再び黄金期を築いたバルセロナ 他クラブが倣うべき“成功モデル”

スペクタクルに優るビジネスはない

バルセロナの成功モデルを、なぜ他のクラブはコピーしようとしないのか 【Getty Images】

 バルセロナはもう1つ重要なことを世界に示してきた。それは偉大なるスペクタクルに優るビジネスはないということだ。たくさんのゴールを挙げ、美しくプレーし、持たされるのではなく可能な限りボールを支配する。そのためにはしかるべきアイデアを持ち続ける必要がある。

 そのようなチームを作り、哲学を維持するために必要な費用など安いものだ。他のクラブが天文学的な金額を即戦力の補強に費やす傍らで、バルセロナはクラブを愛し、トップチームに加わる前から独自のプレースタイルを習得している若者たちを“ラ・マシア”(バルセロナの下部組織)にとどめておくだけで、現在の成功に至る土台を築いてきた。外から買ってきた選手たちは、その確固たる土台に加えられた肉付けにすぎないのだ。

 しかしながら、この10年で26ものタイトルを積み重ねる成功の土台となったバルセロナの哲学は、これまで決して多くのクラブに取り入れられてきたわけではなかった。ドイツ代表やローマ、アーセナル、マヌエル・ペジェグリーニ指揮下のマンチェスター・シティなど、いくつかのチームが全く異なるプレースタイルに転換する上で影響を与えることはあった。だが、バルセロナに倣ってクラブ独自の哲学を打ち立て、下部組織の子供たちから一貫教育を施すような抜本的な改革を行ったクラブは今もわずかしかない。

 これほどコストをかけずに素晴らしい結果を出している成功モデルを、なぜ他のクラブはコピーしようとしないのだろうか。

 世界中のクラブの経営者たちは、もう一度考えてみた方がいい。自分たちは何のために大金を費やして選手を獲得しているのか。何のために試合を通してベンチでメモを取り続けたり、大げさに身振り手振りを繰り返す監督たちに高い給料を払ったりしているのか。その傍らで、バルセロナは自家製の選手たちを中心にチームを作り、監督まで自分たちで育てた経験の浅い人材を使いながら、フットボール界を支配し続けているというのに。

 他の多くのクラブがバルセロナの成功モデルをコピーし、もしくは独自のやり方でボールとスペクタクルを重んじるフットボールを目指すようになれば素晴らしいことだ。それはそんなに金のかかることではないだけでなく、フットボールを愛する全ての人々に感謝されるべき行為なのだから。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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