“童顔の暗殺者”カリーの快進撃=ウォリアーズを勝利に導くプレーメーカー

杉浦大介

人々を魅了する爆発的なシュート力

12月下旬から10連勝を達成したウォリアーズ。チームをけん引するのがステファン・カリーだ 【Getty Images】

 「“(今夜は)ステファン・カリーが好調だよ”。そんなテキストメッセージを受け取ったら、例えディナーの最中でも、私は緊急時のドクターのようにスポーツバーに飛び込んで試合を見るだろう」

 ESPNなどで活躍する人気コラムニストのビル・シモンズが昨春に記していたそんな記述に、今では納得する人も多いのではないか。ゴールデンステイト・ウォリアーズのポイントガード(PG)、25歳のカリーはそれほどエキサイティングな選手に成長しているのである。

 2009年ドラフト全体7位でウォリアーズ入りしたカリーの最大の魅力は、入り出したら止まらないシュート力。191センチとNBA選手としては小柄な体格から、思い切り良くジャンパーを放っていく。昨季はプロ4年目にして初めてシーズン平均20得点(22.9点)の大台を突破し、同時に年間272本の3点シュートを決め、レイ・アレン(マイアミ・ヒート)が保持していた1シーズンの3ポイント成功数記録を更新した。

 「カリーはNBA史上最高のシューターの1人だ」

 カリーに8本の3点シュートを決められて敗れた1月2日の試合後、ヒートの帝王レブロン・ジェームスもそんな最大限の称賛をプレゼントした。

 いわゆる“ゾーンに入った”と表現される好調時のカリーは、見ている方が度肝を抜かれる勢いでフロアのどこからでもシュートを決めてしまう。そうなったらもう目が離せず、NBAファンのツイッターのタイムラインもカリーの話題一色となる。

チームも10連勝と勢いに乗る

 このカリーの成長に足並みを合わせるように、13年の12月下旬以降はウォリアーズも絶好調の戦いを続けている。

 現地1月8日のブルックリン・ネッツ戦に敗れるまで、75−76シーズン以降ではフランチャイズ史上最高となる10連勝を達成。その間にはヒート、ロサンゼルス・クリッパーズのような強豪も下し、特に最後の6試合はすべてロードゲームだったのだから価値が高い。

 昨季6年振りにプレーオフに進出したウォリアーズへの期待度は、今季も開幕前から高かった。カリー、クレイ・トンプソンというシュート力抜群のガード・デュオに加え、リバウンドの得意なデビッド・リー、守備の良いアンドリュー・ボーガットという優れたビッグマンも擁している。

 さらに昨オフには万能派のアンドレ・イグダーラを獲得し、よりバランスの良いチームになった。序盤戦ではけが人も出たが、この5人がそろって先発した試合では今季19勝4敗と強さを誇っている。

 「カンファレンスの上位チームとの差を詰めることができた。特にロードで勝つのは重要なこと。連勝記録が止まったのは残念だけど、今後しばらくはホームゲームが多いだけに、今回の遠征の成功にはより大きな意味があるよ」。ネッツ戦後にはカリーがそう語っていた通り、破竹の10連勝でウォリアーズは改めてその勢いを印象づけたと言って良い。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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