復活を印象づけた今井正人の自負 元日の好走で開けたリオ五輪への視界
この感覚をマラソンへつなぐ
区間順位こそ2位だったが、復活を印象づける走りはできた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「12秒前にはMHPS長崎(三菱日立パワーシステムズ長崎)がいたから、スイッチは入ってしまいましたね。ただ前半は久しぶりの駅伝だったので、行ききれなかったというのが正直ありました。リズムをつかむまでに硬さもあったと思います。でも中間点以降の感覚は自分の中でもすごく良かったな、というのはあったので。10キロ過ぎの松原橋を越えたあたりからは『マラソンでもこういうところで勝負が決まるな』と思って走れたし、長い直線できつかったけど、もがきながらでもしっかり腕も振って走れて、これまで以上のものを感じられた部分もあったので……。この感覚を絶対にマラソンへつなげていきたいと思い、『マラソン、マラソン、マラソン』と考えながら走っていました」
こう言って笑う今井は、序盤は12秒前にいたMHPS長崎の松村康平にピタリと付ける形で走っていたが、中盤に松村を引き離してからは40秒前にスタートしていたDeNAの高橋憲昭や、1分06秒差だった日清食品グループの矢野圭吾を抜いて4位に上がった。さらに3位のHondaとの差も13秒に詰め、6区と7区を走った19歳の坂本大志と22歳の廣末香がHondaをかわして3位にあがる下準備をしたのだ。
結局、区間順位はコニカミノルタの山本浩之に11秒遅れる区間2位。
「欲を言えば区間賞を取りたかったけど、山本くんには前半の入りでかなり差をつけられたから。後半は追いついているだろうなと気持ちも盛り上がっていたけど、追いつけなかったというのは反省点ですね。あとは6区と7区を走った若い二人に、2番や1番を狙えるような位置を経験させておきたかったというのはあります」
だが、納得の走りはできた。これでまた自信を持って前向きにマラソン練習に取り組んでいけそうだ、という手応えも得たという。そこには自分がマラソンをやる中で、階段を一気に何段も飛ばして結果を出したというのではなく、少しずつでも一段ずつ前進してきたという自負もあるからだ。
元日の好走が選考レースに与える影響
昨年の東京マラソンでは日本人トップでゴール。現時点では未定だが、どの選考レースに出場するかに注目が集まる 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
駅伝でしっかり走れるところを見せておくのも、勝負にとっては大事なことだと森下監督は言う。ライバルにしっかり走れるところを見せておけば、本番でも「今井がまだ動かないから、うかつには動けない」と思わせられるからだと。そんな戦いを森下監督だけでなく、谷口浩美や(茂と猛の)宗兄弟、瀬古利彦らもやってきた。その意味でもこの駅伝で結果を出せたことは、今井復活を多くのライバルに印象づけるものになったと言えるのだ。
出場する選考レースが東京マラソンになるかびわ湖毎日マラソンになるかは未定だが、今井はこの大会でリオデジャネイロ五輪へ挑戦する第一歩を踏み出した。