田中将大に求められたのは完璧 物足りない…試合つくれても支配できず

杉浦大介

期待された“大エース”の活躍には及ばない

田中に求められたのは試合を支配する圧倒的なピッチング。まとめるだけでは物足りない…… 【Getty Images】

 予想外の頑張りで3年ぶりにプレーオフに進んだとはいえ、15年のヤンキースは世界一を争うようなチームではなかった。チーム全体がシーズン終盤には明らかにガス欠を起こしていただけに、ワイルドカードゲームでの沈黙も驚きではなかった。余りにも淡々と進んだゲーム終盤は、今季のチームの現実を突きつけられるような時間にすぎなかった。

 ただ……そういった沈滞ムードを変えられるほとんど唯一の術があるとすれば、先発した田中の快刀乱麻だったのも事実ではある。

 全米が注目する大舞台で、試合をつくるだけでなく、ほとんど完璧なピッチングでチームの士気を鼓舞する。ヤンキースが7年1億5500万ドル(約161億円)という大枚をはたいてまで日本の快腕を獲得したのは、そんな投球を期待したから。逆に言えば、それこそがメジャーで“大エース”と呼ばれる投手たちの仕事でもある。

「やっぱりこういう雰囲気で投げることが選手として上を目指していく上での喜び。こういう舞台でやれることは本当に幸せなことだと思うので、なおさら結果を残したかったです」
「今日みたいな試合では展開的に完璧なピッチングをしないと。 球数をかけてしっかり抑えたいという気持ちはあった。絶対的なピッチャーであれば、あそこ(5回)でマウンドを降ろされることはないだろうし……」

 自分に求められていたものを十分に認識していただろう田中の口から、試合後には悔恨の言葉が次々と口を突いて出た。

 ゲームを壊さないでまとめることはできても、支配はできなかった。降板時に勝機は残したとしても、チームに自信を植え付けることはできなかった。過去3年間のニューヨークで最も重要なゲームを任されたエースピッチャーとしては、やはりこの日の投球内容は物足りなかった。

足りないものを突きつけられた短い秋

 今季も12勝7敗、防御率3.51と残した数字は上質。その実力がメジャーで通用することはもう疑いもない。ただ、ケガと被本塁打の多さにも悩まされ、順風満帆のシーズンではなかった。そして、短期間ながら再び故障離脱した9月、2本のホームランで沈んだ10月は、現時点で足りないもの、次のステップに必要なものを突きつけられるような季節だったに違いない。

「自分のこの位置というのは満足していないので、より高いところを目指して投げていくだけですね……」
 
 短い秋を終え、田中は未来への決意を静かに述べた。

 こうして2年目の戦いも終焉(しゅうえん)し、間もなくニューヨークに冷たい冬がやって来る。そのはるか先にある春、夏を芳醇(ほうじゅん)な季節にするために、メジャーにおいて“真のエース”にステップアップするために。頂点を目指す背番号19の長い戦いは、まだまだ始まったばかりである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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