新生グローリーが悲願のオランダ大会開催 復活へ向けK-1歴代王者が立ち上がる

遠藤文康

シュルト、ホースト、ボンヤスキーが市長を表敬訪問

シュルト、ホースト、ボンヤスキーそれにリコたちヘビー級王者がグローリー復活へアムステルダム市長を表敬訪問 【(c)GLORY】

 2012年にスタートした新生グローリーが3年目にして念願悲願のオランダ大会開催にこぎつけることに成功した。これはキックボクシングやMMAなどに偏見を持つアムステルダム市長が格闘技の大規模大会への開催許可を与えなかったことによる。
 キックボクサーによる軽犯罪がオランダで多々発生していることは事実で、王者として名を馳せたバダ・ハリの市民への暴行は更なる偏見を市長にもたらす結果となっていた。

 オランダでは市長同士の横の連携も強いため、オランダ都市部でのキックの大規模大会はことごとく開催許可が下りないという状況が2010年よりずっと続いていた。
 そんな中でイッツ・ショウタイムはグローリーに買収され日本では旧K−1が金銭問題で消滅するというキックボクシング界では混沌が始まった。
 グローリーは目論んでいたオランダ開催ができず、またテレビスポンサーからの収益を狙った日本大会も全く予想外の不本意な結果となり、はては元来がキック人気などないアメリカを転々とする興行を続けるという不完全燃焼な状態が続いていた。

 とはいえグローリーも黙って何もしなかったわけではない。ランキング王者のほとんどがオランダ人であるにもかかわらずオランダ大会ができないというジレンマ。この現状を何とか打開しようと水面下でアムステルダム市長への説得工作は続けられてきた。
 グローリーの役員たちによる市長への説得はもちろんのこと、ことし夏場にはシュルト、ホースト、ボンヤスキーといった歴代K−1王者および現グローリー王者たちが市長を表敬訪問しキックの素晴らしさ、オランダ人の世界での活躍を語った。ヘビー級王者に囲まれた市長はまんざらでもない気分になったことは間違いなく今大会開催への大きなステップとなったと想像できる。
 リングサイドには市長と厚生大臣の席が用意され二人とも観戦にかなり満足した模様。

リコのKO勝利に市長も厚生大臣も興奮

リコの豪快KO防衛に女性の厚生大臣は興奮して祝福 【(c)GLORY】

 今大会の内容如何で今後の大会許可が下りるかどうかの課題を背負ってリコ・フェルフーフェンはヘビー級王者として花道を走ってリングインした。場内に歓声が上がった。対峙するルーマニアからのベンジャミン・アグデバイは危険な相手だ。下馬評でも王者交代の可能性が取り上げられた。
 リコには問題点もある。試合の面白みに欠けるのだ。いい体とマスクを持ちながらスカッとしたKO勝利ができない。まとまったそれなりの内容で勝つのだが盛り上がりにはまったく欠ける。観ている側にとってフラストレーションが溜まる試合をする男。いわゆる“しょっぱい”試合しかできない男。それがリコなのだ。
 そのリコが花道を短距離走のように走った。でかい男が全力で走りリングサイドを一周してリングインした。市長と厚生大臣の真ん前を走ったのだ。その気合たるや今大会における己の役割を十分に自覚していたものとうかがえる。

 そしてこの試合は一方的だった。出だしからリコは攻めた。相手の様子を見るというセオリーも無視しアグデバイに攻めさせる隙を微塵も与えなかった。小刻みなジャブと伸びのあるストレートを休むことなくスピーディに繰り返した。
 素早い攻めを続けるリコにアグデバイはまったく対応できず、最後は右ストレートフックをアゴに叩き込まれてマットに昏倒した。試合開始から2分12秒。完全KOでリコは試合を締めた。このリコの変貌した試合ぶりに場内は総立ちとなり市長も厚生大臣も興奮の面持ちで拍手を送っていた。

