野球人生の原点だからこそ重要なこと 侍ジャパンコーチと考える高校野球

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東海大相模が優勝した100周年の夏の高校野球。その未来について、侍ジャパンのコーチたちが考える 【写真は共同】

 各地で来年春のセンバツ出場をかけた高校野球秋季大会が始まり、新チームが始動した。今年100周年を迎えた高校野球は、地方大会から例年以上の盛り上がりを見せた。これから新しい100年間、さらに発展していくために必要なビジョンを考えるべく、プロ野球で活躍後、野球日本代表「侍ジャパン」で15歳以下(U−15)を指導した鹿取義隆氏、12歳以下(U−12)を指導した仁志敏久氏に話を聞いた。聞き手は自身もプロ野球・ヤクルトで活躍したスポーツライターの青島健太氏が担当した。(取材日:8月31日)

タフな鹿取氏を作った打撃投手の経験

現役時代は巨人、西武で救援投手として活躍、現在は侍ジャパンのテクニカルディレクターも務める鹿取氏 【スポーツナビ】

青島:おふたりとも素晴らしい球歴をお持ちですが、そのきっかけとなった高校はどのように選んだのでしょう?

鹿取:高知商に進んだ先輩に誘われて進んだので、自分の選択ではないです。「野球やろうよ」と言われたのが一番の理由ですかね。ただ、甲子園がなんとなく見えていましたね。
 補欠だったので、思い出とすれば苦しい思い出しか残ってないですね。もともとは捕手だったのですが、高校2年の6月くらいに投手に転向しました。ブルペンで練習をしていたら、総監督から「投手と捕手を替われ」と言われました。フリー打撃のとき必ず投げていたので、その影響でしょう。しかも最初のゲームが次の週にあって、たまたまノーヒットノーランだったと。

青島:劇的すぎですね! 苦しい思い出しかない、ということですが、それはどういったものでしょうか?

鹿取:練習は長かったですね。最初は(1学年の部員が)50人くらいで、だんだん減っていって、残ったのは18人くらい。その中では理不尽な練習もありましたね。ただ、打撃投手をやっていたことで、どうすれば負担がかからないか、1時間投げられるかを考えていました。それが後につながったのかと思います。

青島:それが現役時代、毎日のように登板しても耐えられるタフな鹿取さんを作ったのですね。

鹿取:サイドハンドになったのも、打撃投手の打球をよけるネットのL字から投げやすかったというのがありますね。練習後も監督のアパートが合宿所から近かったのでそこに行って、ティーバッティングなどはやりました。「これをやらないと上に行けない」とは思っていたので、“やらされている”練習ではなかったです。(球児たちは)ボールを扱うことによってうまくなれます。コツも覚えるでしょう。それを肌で覚えるためにやったのだと思います。

仁志氏の考えに影響を与えた木内監督

仁志氏の考え方にも大きな影響を与えた常総学院・木内元監督 【写真は共同】

青島:仁志さんはいかがでしょう?

仁志:僕は1年生から試合に出させてもらっていたので、そこで人生が変わったと思います。「(夏の甲子園で)準優勝したチームのショートが1年生」というのが一人歩きして、それに追いつくのが結構プレッシャーでした。

青島:1年生の清宮幸太郎(早稲田実業)くんが注目されていますが、(注目されることによる)彼の難しさも分かるのでは?

仁志:僕はあくまでも3年の後ろにくっついていただけで、プレッシャーがかかることはまずなかったですね。幸太郎もそうらしいですが、幸いにして先輩も気を遣ってくれて、僕は高校も大学も殴られたことがないです。

青島:高校時代に得たもので、その後の自分の成長につながったものはありますか?

仁志:木内(幸男・常総学院元監督)さんは技術的なことは教えないんです。野球の考え方を教えてくれるのですが、普通の野球ではない。ただ、よくよく考えて理屈をこねていけば全部常識に当てはまるんです。

青島:その考えが仁志さんが伸びていく中でいいものとして支えたんですね。

仁志:自分で考えて行動してしまうんですね。木内さんのサインは本当に片手で数えられるくらいしかないんです。(選手で考えて)変更してもいいので、余計な気を回してしまうんです。というのが良くも悪くもあります。

 とにかく木内さんを理解することが野球でした。(1年生から出ていたので3年時には)他の同級生よりも早く理解していましたが、他のチームからすれば異質で野球がちょっと違ったのでしょう。

青島:仁志さんの現役時代は打者によって大胆に守備位置を変えていましたが、その原点は高校時代にあったのですね。

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