スーパーラグビー参戦が代表に与える影響 サンウルブズHCハメット氏が語る
日本代表のHCと密接な関係を保っていかなければ
ハメット氏は「日本協会と密接にやっていくことは必然」と語り、サンウルブズと日本代表との連携の必要性を説いた 【スポーツナビ】
まだ未定ではあるものの、日本代表の新HCジェイミー・ジョセフ氏とも連携を取っていきたいという。「サンウルブズのHCは日本代表のHCと密接な関係を保っていかなければならないと思います。ニュージーランドでは、オールブラックスのコーチは必ずスーパーラグビーのすべてのコーチと連携を密にしています。それが彼らが勝ち続けている理由の一つでもあると思います」と母国を例に挙げた。
メンバーは堀江翔太、山田章仁(共にパナソニック)、立川理道(クボタ)、大野均(東芝)ら昨年のW杯メンバー10人や、トゥシ・ピシ(サントリー)、エドワード・カークといったスーパーラグビー経験者など34名が選出されている。メンバーの追加について、ハメット氏は「可能性はある」とし、「バックアップスコッドを整えていくことが非常に大事」と語る。
「バックアップスコッドに選ばれた選手たちが、本当のスコッドの選手たちと一緒になって練習することは彼らにもメリットがありますし、スキル向上にもつながると捉えています。もちろん選手がけがをした時のバックアップとしても大事ですし、バックアップの選手たちがいいパフォーマンスをしてくれれば、翌年契約することも充分に見えてくると思います。サンウルブズは1年目なので、すべての仕組みが最初から整うことはないと思いますが、ぜひ仕組みを持つべきだと思います」
大観衆は大きなエネルギーを与えてくれる
第2部では、引き続きラグビージャーナリスト・村上晃一氏の進行のもと、参加者とハメット氏との質疑応答が行われた 【スポーツナビ】
――何をもって今年の成功としますか?
今年に関しては、選手たちの学びの部分が大きいと思います。それはフィールド内だけでなく、外の部分にも言えることで、たとえばスーパーラグビーは遠征が多く、毎週毎週トップマッチレベルの試合をこなしていかなければならない。選手たちがそれを経験し、1人1人が何らかの形で成長していって、スーパーラグビーにもっとなじんで力を出していければと思います。
――エディー・ジョーンズさん時代のハードワーク、早朝練習などは続けるのでしょうか?
W杯は本当に特別なイベントだと思うんですね。そこを戦い抜くために、エディー・ジョーンズさんは限られた日数の合宿期間でやるべきことが何かと考え、あのような練習をしたのだと思いますが、決して長く続けられるものではありません。ラグビーはただでさえ非常にフィジカル面で厳しく、メンタル的にも強いものがないとなかなか長くできない競技です。W杯イヤーとなると、あれぐらいのことが必要だったのではないかと思いますが、一方でスーパーラグビーはまた違うタイプの戦いになってきます。
サンウルブズは1シーズンで140日間ほどチームとして活動しますが、その中の83日間が遠征になります。8時間以上の移動が15回以上あるため、選手たちには日本に帰ってきた時には家に帰って、家族や愛する人ときちんと時間を過ごしてもらいたい。そうしたバランスを取りながら、やっていきたいと思っています。
――ニュージーランドのように、ラグビーを国民的スポーツにするためのアドバイスをいただけませんか?
南アフリカ戦の勝利のようなことが、日本でラグビーを普及させていくのに一番効果があると思いますが、日本では2019年にW杯もありますので、今回のスーパーラグビーへの参戦も大きなプロモーションになるでしょう。“最もタフな大会”と呼ばれるところに加わっていくのですから、そこで成果を出すということがひとつ普及につながると思います。
さらに言えば、もっと子どもをフィールドに連れていくことだと思います。日本では中学生、15歳くらいからラグビーを始める人が多いと聞きました。ニュージーランドでは、そこらじゅうにスペースがあるので、小さな子どもがすでにラグビーボールを持って遊んでいます。小さい子どもがラグビーと触れ合える機会を作るというのも、ひとつあると思います。
――2019年のW杯までに日本が強くなるために、サンウルブズはどのような影響を及ぼすことができるでしょうか?
サンウルブズが日本代表に与えられる影響は多大だと思います。例を挙げますと、アルゼンチンがザ・ラグビーチャンピオンシップに参戦して4年目になりますが、初めはばらつきのあった戦い方が、今では非常に一貫性が出てきたと思います。その結果、去年のW杯ではアルゼンチンが準決勝まで勝ち残りました。これが何よりも、選手たちあるいはチームがトップの戦いに加わっていくことの大切さを物語っていると思います。サンウルブズが参戦することによって、スーパーラグビーで日本がそれと全く同じことを成し遂げられると思います。4年前、アルゼンチンは本当にもがいていたと思うのですが、今では競争力を備えています。
――試合で勝つための要素に観客数は関係ありますか?
それは間違いないと思います。やはり選手は大観衆の前でプレーをしたいと思います。それが応援してくれるファンであれば、本当に大きなエネルギーを与えてもらえますし、応援してくれる人たちの前でいい試合をしたいというのが選手の気持ちです。勝敗に関係なく、これから始まる試合全部で秩父宮が満員になってくれることを期待しています。
あなたにとってラグビーとは?
「ニュージーランド人として生まれて育った以上、DNAのどこかにラグビーがある」というハメット氏 【スポーツナビ】
ただひとつ付け加えるなら、私にとってラグビーとは、人に教える機会を与えてくれたものだと思いますね。何かを教えるには、自分が学ぶことを怠ってはいけません。むしろ学ぶことが好きでなくては、人にものを教えることはできない。自分にとっては、ラグビーそのものが教室で、いろいろなことを生徒たちに教えることができる場だと思います。