オランダで熱気溢れる新イベント メルビン・マヌーフ主宰の「WFL」

遠藤文康

2000人規模の会場が総立ちの盛り上がり

オランダでメルビン・マヌーフ主宰の「WFL」が発足。第2回大会も会場は熱気に溢れた 【Ben Pontier(ベン・ポンティア)】

 オランダで新イベントとなるワールド・ファイティング・リーグ(以下WFL)が発足。4月にスタートし、10月18日にホーフドドロップ市スポーツコンプレックス・コニング・アレキサンダーで行われた2回目の興行でもかなり好調だ。主宰は日本でも活躍したあのメルビン・マヌーフ。2000人規模を収容する会場は満員で熱気に溢れ、メインでは場内総立ちの盛り上がりを見せていた。

 メルビン・マヌーフは格闘技ファンなら誰でも知っての通り、キックとMMAの両刀使いの選手だったが、2年前にジム経営をスタート。そして今年からいよいよプロモーターとして自前イベントのWFLを立ち上げ尽力することとなった。

まさにイッツ・ショウタイムの復活

イッツ・ショウタイムのノウハウを参考にし、試合インターバルに花道で踊る女性ダンサーたちもそのまま 【Ben Pontier(ベン・ポンティア)】

 そしてこのWFLの運営進行があのイッツ・ショウタイムのノウハウを参考にしている点が心憎い。オープニングの煽りビデオのナレーションもショウタイムと同じだし、試合インターバルに花道で踊る女性ダンサーたちもそのまま。レーザー光線で場内を盛り上げるスタイルもそのままだ。

 思えばマヌーフはイッツ・ショウタイムで育った選手。イッツ・ショウタイムは2011年にグローリーに買収されたことで消滅したものの、その進行ノウハウはイベントとして高度に完成されたものだった。ショウタイムで育ったマヌーフがそのノウハウをそのまま活用してイベントを運営している姿は感動的だ。

大会は3階級の4人トーナメントとワンマッチ

イッツ・ショウタイムのスタイルが色褪せることなく完成されたノウハウであることをマヌーフが証明した 【Ben Pontier(ベン・ポンティア)】

 WFLの基本は3階級の4人トーナメントと合い間にワンマッチを入れる。4月大会では65kgと84kg、そして女子56kgのトーナメント。2回目の今大会では70kgと95kgそして女子61kgのトーナメント。メインに目玉となる試合を一つ組んでいる。

 これから先もこのスタイルを維持するのか、もしくはコンセプトを変化させて行く可能性もあるだろうが、WFLのキャプションが『Unfinished business』(終わりなき仕事)と銘打っていることから、WFLを大切に育て上げたい気持ちがマヌーフにあることは十分にみてとれる。

 こう言っては失礼だが、まさかマヌーフがイッツ・ショウタイムのノウハウを駆使したイベントを立ち上げるとは想像もできなかったし、考えてみればオランダ人のキック関係者が誰一人イッツ・ショウタイムのノウハウを活かす大会を立ち上げなかったことも不思議だった。何よりもイッツ・ショウタイムのスタイルが今も決して色褪せることなく完成されたノウハウであることをマヌーフはまさに証明してくれた。

モハメド・カマルの完全復活

メインで勝利したモハメド・カマルは完全復活をアピール 【Ben Pontier(ベン・ポンティア)】

 大会のメインを締めたのがモハメド・カマル対シャイド・ウラド・エラージの一戦。

 カマルはK−1 MAXオランダ優勝者であり、イッツ・ショウタイムのキング・オブ・アムステルダムであり、現グローリー王者ロビン・ファン・ロスマレンに過去2戦して2勝という選手である。ロスマレンがどうにも勝てない相手、それがモハメド・カマルだ。

 2012年から私生活上でトラブルに巻き込まれ練習ができない環境に陥り、2年ほどのブランクがあったが、2014年に一区切りついたことで戦線復帰し徐々にコンディションを上げ今大会では万雷の拍手を受けてシャイドとのリベンジに立った。

 一方のシャイドはK−1でもイッツ・ショウタイムでもタフで頑丈なファイトを披露した選手として有名で2010年にはカマルを判定で下している。

 再戦の結果はシャイドのアゴを折る右フックKOでカマルはリベンジを果たすとともに完全復調を周囲に力強く印象付けた。まだ25歳のカマルはこれから70kg戦線に乱入してくることは間違いない。おそらくロスマレンも三度目の正直でカマルとのリベンジを考え始めていることだろう。

将来的には両国での開催も視野

日本のK−1で急激に名を上げたマサロ・グルンダーも健闘した 【Ben Pontier(ベン・ポンティア)】

 また、日本のK−1で急激に名を上げたマサロ・グルンダーが70kgトーナメントに登場。ベテランのウィリアム・ディンダーを破って決勝に上がるもマヌーフの甥にあたるセドリック・マヌーフに惜敗。通常65kgのグルンダーにとって70kg戦はウエイト差と圧力が厳しかった。しかしながら如何なく才能を発揮し十分な働きを見せていた。

 年2回ペースで開催予定のWFLはドイツとボスニアの団体とも提携した。両国での開催も視野に入っている。日本で言えば後楽園ホールサイズの会場でイッツ・ショウタイムのノウハウを活かして開催するWFLは新たなオランダのキックイベントとして定着し成長する可能性まさに大である。

試合結果

<レディース61kgトーナメント 賞金7500ユーロ>
○イロナ・ワイマンス
●サリサ・ファン・デン・ボス

○オリンタ・ファン・デン・ゼー
●サラ・デ・バイブ

【決勝】
○イロナ・ワイマンス(マヌーフジム)
●オリンタ・ゼー(ボスジム)

<70kgトーナメント 賞金14000ユーロ>
○セドリック・マヌーフ
●エドソン・フォルテス

○マサロ・グルンダー
●ウィリアム・ディンダー

【決勝】
○セドリック・マヌーフ(マヌーフジム)
●マサロ・グルンダー(マイクスジム)

<95kgトーナメント 賞金20000ユーロ>
○ルイス・タバレス
●フレッド・スィキング

○ロレンゾ・ホルヘ
●レドゥアン・カイロ

【決勝】
○ルイス・タバレス(ケープベルデ)
●ロレンゾ・ホルヘ(スペイン)

<スーパーマッチ>
○モハメド・カマル(ボスジム)
●シャイド・ウラド・エラージ(Tシャイド)

【試合展開】
 両者ともに力が入り過ぎてガチガチ。慎重に様子を見ながら要所でパンチ中心の打撃戦。スピードで一枚上手のカマルのパンチが的確にシャイドを捉える。2Rに入りパンチ交差でカマルの右ストレートが後の先でカウンターとなりシャイドがバックステップでよろめきながらダウン。立ち上がるも血の気が失せた顔となり再びの交錯でカマルの右フックがアゴを貫きシャイドは昏倒。カウント中にセコンドからタオルが入りカマルがTKO勝利でシャイドへの過去の清算を済ませた。あのタフなシャイドをパンチで倒しきったカマルはまさに完全復調と言って間違いない。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント