すべてのバスケファンが待ち望んだ試合 DREAM GAMESが生まれるまで
走り出したきっかけはライターからの提案
開催に向けて一気に走り出したきっかけは、タスクフォースの取材に訪れていたとあるライターからの提案だった 【スポーツナビ】
「あるライターさんから4月末に『新リーグ(JPBL)のプロモーションをもっとやるべき。その前にはチャンピオンマッチを1試合でもやった方がいいのでは?』という内容のメールをいただいていたんです。そして6月2日のタスクフォースの会場に行ったら、ちょうどそのライターさんと阿部さんが話をされていて、そこに僕も加わったんですよ。『先日はメールありがとうございました』と。それがきっかけで、阿部さんと『打ち合わせをしましょうか?』となったんです」
もちろん川淵チェアマンらによる日本バスケ界の改革が進み、来年の新リーグ設立も決定している状況であることは大前提としてあるものの、「夢の対戦」はひょんなことをきっかけとして大きく動きだしたのである。
もともと「DREAM GAMES」の参加チーム同士がプレシーズンマッチを計画していたことも追い風となり、その後はトントン拍子に計画が進んで夢の対戦は実現された。
「出場してくださる4チームはもちろん、同日に秋田とプレシーズンマッチを企画していて対戦相手を調整してくださったリンク栃木など、本当に多くの関係者のお力添えをいただくことができて開催が実現しました。ご協力いただいたみなさんには本当に感謝しています」(増田)
その後、週に1〜2回、両リーグの関係者が集まり会議が行われることになったという。チケット、権利関係、グッズ、飲食、チームとの接触、ルールの制定が次々に話し合われ、動き出しから約一カ月半後の7月27日には「DREAM GAMES」の開催発表記者会見が、JBA、NBL、bjリーグの代表が登壇して実施された。
頂上決戦であり最高決戦
NBLとbjリーグの関係者が週に1〜2回集まって行われている会議では、両リーグのノウハウが惜しみなく披露されていた 【スポーツナビ】
「DREAM GAMES」開催にあたり、NBLとbjリーグの関係者がお互いに会議を重ねていることは先に記したとおりだが、特筆すべきは物事の進め方。これまで両リーグ共に多くのノウハウを蓄積してきてはいるものの、良くも悪くもまったく違った持ち札がある。それは例えば運営ルール、発注業者、演出アイデアなど。これまではゼロと言っていいほど交流がなかった両リーグが、一つの机で会議を行い、「うちはこうだが、そっちはどうか?」と話し合い、さらにブラッシュアップをした上で採用していく。そんな工程が、試合を作り上げるすべての要素で行われているのである。
11日に行われた9回目の会議に参加してみたところ、非常に和やかなムードの中、次々と物事が決まっていく。この日はチアリーディングの人数や活動エリア、ポスターやチラシのデザイン、プロモーションに使う動画の内容などが話し合われていたが、たたき案を元に両リーグの意見が次々と反映されていく。細かいことを言えば、ポスターなどの印刷費が安い業者を、お互いに紹介し合うことだって可能なのだ。そして削減されたコストは他の要素につぎ込まれていく。そんな好循環はどのような形となってわれわれの元へと届くのだろうか――。頂上決戦であり最高決戦でもあるこの試合。会場の雰囲気を想像しているだけでも楽しみで仕方がない。
「どのチームも勝ちに行くと思いますよ。練習試合ですら監督・選手は熱くなりますから。笛が鳴ったらもう勝負です」(阿部)
「この試合はチームのファンだけでなく、今回の新リーグができることをきっかけにバスケットに興味を持った方も見に来ると思う。やっぱり本気勝負を見てもらわないと」(増田)
ファン・チーム・リーグ関係者にとって待望の一戦は、新たな日本バスケットボール界の幕開けでもある。古くからのファンは、それぞれのプライドを持ち寄り一喜一憂し、初めて観戦に訪れる者は、両リーグが力を合わせた最高のバスケットボールエンターテインメントを目の当たりにする。
夢の戦い「DREAM GAMES」は9月13日。大田区総合体育館は、今までにない雰囲気に包み込まれるに違いない。
(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)