誰もが納得したNBAファイナルの結末 覇者ウォリアーズが体現した原点
40年ぶりのファイナル王者
NBAファイナルを4勝2敗で見事に制したウォリアーズ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
シリーズが始まると、両チームのファンは毎試合で地元チームに大声援を送り、考え得る限り最高の雰囲気を作り出してくれた。試合内容も接戦が多く、全体の盛り上がりでは近年屈指ではなかったか。
そして、そんな大舞台を4勝2敗で制したのはウォリアーズ。シリーズ平均26得点を挙げたステファン・カリー、そのカリーと“スプラッシュ・ブラザーズ”を形成するクレイ・トンプソン、第6戦でトリプルダブルをマークしたドレイモンド・グリーン……多くの役者を擁する“西カンファレンスの雄”のチームプレーは際立っていた。
「信じられないような経験だ。チームのために自分を犠牲にして、努力してくれたチームメート全員を愛している。今はみんなで(優勝を)喜びたい。コーチングスタッフもこの瞬間を喜ぶべきだ」
カリーのそんな言葉通り、実に40年もファイナル制覇から見放されていたチームを、就任1年目で頂点に導いたスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)の機転の利いた采配も素晴らしかった。レギュラーシーズン67勝、プレーオフでも16勝を挙げ、1シーズン83勝を挙げたNBA史上3チーム目となったのだから、誰にも文句は言わせない。2014−15シーズンのウォリアーズの安定した強さは、今後も永く語り継がれていくだろう。
レブロンが挑んだジャイアントキリング
けがで主力選手を欠く状況下でもレブロン(右)は意地を見せ、第1〜3戦で計123点という史上最高の数字を残した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
勝者にはもちろん最大限の敬意を払わねばならない。それでも、今ファイナルが史上最高のテレビ視聴率を勝ち得るほどの人気になった最大の要因は、やはり現代の怪物、レブロンの存在感ではなかったか。
キャブズはプレーオフ第1ラウンドで今季平均16.4得点を挙げたケビン・ラブを左肩脱臼で失った。それに加えて、ファイナルの第1戦では第2スコアラーのカイリー・アービング(今季平均21.7得点)も膝皿を骨折して今季絶望に。この第1戦を延長の末に敗れた時点で、シリーズはウォリアーズの圧勝という空気が漂った。
「2人のオールスター選手抜きにファイナルを戦ったチームは過去にも存在しなかったんじゃないかな。もっと前にさかのぼれば、チームの中心の1人であるアンディ(アンダーソン・バレジャオ)もけがで失っている。それからオールスターのケビン、同じくオールスターのカイリーを失った。彼らの穴を埋めようと皆で必死でやって、とても疲労したよ」
レブロンのそんな言葉は、単なるアンダードッグの言い訳ではなかったはずだ。ところが、ウォリアーズのスイープ勝利(4連勝)も有力と目された絶望的な状況下で、レブロンとキャブズは意地を見せてくれる。
第2戦ではレブロンが39得点、16リバウンド、11アシストと大活躍し、再び延長戦の末に敵地ゴールデンステイトで勝利。続く第3戦も伏兵マシュー・デラベドバが20得点を挙げてレブロンを援護し、アービング離脱直後の2試合でキャブズはまさかの連勝を飾った。
この時点でシリーズを2勝1敗とリードし、第1〜3戦でのレブロンの合計得点123はファイナル史上最高。“レブロン恐るべし”の声とともに、大番狂わせを期待する空気もにわかに生まれ始める。
“ビッグ3”から“ビッグ1”になってしまったレブロンが、死力を尽くして挑んだジャイアントキリング。シリーズ平均35.8得点、13.3リバウンド、8.8アシストという信じられない数字を残し、ベイエリア(ウォリアーズの本拠地)の人々を一時的にでも青ざめさせた奮闘ぶりはほとんど常軌を逸していた。