予想外な幕開けを迎えたW杯南米予選 エース不在の2強がそろって黒星発進

欠場者の穴が大きかったアルゼンチン

パラグアイ戦のアルゼンチン代表メンバー。メッシ、アグエロらけがで欠場した選手が多かった 【写真:ロイター/アフロ】

 絶対的エースのメッシがけがで不在とはいえ、アルゼンチンのつまずきは前評判の低かったブラジルのそれ以上に驚きをもって受け止められた。

 世界最高のプレーヤーに匹敵するタレントは存在しなくとも、アルゼンチンには余るほど優秀なアタッカーがいる。ヘラルド・マルティーノ監督とアルビセレステ(アルゼンチン代表の愛称)の選手たちは、そのことを証明すべくこの2試合に挑んだはずだ。

 だが、エクアドルとの初戦ではセルヒオ・アグエロが直前のプレミアリーグで痛めたけがを再発させて前半途中にピッチを退き、試合後にはルーカス・ビグリアも離脱を強いられた。その結果、0−2で落としたエクアドルとの初戦に続いてパラグアイとの第2戦も無得点のままスコアレスドローに持ち込まれてしまった。

 エクアドルとのホームゲームは、年内に組まれた4試合の中で最も勝ち点3の獲得が計算されていた一戦だった。それがふたを開けてみれば戦術的に圧倒され、ジェフェルソン・モンテロとアントニオ・バレンシアのスピードを生かしたサイドアタックに翻弄(ほんろう)され続けた。マルコス・ロホとパブロ・サバレタの欠場により、両サイドバックに控えのエマヌエル・マスとファクンド・ロンカリアを起用しなければならなかったことも痛かった。

 他にフェルナンド・ガゴとエベル・バネガもけがで欠き、ゴンサロ・イグアインが招集外となるなど欠場者が多かったことは確かだ。だがそれを差し引いても、同じくメッシを欠きながらドイツを4−2で破ったマルティーノのデビュー戦(14年9月3日)以降、アルゼンチンのパフォーマンスが緩やかに下降曲線を描いている印象は否めない。

 長らく中盤を支えてきたハビエル・マスチェラーノは万全の状態になく、ハビエル・パストーレはプレーポジションが低過ぎ、長期離脱明けのアンヘル・ディ・マリアはサイドに張り付いているばかりで動きが少ない。カルロス・テベスは昨季のユベントスや現在のボカ・ジュニオルスのように得意の1.5列目ではなく、最前線でのプレーを強いられている。

 同郷のグスタボ・キンテロス監督率いる堅固で統制の行き届いたエクアドルにホームで完敗した一戦において、唯一新鮮な風をもたらしたのは若いアンヘル・コレーアの台頭くらいだった。

実力差が年々縮まっている

南米王者チリなども力をつけており、各チームの実力差が確実に縮まっている 【写真:ロイター/アフロ】

 他ではパラグアイがゲーム終盤に相手が犯した致命的ミスを突き、アウェーでベネズエラに1−0で勝利。コロンビアはホームにペルーを迎えた一戦で苦戦を強いられながらも、2−0の勝利を手にしている。

 近年南米ではボリビアとベネズエラを除く8チームの実力差が年々縮まっている。現実的に考えれば、最後は順当な結果に落ち着くのだろう。だが長い歴史を振り返れば、今予選でも何らかのサプライズが生じる可能性は十分にあり得るのではないか。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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