サモアを圧倒した日本代表の組織力 元日本代表・藤井淳が解説

構成:スポーツナビ

「目立ち方」が変わったWTB山田

攻守に活躍したWTB山田。献身的にチームのために働いている 【Photo by Yuka SHIGA】

――前半終了間際にトライを取ったWTB山田章仁の活躍も光りました。

 巨漢WTBトゥイランギ(185センチ、121キロ)をかわしたトライは素晴らしかったですし、キック処理のポジショニングも良かったです。特にスコットランド戦で苦労したハイパントに対して、山田、FLリーチ マイケル、FB五郎丸歩がしっかりキャッチして対応できたのは大きかったと思います。問題点を修正して試合に臨めるのも今の日本代表の強さです。

 山田は学生時代からスキルが高くて、スター性があって目立っていました。ただ、今は献身的にチームのために働くことで、結果として自然に目立っています。目立ち方が変わって、良い意味で大人になりましたね。エディー・ジョーンズHCに厳しく言われることもありましたが、その言葉も力にして、努力を続けたことがW杯での素晴らしいパフォーマンスにつながっていると思います。

4トライ以上を狙えなかったのはケガの影響も

ケガ人が増えているなかで、複数のポジションを高いレベルでこなせるWTB松島幸太朗の貢献度は高い 【Photo by Yuka SHIGA】

――後半は点差もあったので、4トライ以上のボーナスポイントを狙うこともできたと思いますが?

 あれだけの試合をしていたので欲は出ますが、PGで3点を重ねていくのは悪い選択ではなかったと思います。タイミングとしては23対0だった時間帯にトライを狙うシフトにしても良かったですね。ただ、サモアの爆発力を考えれば、まずは時間を使って攻めて確実に勝つことが第一なので、主将のリーチの判断で良いでしょう。

 また、山田、マレ・サウが負傷交代したことで、BKが足りなくなって、本来はFWのツイがWTBに入り、ほかの選手もポジションが動きました。日本代表は控え選手をFWが5人、BKが2人としていました。結果としてこの選択によってBKが足りなくなりましたが、こういう大会ではある程度のギャンブルは必要なので仕方ないと思います。PGを狙ったところは、何事にもブレないエディージャパンの姿勢を感じましたね。

アメリカ戦でエディージャパンの集大成を

歴史を塗り替えているエディージャパン。12日早朝のアメリカ戦で3勝目を狙う 【Photo by Yuka SHIGA】

――決勝トーナメント進出に向けては他国のポイントにも左右されますが、日本代表はアメリカ戦(日本時間12日4時〜)をどう戦うべきでしょうか?

 もちろん、勝つことが最大の目標で、良いメンタルで臨めると思います。今の状態なら負けることはないと言えるぐらい充実していますね。決勝トーナメントも考えてしまいますが、何よりも雑にならずに内容を大事にしてほしいです。それが2019年の日本大会につながるので。

 南アフリカ、サモアに勝ったということは本当に素晴らしいので、アメリカ戦でエディージャパンの集大成を見せてほしいと思います。

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

藤井淳/JunFujii

東芝ブレイブルーパスで活躍する藤井淳。12年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した 【写真:アフロスポーツ】

 1982年8月10日生まれ。身長170センチ、体重77キロ。愛知県出身。西陵商高‐明治大‐東芝ブレイブルーパス。

 西陵商高時代に全国大会に出場、明治大では抜群のスピードを生かして活躍した。東芝ブレイブルーパスでは強気のリードでFWをまとめ、ディフェンス面も向上。2012年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した。

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