会場の空気を一変させたアムラニの活躍

アムラニとチビンの一戦はキック初心者にも分かり易いKO決着に 【(c)GLORY】

 またモッサブ・アムラニもいい味を出した。スーパーファイトシリーズが全て判定決着だったため、キック初観戦の市長たちにとってはつまらない雰囲気になっていたころ。グローリー本戦が始まり65kgトーナメントでブラジルからのマイケル・ユルクがTKO勝利。続くアムラニが韓国からのイム・チビン相手に1分32秒のKO勝利。左レバーから左フックという流麗なコンビネーションKOで場内の熱は急激に上がった。
 その後にリコのヘビー級の試合と続き場内のボルテージは頂点にさしかかった。そしてアムラニは決勝でも1分51秒というKO勝利を収め小気味よい本戦の流れは最高潮となった。

 アムラニは王者セルゲイ・アダムチャックに挑戦する。アダムチャックはウクライナからマイクスジムへやってきて今年6月に上階級のマラト・グリゴリアンを撃破。7月に日本のK−1でデビュー。11月のグローリーで65kg王者に就任。あれよあれよの5カ月でまったく無名だった選手が世界の頂点に立ったのだ。若い勢いというのはだから面白い。あっという間に世代交代は発生する。充実期にあるアムラニが彗星の如く登場したアダムチャックに挑む。互いに厳しい一戦となることは間違いない。

不可解判定のメインに不信感

判定を聞いた瞬間に立ち去るフルンハルト。この一枚に彼の思いの全てが表れている 【(c)GLORY】

 興奮した場内余韻が覚めやらぬままメインとなった。王者ニキー・ホルツケン。ボクシング技術はピカ一。対するマーテル・フルンハルト。K−1グローバル初代MAX王者。両者の5Rマッチはフルンハルトの手数が圧倒した。
 ホルツケンのローで終盤ダメージを受けたフルンハルトだったがダウンはない。パンチと蹴りとヒザの攻撃数とヒット数ともにフルンハルトが圧倒的に上。それを大画面で発表しておきながら判定はホルツケン。この不可解判定にオランダでは多くの声が上がっている。

 攻撃数をパーセンテージ分析して大画面発表するのならそれに沿った判定が出なければこれは良くない。「ダメージがあったかどうかが基準となる」とグローリーでは弁明しているが、それでは攻撃数の発表などは無意味である。自分たちルールを自分たちで否定するようなコメントもいただけない。11月のシッテチャイvs.ロスマレン戦でも同様な判定結果となった。2度続いたこのような不可解な結果に関係者は不信を募らせている。フルンハルトは判定を聞くやすぐさまリングを降りた。グローリーの問題点としてこのことはきちんとしておかなければなるまい。

グローリー批判のグーカン・サキが復帰

 来年のグローリーのスケジュールは未定だが驚いたことにグーカン・サキの復帰が発表された。グローリー批判をして離脱してたった半年で復帰。サキはイッツ・ショウタイムでも金銭駆け引きをして追放されたことがある。詫びを入れてイッツ・ショウタイムに復帰できたが、今回もサキは似たようなことをやっている。グローリーを徹底的に罵倒して離脱しておきながら再び復帰というわけだから何がどうなったのか事情を説明すべきだろう。サキという人間の人間性そのものが問われる行動である。

■「グローリー26」
12月4日(現地時間)オランダ・アムステルダム ライ・コングレスホール 

<77kgタイトルマッチ>
[王者]○ニキー・ホルツケン
(判定2−1※49−46、49−46、46−49)
[挑戦者]●マーテル・フルンハルト

<ヘビー級タイトルマッチ>
[王者]○リコ・フェルフーフェン
(1R2分12秒 KO※右フック)
[王者]●ベンジャミン・アデグバイ(ルーマニア)

<65kgコンテンダートーナメント ファイナル>
○モッサブ・アムラニ
(1R1分51秒 KO※左ミドル)
●マイケル・ユルク

<65kgコンテンダートーナメント セミファイナル>
○モッサブ・アムラニ
(1R1分32秒 KO※左フック)
●イム・チビン(韓国)

<65kgコンテンダートーナメント セミファイナル>
○マイケル・ユルク
(1R1分30秒 KO)
●シェーン・オブロンスキー
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