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八村塁のNCAA進学で期待される未来
最後のウインターカップに懸ける思いとは
NCAAの強豪、ゴンザガ大学進学の準備を進めていると発表した明成高の八村塁
NCAAの強豪、ゴンザガ大学進学の準備を進めていると発表した明成高の八村塁【小永吉陽子】

 201センチの長身でオールラウンドなプレーが魅力の八村塁(明成高)がNCAA(全米大学体育協会)ディビジョン1の強豪、ゴンザガ大学進学の準備を進めているとの発表があったのは、ウインターカップを2週間後に控えた12月6日のことである。NBA選手を輩出しているNCAAディビジョン1の強豪校から奨学金を受けたことで、高い期待が集まっている。ゴンザガ大進学を決めた経緯と将来への夢、そして12月23日に開幕を迎える高校生最後の大会、ウインターカップに懸ける思いとは。

ターニングポイントはU−17世界選手権

「強い相手と毎日試合できることが本当に楽しかった。ますます米国でバスケがしたくなりました」


 八村が目を輝かせてそう語ったのは、高校2年生の夏だった。2014年8月に行われたU−17世界選手権の開催地、ドバイから帰国した直後のこと。日本の成績は16位中14位とふるわなかったが、八村個人としては平均22.6点を稼いで得点王に輝く躍進を見せた。また米国戦では38−122と手も足も出なかったものの、一人で25得点をたたき出したことで大きな注目が集まった。


「入学した頃からNBAに行きたいと夢を語っていたけれど、それが本気だと感じたのは、練習で新しいプレーを覚えようとする向上心がとても強かったこと。そして彼自身、U−17世界選手権で手応えをつかんだことで、夢が目的へと変わったのです」(明成・佐藤久夫コーチ)


 日本人がNBAの舞台に進出することは、いつの時代も夢物語であるが、夢に向かうにはステップアップしていくことが必要であることを16歳の少年は世界の強豪と真剣勝負をすることで気付くことができた。そして選んだ道が、毎年多くのNBA選手がドラフトされるNCAAの大学でプレーすることだ。


 もし、あと2年遅いU−19世代で世界の舞台に立ったのなら、高校在学中にNCAA強豪校からのオファーはなかったかもしれない。若い世代から早く世界に出ることが、意識の向上や将来への可能性を広げるということを日本のバスケ界全体が認識できたのが、八村のゴンザガ大進学の件だった。

ゴンザガ大入学へのハードルと今後の進む道

 ゴンザガ大が来季入学予定者を公式発表した11月下旬から八村の周辺は騒がしくなっているが、現時点では2016年秋の入学が決まったわけではない。「高校の評定平均(GPA)および大学進学適正テスト(SAT)の結果がNCAAの基準を満たした場合に奨学金を受ける」というゴンザガ大との契約書にサインをしたのが現状だ。


 ゴンザガ大は17年連続NCAAトーナメントに出場し、昨シーズンのNCAAトーナメントではエリートエイト(ベスト8)に進出した強豪校。U−17世界選手権後は複数の強豪校からオファーがあり、ウインターカップ後にはもう1つの候補の大学に公式訪問をする予定でいたが、八村は早々とゴンザガ大に心を決めた。


 その理由は、熱心な勧誘があったことのほかに、小規模な大学できめ細やかな教育を受けられる環境が気に入ったという背景がある。そして最大の決め手となったのは「インターナショナルな選手が多く活躍していること」だと八村は言う。今年4月にジョーダン・ブランド・クラシックの世界選抜チームに選出されてプレーしたときも物おじせずに、他国の選手と積極的にコミュニケーションを図る姿があった。ゴンザガ大に入学後、自身もインターナショナル選手の仲間入りをし、ともにNBAを目指して切磋琢磨(せっさたくま)する将来設計を描いているのだ。


 しかし、現実的には入学へのハードルは高いと言わざるを得ない。GPAとSATの基準を満たしても、英語の能力面でも大学側が入学の承認をしなければプレップスクールへ入学するか、レッドシャツ(練習生)扱いとなる。プレップスクールとは、プレーヤーとして活動しながらNCAAへの学力基準を満たすための準備をする学校であるが、現在ジョージワシントン大で活躍する渡邊雄太も1年間通ったように、日本人であればプレップスクールを経るのが一般的である。


 八村の場合はそれを飛び越えての入学を狙っているが、入学に関しての管理をしている高橋陽介アスレティックトレーナーが言うには、「もしレッドシャツ扱いになっても、NCAAのシステムと学業に適応するための時間と考えれば本人のためになるはず」と前向きに捉える。とにかく、今の八村にとってはNCAAにチャレンジする過程も将来に向けての重要なステップであり、16年9月の入学に向けて勉学と練習に励む日々だ。

小永吉陽子

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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