東海大仰星、修正力でつかんだ「3冠」 花園史上に残るハイレベルな決勝戦

斉藤健仁

互いの持ち味、インテリジェンス、チーム力を発揮

春の選抜、夏の7人制、冬の花園を制した東海大仰星 【斉藤健仁】

 「花園」史上に残る、レベルの高い決勝戦だった。

 12月27日から東大阪市近鉄花園ラグビー場で行われていた「花園」こと全国高校ラグビーは、1月11日(月・祝)、決勝戦を迎えた。春の選抜大会、夏の7人制大会に続いて「高校3冠」を狙う東海大仰星(大阪第1)と、初の単独優勝のかかった「東の横綱」桐蔭学園(神奈川)のシード校同士の激突となった。両者は2年前も決勝戦で対戦し、その時は東海大仰星が19対14で勝利している。

 結果から言えば、今年度も東海大仰星が37対31で勝利し、2年ぶり4度目の栄冠に輝いた。だが互いの持ち味、インテリジェンス、そしてチーム力が存分に発揮されたすばらしい決勝戦となった。

エディー・ジャパンの「シェイプ」を理解していた桐蔭学園

桐蔭学園は2年生CTB齊藤のトライなどで一時は逆転する 【斉藤健仁】

 前半、先制したのは東海大仰星だった。少し動きが固かった桐蔭学園のミスに乗じて、敵陣22mのラインアウトからボールを継続し、前半3分、LO横井達郎(3年)がトライ。しっかりとFL眞野泰地主将がフォローしていたことで生まれたトライだった。相手にPGを返された後の14分、ゴール前でチャンスを得た東海大仰星の眞野主将は「ブラインドサイドのディフェンスが少なかったし、対面がPRだと思った」と判断すると、自分から仕掛けて、さらに相手のタックルをずらしてトライを挙げた(12対3)。

 このトライの後は東海大仰星がSO岸岡智樹(3年)のキックでゲームメイクする。一方で桐蔭学園は「継続という自分たちの強みを出そうと思った」とSH齋藤直人主将(3年)が言うとおり、持ち味を発揮する。

 桐蔭学園は全国の高校の中でもっとも、ワールドカップで勝利した「エディー・ジャパン」が採用していた「アタック・シェイプ」を理解しており、巧みだった。SH齋藤主将のタイミングを変えて放る長短のパスにPR高北卓弥(3年)、石田楽人(3年)、LO石井洋介(3年)が走り込み、ゲインを重ねる。そしてゲインを重ねて、ディフェンスが内に寄ったときに、外に展開し、好機を演出する。20分、20フェイズを重ねて最後はPR石田がトライをねじ込み、24分にはステップのうまいCTB齊藤大朗がトライを挙げて桐蔭学園が12対17と逆転に成功する。

東海大仰星・湯浅監督は眞野主将を絶賛

東海大仰星は眞野主将の下で結束して攻め続けた 【斉藤健仁】

 桐蔭学園のアタックに後手を踏んでいた東海大仰星だが、相手を抱え込むようなタックルでターンオーバーに成功。最終的にはスクラムから、再びFL眞野主将が2人にタックルを受けながらもゲインしてボールを押さえて、19対17と逆転に成功する。前半は、桐蔭学園の継続力が勝って試合のペースをつかんでいたが、勝負所で東海大仰星は、判断力に長けたFL眞野主将が3トライに絡む活躍を見せて、2点リードして折り返した。

 ベンチプレスはチームでトップの140kgを上げる眞野主将は「昨年度の準々決勝で対戦した東福岡との試合で、戦略戦術を考えても、1対1で上回らないと勝てなかった。1対1、そして細かい部分にこだわりを持ってやってきた」と胸を張った。そんな眞野主将のことを湯浅大智監督も、こう手放しで褒めた。「(眞野主将は)何も言うことはありません。主将としてチームを引っ張りながら、身長172cmであれだけのプレーを考えながらやり続ける。すごいなと思います。サイズか何かの理由で(高校日本代表に)選ばれないのであれば、僕のやっていることは間違っているのかもしれません」

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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