「柔よく剛を制す」久我山が初戦突破 チームを下支えする“三栖トレ”の効果

小澤一郎

最も目立った小柄なMF

ゴールを決めた内桶(8番)とともによろこぶ國學院久我山の選手たち 【写真は共同】

 12月31日に味の素フィールド西が丘で行われた第94回全国高校サッカー選手権大会1回戦で國學院久我山(東京A)は広島皆実(広島)に1−0で勝利し、1月2日の2回戦に駒を進めた。

 前半15分にコーナーキックからFW内桶峻(3年)が頭で合わせたゴールを守り切った國學院久我山。この試合で、最も目立っていたのが身長167センチと小柄なMF名倉巧(2年)だった。

「柔よく剛を制す」という言葉がある通り、 名倉は相手にボールを持たせながらも狙いを絞って厳しいプレスを仕向ける広島皆実の守備をひらひらと舞うようにかわしたかと思えば、球際では高さとパワーで到底敵わない相手をうまくいなしながらセカンドボールを含めて次々にマイボールとしていく勝負強さを見せつけた。

三栖フィジコの指導法

 名倉が「足を置く位置、体の使い方を徹底的にトレーニングしているので、狭い局面でも簡単にボールを失わなくなってきた」と話すように、彼のような小柄なテクニシャンが國學院久我山で活躍できる理由は単に足元の技術がうまいからではない。

 高い技術やパスワークに注目の集まる國學院久我山だが、それを下支えしているのが三栖英揮フィジコによる“三栖トレ”だ。清水恭孝監督が「久我山らしいサッカーをするためには、名倉のようなテクニックある選手たちが三栖の下で体を鍛えることが重要で、かなりの効果を感じている」と全幅の信頼を置く通り、2人は約7年コンビを組む間柄だ。
 例えば、この日の名倉の局面での球際の強さについて三栖フィジコはこう説明する。
「まだ成長期で無理に筋肉を付けるべきではない小柄な名倉がこの舞台で通用するためには、体を強くするよりも瞬間的な頭の判断が必要です。局面で技術を使うのか、体を使うのか。その判断の精度を上げていけるような指導をしています」

 三栖トレに2年取り組み、その効果を実感する名倉は「球際は筋肉量やパワーではなく技術で勝つもの。久我山に入って『フィジカル』という言葉の捉え方が変わりました」と口にする。2回戦以降も三栖トレによって支えられる名倉と國學院久我山の「柔よく剛を制す」フィジカルに注目だ。
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著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

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