歴史的な快進撃をけん引するカリー 杉浦大介のNBAダイアリー ウォリアーズ編

杉浦大介

勝ち続けることでさらにチームが充実

今のウォリアーズは米国でも最高級のエンターテイメントとなっている 【Getty Images】

 チーム最大のスターであるカリーの魅力を中心に記してきたが、現在のウォリアーズはワンマンチームというわけではもちろんない。

 カリー、クレイ・トンプソンというリーグ最高級と呼ばれるようになったガード・デュオに加え、万能派のドレイモンド・グリーン、守備の要のアンドリュー・ボーガットといった優れたビッグマンも擁している。

 昨季ファイナルでMVPを獲得したアンドレ・イグダーラが、ベンチから登場する層の厚さは脅威。これらのキラ星のようなタレントたちが、自由自在にパスを回し、献身的なチーム・バスケットボールを展開する。

「私たちはボールをシェアし、速いペースでプレーする。ファンが痺れるようなスター選手を擁していて、彼らはクレイジーなショットを決めてくれる。私たちのバスケットボールはファンを楽しませる。人々はそんなゲームを観たがるもの。私がファンだったら同じように感じるはずだよ」

 ルーク・ウォルトン暫定ヘッドコーチ(監督)が自画自賛する通り、今のウォリアーズは米国でも最高級のエンターテインメント。普段はスポーツに興味のない女の子をアリーナに連れて行きたいなら、ウォリアーズ戦を選べば絶対に間違いはない。何より凄いのは、どんなスポーツでも難しいはずの“面白さ”と“強さ”の両立を、彼らは最高レベルで成し遂げていることである。

「夢みたいだよ。優勝直後でも、“栄光の二日酔い”のようなものはどこにもない。毎晩、相手チームは僕たちにはベストの状態でぶつかってくるけれど、それでも勝ち続けている。みんなが優勝リングを大事にしていて、もう一つほしいと感じ、そのために全力を尽くしている。休みの日でも、みんなが練習に出てくる。よくまとまったチームだよ」

 控えセンターのモーリス・スペイツのそんな言葉通り、現在の充実ぶりの背後に昨季の美酒があるのは間違いないのだろう。

 ウォリアーズが30年ぶりに成し遂げたファイナル制覇は、選手たちにとってほとんど夢のような栄光の時間だった。あんな素晴らしい思いを再び味わうためなら、エゴを捨ててボールをシェアすることも、必要に応じて身体を張ってディフェンスに奔走することも構わない。勝ち続けることによって強固になったケミストリーに、カリーという超越的な才能の開花が加わった。おかげで、現在のウォリアーズの圧倒的な快進撃は可能になったのだろう。

どこまで記録を伸ばせるか!?

 もちろん、だからと言ってウォリアーズが今後も無敵で勝ち続けられるわけではない。破竹の連勝記録は、8日の敵地でのペイサーズ戦を皮切りに、14日間で7戦をプレーする厳しい日々の中で終焉を迎えるかもしれない。また、レギュラーシーズンを最高の成績で突破したところで、2年連続で頂点まで勝ち抜ける保証があるわけでもない。

 プレーオフでは鋼の強さを誇るサンアントニオ・スパーズ、怪物レブロンが率いるクリーブランド・キャバリアーズが待ち受けている。ハイレベルなNBAにおいて、連覇は簡単ではない。ただ……例えそうだとしても、私たちファンが、ウォリアーズの織りなす魅力的なバスケットボールに感謝し、今のうちに目に焼き付けておくべきだという事実が変わるわけではない。

 昨季のウォリアーズは、シーズン、プレーオフを合わせて83勝20敗という見事なまでの強さで優勝を果たした。1年で合計83勝以上は、マイケル・ジョーダンが属した95〜96年(87勝13敗)、96〜97年(84勝17敗)のシカゴ・ブルズ以来。そして、今シーズンの彼らはそれ以上のペースで勝ち続けている。

 現在のウォリアーズのミニ・ダイナスティ(王朝)がどんな結末を迎えることになるかは分からない。1つはっきりしているのは、カリーという超越的なスターを軸に、これほど魅力的な形で、これほどの強さで勝ち続けるチームには、私たちはこれから先にもそう簡単には巡り会えないということだけである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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