東海大仰星、修正力でつかんだ「3冠」 花園史上に残るハイレベルな決勝戦
後半から戦い方を変えた東海大仰星
東海大仰星はWTB中のトライで試合の流れを決めた 【斉藤健仁】
選手たちはハーフタイムで「相手のアタックにもっとディフェンスでプレッシャーをかける」、「相手が継続する力が強いので自分たちも継続してアタックする」と戦略を変えた。後半、ボールを継続する桐蔭学園に対して東海大仰星は、準決勝の前年度王者の東福岡(福岡)戦同様に、FWの近場、さらにBKでもディフェンスで前に出てプレッシャーを与える。すると桐蔭学園にミスが目立ち始め、東海大仰星が敵陣でのプレーが続く。
3分、東海大仰星はターンオーバーからボールを展開。相手の前に出るディフェンスに対してもSO岸岡とCTB山本悠大(3年)が連動し、岸岡の速くて長いパスに山本が外に開いてボールを受け取りラインブレイク。最後は決定力のあるWTB中孝祐(3年)がトライを挙げて26対17。さらに、東海大仰星はディフェンスでプレッシャーを与え続けて、10分、20分にSO岸岡がPGを決めて32対17と、2トライ2ゴール差以上となる15点差として試合の流れを決めた。
継続にこだわった桐蔭学園「試合の流れを戻そうと」
桐蔭学園のSH齋藤主将は攻撃を見事に統率し、鮮烈な印象を残した 【斉藤健仁】
桐蔭学園は、相手が前に出るディフェンスに変えてきたときに、少し後手を踏んだことが悔やまれる。準決勝の石見智翠館(島根)戦のようにボールを動かした後、スペースにキックやハイパント蹴るなどの選択肢もあったはずだが、SH齋藤主将が「試合の流れを戻そうと継続しました」と言う通り、相手と戦力を考慮し、ボールキープに勝機を見いだす選択を取った、というわけだ。
また藤原監督は「相手が後半、BKで展開してくることはわかっていましたが、(桐蔭学園の)BKラインが若かった。1対1でも勝っていなかったので苦しかった。また前半から立っていなかった。タックラーは行っていたが、2人目は弱かった。(東海大)仰星さんの立つ意識が高かったし、1年間でやってきたことだと思います。仰星さんの方が強かった」と王者を称えた。
眞野主将「自分たちは一人ひとりが強いわけではない」
東海大仰星の総合力が光った大会となった 【斉藤健仁】
また決勝の2トライを合わせて今大会7トライを挙げた眞野主将は「1年生の時から、先が見えないまま、今を積み重ねてきたことが優勝できた要因だと思います」と振り返った。ただ、表彰式の時に涙を見せていたことを聞かれると「やっと実感が沸いてきて、これが現実なのか、と思いました。自分たちは一人ひとりが強いわけではない。全員苦労してできた優勝なので自然に涙が出てきましたね」と白い歯を見せた。
「昨年度大会の東福岡のように絶対的な優勝候補はいない」と指導者の間で言われていた今年度の花園。決して体は大きくないが、それでも戦略、戦術、1対1、さらに試合中の修正力をも身につけた東海大仰星が総合力を武器に、見事に「高校3冠」を達成し幕を閉じた。