スポーツアナリティクスが育む“知性” 有識者たちが語る最新の活用事例

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ラグビー日本代表の躍進を支えたアナリストの仕事とは?

ラグビー日本代表アナリストの中島氏は、具体的な分析データや映像を交えながらエディージャパンでの役割を紹介 【スポーツナビ】

 4番目は日本ラグビーフットボール協会アナリストの中島正太氏の講演。日本代表が歴史的大金星を挙げたラグビーワールドカップ(W杯)イングランド大会の南アフリカ戦へ向け、どのような準備をして試合に臨んだのか。具体的な分析データや映像を交えながら、アナリストとしての仕事の一端を紹介した。

 日本代表は、対戦相手のスカウティングや対策の構築、選手への落とし込みなど、あらゆる場面で中島氏のデータが活用されていた。中島氏は「アナリストは準備の場面で最大限の力を発揮しなければならない」と語り、南アフリカ戦は「出来過ぎだった」というほど、事前に分析・準備していた状況がすべて試合中に起こったという。これからも元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏が追い求めたチーム像を継承し、「世界で最も準備されたチームを目指したい」という言葉で講演を締めくくった。

インフォグラフィック作成に必要なスキル

NewsPicksインフォグラフィック・エディターの櫻田氏は、インフォグラフィックを作る際の考え方やフローを説明した 【スポーツナビ】

 次はメディアの観点からNewsPicksインフォグラフィック・エディターの櫻田潤氏が登壇し、「データをいかに伝えるか?」というテーマで講演した。データや情報、知識を視覚的に表現する特徴があるインフォグラフィックの潮流や、櫻田氏が実際にインフォグラフィックを作る際の考え方やフローを説明した。

 インフォグラフィックは10年頃から拡大が始まり、政治や企業、報道など活用の場が広がっている。さらに、スマホの台頭から、小さな掲載面で情報を伝える手法として、より重要となっている。櫻田氏はインフォグラフィックを作る際、編集・分析・デザインと3つのスキルを組み合わせており、デザインやグラフィックを扱う時間よりも、情報を整理する時間が圧倒的に長いという。「伝え方というとテクニックと思ってしまうが、考え方の方が大事」と述べた。

野球界のデータ活用はどう変わる?

山本氏は「日米野球界に見るデータ活用の思想と実践」というテーマで講演した 【スポーツナビ】

 最後は東京大学客員研究員であり、東北楽天ゴールデンイーグルスでデータ担当をしている山本一郎氏が登壇。「日米野球界に見るデータ活用の思想と実践」というテーマで講演を行った。

 近年、野球界ではセイバーメトリクスという統計を用いた分析手法が浸透してきたが、日米でデータ構造に大きな違いがあり、さらにその分析手法が変化してきているという。MLBの事例を紹介しながら、今後は、成績の統計解析は重要ではなくなり、画像分析や動作解析が主流となるのではないかと予測。また、選手個人のスタッツはそれほど重要ではなくなり、どれだけチームに貢献したかを評価する方向にシフトするのではないかという持論も展開した。

心技体から心技体「知」へ

 昨年のカンファレンス参加者が約150人に対し、今回は300人以上が集まりスポーツアナリティクスへの期待が高まっていることを感じさせた。しかし、技術の進歩により増え続ける情報をどう生かすのかという課題に対しては、各分野でまだまだ試行錯誤が続いている。

 JSAAの代表理事であり、バレーボール全日本女子チームのチーフアナリストを務める渡辺啓太氏は、「スポーツは心技体と言われるが、心技体『知』が求められる時代になっている」と語った。スポーツアナリティクスを生かせるような知性をどのようにスポーツ界に根付かせるのか。JSAAが果たす役割に注目していきたい。

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