バルサとリーベルの間の途方もない距離 クラブW杯が示す戦力的、経済的格差

「できることはほとんどなかった」

メッシ(左)、スアレス(中央)、イニエスタ(右)らを擁するバルセロナが別次元の戦いを見せた 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 実際のところ、バルセロナと世界中のほぼすべてのチームとの間には、途方もない戦力差が存在する。バルセロナに勝てる、もしくは良い結果を手にできる確かな可能性を持つのは世界で5〜6チームくらいしかなく、現時点でその中に南米のチームは含まれていない。

 その意味で、12月20日に行われたクラブワールドカップ(W杯)決勝でのリバープレート(リーベル)が見せた戦いぶりには、「できることはやった、しかしできることはほとんどなかった」という表現が当てはまる。

 大会が近づくにつれ、リーベルのファンや一部のメディア、そして多くの指導者たちがクラブの輝かしい歴史、そしてコパ・スダメリカーナ2014やレコパ・スダメリカーナ2015、コパ・リベルタドーレス2015という国際大会を立て続けに制したこの1年の成功から、バルセロナとの決勝に向けてポジティブな期待感を抱くようになっていた。だが、実際に戦ってみれば、彼らが抱いていた自信には何の根拠もなかったことが明らかになった。

 リーベルのマルセロ・ガジャルド監督は4人のDFと4人のMFが2列のラインを形成する守備ブロックによってバルセロナの侵入を防ぎつつ、FW陣で最もパワーのあるルーカス・アラリオを介してわずかな攻撃の機会を生かそうと試みた。

 リオネル・メッシが立ち上がりに手にした2つの決定機をマルセロ・バロベロが阻止していなければ、リーベルは開始数分の時点ですでに逆転不可能な点差をつけられていたことだろう。そのメッシは36分、ゴール前のわずかなスペースで才能を発揮し、しかるべきゴールを決めた。

南米王者が避けられない選手流出

主力選手の流出を避けられない南米王者。クラネビッテル(写真)はアトレティコ・マドリーへの移籍が決まった 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 舞台がリーガ・エスパニョーラであれ、チャンピオンズリーグであれ、現在のバルセロナが一度リードを手にしたら手がつけられないチームであることは周知の事実だ。しかも、リーベルは南米王者に輝いた際の立役者である主力選手の数人を失った状態で、このファイナルを迎えなければならなかった。

 過去に南米王者となったチームの多くは、経済的な問題から主力選手の流出を避けられず、十分な補強もできぬままクラブW杯を迎えてきた。リーベルも同様に、コパ・リベルタドーレスを制した後にラミロ・フネス・モリ(エバートン)、アリエル・ロハス(クルスアスル)、テオ・グティエレス(スポルティング・リスボン)らを放出。クラブW杯後にはすでに移籍が決まっているカルロス・サンチェス(ラヤドス・デ・モンテレイ)とマティアス・クラネビッテル(アトレティコ・マドリー)に加え、同大会で素晴らしいパフォーマンスを世界に示したGKのマルセロ・バロベロも引き抜かれる可能性が高い。

 試合前、リーベルの先発予想で不確定だったのは4人目のMFだ。カミロ・マジャダをセルヒオ・ブスケッツやイバン・ラキティッチのマーク役に起用するか、よりテクニックに優れたルイス“ルチョ”ゴンサレスを起用してポゼッションを試みるか。驚くべきことにガジャルドは双方の要素を兼ね備えたタバレ・ビウデスを起用したのだが、結局、彼もほとんどチームに貢献することができなかった。バルセロナがいつも通りにボールを支配し、プレーをコントロールし続けたからだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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