかな? と思ったんですけど、まあ投げられたということがね。あとは精度を上げていければ。最初としてはボチボチです」

 1イニング、17球を投げて被安打2、無失点。盗塁失敗があり、実質アウトを取ったのは2人だけ、しかも打者にいい形でとらえられていた。この日最速だった134キロのストレートも大島洋平にライト前へと運ばれた。それでも岩瀬にとっては、大きな一歩だった。

「ブルペンで投げるのと実戦で投げるのとでは違うので。ブルペンで投げるより、実戦では力の入り具合が変わってきて、コントロールの乱れにつながります。思ったようにうまくいった部分と、うまくいかなかった部分があったので、そこを修正していけたらと思います」

「うまくいかなかった部分」とは、新たに取り組んでいる変化球のコントロールだった。岩瀬は、鳥取のトレーニング研究施設「ワールドウィング」の小山裕史代表が開発した、シンカー系の変化をする「ナンバリング34」と、ツーシーム系の変化をする「ナンバリング29」の習得を目指している。岩瀬にとっては「ずっと求めてきた緩いボール」だという。

 紅白戦では、ナンバリング34は投げられなかったが、ナンバリング29は「ある程度計算できた」と手応えをつかみつつ、それでも「ブルペンよりもうまくいかなかった」という。

復活へ向けて明るく前向きに

 岩瀬はこの2つの球種について、「それが成功しないことには、今年の成功はないと思っています」と強い決意をにじませている。

 この発言の背景には、今まで岩瀬の投球を支えてきた「伝家の宝刀」とも言うべきスライダーに、異変が起きたことがある。

「スライダーは今まで通り使っていますけど、またちょっと変化の仕方が変わってきたので。それに慣れないといけないんですけど」

 腕の振りを変えたことによって肘の痛みは解消されたが、皮肉にもかつて打者から「途中で消える」と評されたスライダーが思うように変化しなくなってしまったというのだ。

 実戦感覚の立て直し、新球の習得、スライダーの復活。再起の道のりには、まだ多くの障壁が残されている。それでも、ブルペンで見せてくれた、あの表情なら……。そう期待せずにはいられないほど、41歳の岩瀬仁紀は楽しそうに腕を振っている。

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著者プロフィール

1982年生まれ、東京都育ち。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書『野球部あるある』シリーズが好評発売中。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。2018年春、『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)を上梓。

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