桃田賢斗と奥原希望が抱くライバル心 リオ五輪へ勢いづく日本バドミントン界

平野貴也

スーパーシリーズ・ファイナルで日本人選手として初めて優勝した桃田(右)と奥原 【平野貴也】

 日本バドミントン界が、リオデジャネイロ五輪でのメダル獲得に向けて勢いに乗っている。年間12大会を世界各地で行う国際シリーズ「BWF(世界バドミントン連盟)ワールドスーパーシリーズ」の上位成績者や世界選手権の優勝者の8選手(組)が出場する「スーパーシリーズ・ファイナル」が9日から13日までアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで行われ、日本勢は男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)、女子シングルスの奥原希望(日本ユニシス)がそれぞれ初優勝を飾った。同種目の日本人選手の制覇は、いずれも初。昨年、日本勢として初めて優勝を飾った女子ダブルスの高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)も3位タイと健闘した。世界のトップ選手のみで争われるハイレベルな大会で日本勢が続々と優勝を飾り、成長ぶりを見せつけている印象だ。帰国した14日、選手たちが記者会見で今大会の成果とリオ五輪に向けた手応えを語った。

まだ超えなければいけない壁がある

今大会での対戦は実現しなかったが、桃田は3強に割って入る意気込みをのぞかせた 【Getty Images】

 男子シングルスの桃田は、今夏にジャカルタで開催された世界選手権でも銅メダルの活躍。最新の世界ランクは5位(2015年12月10日付け)と安定して世界トップクラスの成績を出している。今大会では、2組に分かれて総当たりで行う1次リーグ3試合、各組上位2位が進出する決勝トーナメント2試合の計5試合を全勝。決勝戦では、同い年で世界ランク6位のビクトル・アクセルセン(デンマーク)をストレートで下し、文句なしの優勝を飾った。12月4日まで全日本総合選手権を戦って初優勝。正真正銘の日本のエースとなった直後に現地へ飛んで厳しい連戦を勝ち抜いた桃田は「大会を通して自分のテクニック、ネット前からのショットは、相手を上回ったと思う。あとは課題だったフィジカル面も、相手がきつくてミスをするくらいに粘れた。全日本を勝って、本当にきつくてファイナルはもう(負けても)いいかなと思いかけたこともあったけど、最後まで粘ったら相手の方が先にバテた。こんなにスタミナが付いていたんだなと実感した」とタフな戦いを制したことで自信を深めていた。

 ただし、3大会連続の五輪金メダルを狙う伝説的存在のリン・ダン(中国)や、2大会連続で五輪銀メダルを獲得しているリー・チョンウェイ(マレーシア)は今大会に出場しておらず、まだ勝ったことがない強敵だ。彼ら2人に加えて3強と呼ばれるチェン・ロン(中国)は出場していたが、準決勝で敗れたために対戦は実現しなかった。世界の頂点に立つためには、まだ超えなければいけない壁がある。帰国会見では「自分の実力が3人を超えたかと言えば、そうではないと思う。その3人を脅かす1番手になれたことは楽しみではあるけど、もっと苦しくなるんだろうなという気持ちもある。ただ、リオ直前までには対等に試合ができて、どっちが勝つか分からないくらい強くなりたい」とやや控えめなコメントの中に、3強に割って入る意気込みをのぞかせた。

 実際、会見後に話を聞くと「彼らと対等に戦える気持ちを持っていいと思っている。勝ちたいというより、早く倒さなければという気持ち。正直、チェン・ロンが準決勝で負けたというだけ。おこぼれ優勝みたいな見方をされている部分もあるみたいだけど、違うと思う。自信があったし、どっちが勝ってきてもいいと思っていた」と対抗意識をあらわにした。実績で下回ることは認めるが、今の実力が劣るなどとは認めないとでも言いたげな表情が印象的だった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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