スプリンター・桐生祥秀が目指す走り シーズンを終えて振り返る2015年
10秒09で3年連続ランキング1位
シーズン最後のレースでリオ五輪の参加標準記録を突破。それでも「自己ベストしか意識していなかった」と悔しさが残る 【写真は共同】
「布施の時はリオの標準を突破する自信はあったし、向かい風が吹いても切れると思っていました。だからそこは狙っていないというか、本当に自己ベスト(10秒01)しか意識していなかったので、どちらかというと満足せずに終わった感じですね。ただシーズンを振り返れば、最初と終わりが良かったので。最後に日本ランキングもトップタイになって、3年連続で1位になれたのは良かったかなと思います」
気持ちの盛り上がりが足りなかった前半
シーズン前半は気持ちが盛り上がらないレースもあったと話す桐生 【スポーツナビ】
「そういうのが今年はメチャクチャあって……。あんまり『走るぞ!』という気持ちにならなくて、『あっ、試合がきた』という感じで走っていた感じでした」と振り返る。
「テキサスで走った時は『9秒台もすぐに出せそうだ』と思ったけど、織田(記念国際、4月/広島広域公園陸上競技場)はダラダラ走った感じで良くなかったので……。体は疲れていなかったけれど、もう9秒台も出るだろうと思って、自分で自分を追い詰めてしまったところはあります。それにテンションの問題もありました。自分はテンションが高くないと走れないので。米国と違うのは仕方ないけど、日本の試合は何か静かすぎるというか、織田もドンヨリした雰囲気で、その前がテキサスだったから、その違いを大きく感じてしまったと思います。フライングが1回あった時点で無理だと思ってしまって、スタートもキレが無くなってしまいました」
海外の試合は小さな大会でも観客の声援や会場も明るく、どこかお祭り気分的な雰囲気が流れている。そういう試合では選手も自然にテンションが上がってくるものだ。だが、日本の試合は張りつめた空気が漂い、今は観客の「9秒台、9秒台」という願いがジワリと肌にまとわりつくような雰囲気さえある。桐生は「そういう中では、自分でスイッチを入れないといけないのですが、無理やりやろうとすると『スイッチを入れなきゃ』という気持ちになるから体がついていかないんです。そういうのは海外(のレース)を経験してから感じるようになりました」
関東インカレも、世界リレー(5月/バハマ・ナッソー)という盛り上がった試合で銅メダルを獲得した後だった。だからこそ雰囲気の落差が大きすぎ、自分の気持ちを盛り上げられなかったようだ。