バルセロナの圧勝で幕を閉じたクラシコ いまだ明確な方向性が見えないレアル

繰り広げられたワンサイドゲーム

今季初のエル・クラシコはルイス・スアレスの先制ゴールを皮切りに4−0でバルセロナが圧勝した 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 今や世界で最も重要な一戦とみなされるようになったリーガ・エスパニョーラの”エル・クラシコ(伝統の一戦)”では、ハイレベルかつ互角な戦いが繰り広げられるのが常だ。しかも今回は、昨季と一昨季にチャンピオンズリーグを制したチーム同士の対戦でもあった。

 にもかかわらず、予想されていた戦力的均衡はわずか数分のうちに崩れてしまった。偉大なるフィニッシャー、ルイス・スアレスの右足が先制点を決めてほどなく、バルセロナが面白いようにゲームを支配するようになったからだ。

 中盤の選手たちが連動してパスをつなぐことでボールを独占しつつ、高い位置からプレスをかけてレアル・マドリーの攻撃の組み立てを阻み、コンパクトなブロックを保ちながら敵陣に攻め込み、スアレスとネイマールのコンビがとどめを刺す。それは近年のクラシコで見せてきたプレーと大きく変わらないものだったが、ピッチ上では資金力ではるかに劣るリーガの中小クラブが世界的ビッグクラブとの埋め難い力量差に気づき、早々と勝負を諦めてしまったかのようなワンサイドゲームが繰り広げられた。

記憶に残る試合を見せたバルセロナ

序盤から厳しいブーイングを受けていたジェラール・ピケ(左)だが、この試合では素晴らしいプレーを見せた 【Getty Images】

 ここまでバルセロナの優位性が際立ったのは、戦略やプレスがはまったことに加え、とりわけ中盤の選手たちがパーフェクトなパフォーマンスを発揮したことが大きかった。セルヒオ・ブスケッツは時計のように正確なポジショニングを保ちつつ、ボールを奪ってはパスを散らした。成長著しいセルジ・ロベルトは右FWとしてプレーしながら、4人目のMFとして中盤をサポート。アンドレス・イニエスタはここ3、4年における最高のパフォーマンスを披露し、10年前のロナウジーニョ、近年のリオネル・メッシに続いてサンティアゴ・ベルナベウのスタンドから拍手で送り出される貴重な名誉を授かった。

 ほかの選手も軒並み記憶に残る試合を見せた。バルサのGKクラウディオ・ブラボはハイボールの処理に迷いを見せながらも、3つの決定機を輝かしいセーブで防いだ。サイドバック(SB)のダニエウ・アウベスとジョルディ・アルバは自身のサイドへの侵入を許さず、必要な際には攻撃に加わった。前半途中にハビエル・マスチェラーノが負傷退場したため急遽出場したジェレミー・マテューもスムーズに試合のリズムに適応できたし、交代枠を1つ失った影響もなかった。何よりディフェンスラインで特筆すべきはジェラール・ピケだ。ゲーム序盤はボールを持つたびに厳しいブーイングを受けていた彼だが、“マニータ(5−0での勝利)”を目指して繰り返し前線に攻め上がった終盤にはそのことも忘れ去られていた。

 半ば信じ難いことながら、後半途中にメッシが2カ月ぶりの復帰を果たした際にはすでに勝負が決しており、宿敵のエース登場に対するブーイングもほとんど聞こえてこなかった。この時すでに地元ファンの怒りは、ライバルではなく自軍の選手たちへと向けられていたからだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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