桃田賢斗と奥原希望が抱くライバル心 リオ五輪へ勢いづく日本バドミントン界

平野貴也

「自信が付いてきた」この1年

ケガで停滞していた時期もあったが、奥原はこの1年で自信を付け、世界のトップに並びかけている 【Getty Images】

 一方、奥原はケガから復帰後、飛ぶ鳥を落とす勢いで成績を伸ばしている。2012年に世界ジュニア選手権で優勝するなど期待を受けていたが、2013年、14年は大ケガに苦しんだ。しかし、今季から世界のトップクラスが集うスーパーシリーズに年間を通して参戦。10月に、スーパーシリーズの1大会であるヨネックスオープンジャパンで優勝。そして、今回のスーパーシリーズ・ファイナルを桃田と同じく5戦全勝で頂点まで駆け上がり、一気に世界のトップに並びかけた格好だ。

 奥原は「始めは世界のトップ選手との差が分からなくて、自分よりはるか上の存在と思っていたので、相手のショットやプレーに恐怖心を抱いてコートに入っていた。でも、徐々に差はそんなに大きくないと分かるようになって勝ち星も挙げられるようになって、自信が付いてきた」と1年を振り返った。

 今大会では、世界選手権を2連覇している世界ランク1位のカロリナ・マリン(スペイン)と2度対戦。1次リーグでも決勝トーナメントでもストレートで破った。決勝戦では、世界ランク8位のワン・イーハン(中国)との接戦に22−20、21−18で競り勝った。「日本のエース、トップとして世界と戦う自覚を持って大会に入れた。5試合とも私らしいスピードのあるプレーと、ショットのコントロールができた。相手のエース球を打たせなくしたり、カウンターを取ったりすることが終始できたのが良かった。長身選手と戦うときにコートの四隅へ配球し合う展開になると、身長が低い私が不利になる。自分から(ネットのすぐ上を床と平行して飛ぶような)ドライブで低い展開に仕掛けてポイントを取る形になってきている」と結果だけでなく、内容面でも大きな収穫を得る遠征となった。

さらなる切磋琢磨が必要

 桃田が21歳、奥原が20歳と若く(奥原が早生まれのため学年は一緒)、2020年の東京五輪でもメダル獲得が期待されるホープだが、目の前にチャンスがある状況で4年も待つつもりはない。桃田が「5年後の東京五輪で勝負だねとよく言われるけど、自分の中ではリオから勝負。本気で勝負をして収穫や反省が次の東京に生きる。まずは東京のことは考えずに、リオのことを考えて頑張っていきたい」と話すと、隣で聞いていた奥原も何度もうなずいた。ともに、世界のベテラン勢から見れば、危険な存在となりつつある若手。今後はマークされて厳しい展開になることが予想される。スーパーシリーズ・ファイナルに2名+3組が出場している日本は、世界のトップレベルで戦う力を備えている。

 しかし、五輪という大舞台で上位に入るには、さらなる切磋琢磨(せっさたくま)が必要だ。その点、今大会で優勝した同学年の2人が互いに良い刺激を受けて成長している一面は、頼もしい。桃田は、今大会で先に奥原が優勝を決めたことで、プレッシャーがあったという。桃田は「高校3年のときの世界ジュニア選手権でも、先に奥原選手が勝って、アベック優勝かと言われて、ギリギリで勝った。今回は自分が先に試合に入りたかったけど、また同じ展開になった」と笑った。

 一方で、ケガをしている間、先にシニアで活躍し始めた桃田に置いていかれたくないという思いも持っていたという奥原は「桃田選手は、私から見れば順風満帆。勝負所で絶対に結果を出している、勝負強い選手。追いついたというより、まだ追いかけている状況だと思う」とライバル心を示した。来季、険しさを増す五輪レースをタフに戦い抜き、ファイナル優勝からさらに成長してこそ、リオのメダルが見えてくる。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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