トゥヘルがもたらしたドルトムントの変化 ドイツ王者に大敗も、信じて歩む新たな道
新戦術の恩恵を受ける香川
だが、ムヒタリアンの安定だけが、ドルトムント復活の要因ではない。「ピエル=エメリク・オバメヤン抜きで、今季のドルトムントの復活はなかった」と、デーリングは確信している。このガボン代表は、早くも先週末(第8節終了時点)で10ゴールに到達してしまった。
「彼こそは鍵となる仕事人だ」
キャプテンのマッツ・フンメルスも、新GKロマン・ビュルキも重要な仕事の連続に称賛を惜しまない。
では、香川はどうなのか? この日本人はついに、卓越したキッカーであることを思い出した。「香川は再びもっとボールを要求するようになり、プレーに絡んでいくようになった。必要とあれば、最終ラインの前にまで降りて行く」とデーリングは香川の変化を語る。戦術的な変更が、香川をさらに後押ししているようだ。ヴェスリンクもチームと香川の好循環を認める。
「チーム全体が芽吹いている。もちろん、香川もその恩恵に預かっている」。香川は1人で試合をつくる選手ではなく、「機能的な組織を必要とする。そうしなければ、彼の強みは引き出せない。良いポジションを取り、速く、ダイレクトなショートパスを繰り出し、それらを結実させる。そして、戦術的な長いダイアゴナルのパス。マティアス・ギンターへのそのパスで、すでに2ゴールを導き出している」。
「彼は新しい香川だ。でも、もっと成長を目指して仕事に取り組む必要がある」とデーリングは話す。ヴェスリンクはさらに違った見方をする。「かつての香川との比較は難しい。役割が変わってきているからね」。ムヒタリアンとより近い位置を取り、プレーメーカーを担うようになっている。「でも変わらぬレベルを維持していて、間違いなく今は達人的な選手になっている」とヴェスリンク。
ヴァツケCEO「われわれは間違っていない」
「ファンは成功を楽しみながらも、批判の声も上げている。チケットは高価だし、アジアへの商業的なツアーも行った。かつてクラブのレジェンドを飾っていた場所を横取りした、スポンサーのロゴの位置にも文句を言っている」
クラブが大きくなると、いろいろなところに目を向けなければならなくなる。それでも、ピッチ上に最大の答えが転がっていることに変わりはない。「シーズン終了時には、チャンピオンズリーグ出場権を手にしていなければならない。これは絶対だ」とデーリングは話す。「昨季を終えた後、誰もバイエルンを追い落とそうなどという野心は持っていなかった」。その理由をヴェスリンクが語る。「ドルトムントは、まだバイエルンほどの安定性と強さを身につけていない。でも、うまくいくと確信している」。
CEOのハンス=ヨアヒム・ヴァツケは、すでに気を緩めないようにと警告を発していた。
「今回はまた大げさに騒がれ過ぎだ。すべてが正しく働くことも、すべてが間違うこともない。昨季は極めて難しいシーズンだった。それでもわれわれは基本的に間違っていないという感覚が、すでに私にはあった。それが新シーズンに証明されるだろう。ビュルキと(ユリアン・)ヴァイグルという2人の新戦力はいるが、他の選手たちは昨季もいたじゃないか」
クロップは、ドルトムントの素晴らしいスタートダッシュに祝福を送った。ヴァツケが言う。
「7年間、彼はドルトムントに多くをもたらしてくれた。簡単なことではなかったはずだ。成長のためのメカニズムというものが常にある。タイヤにばかり毎日投資を繰り返してはいられない。話はすでに進んでいるんだ」
新たな道を、ドルトムントは進み続ける。たとえいきなり、バイエルンを首位から引きずり下ろすことはなくとも。
(翻訳:杉山孝)