勝敗分ける「サーブ」と「4枚攻撃」 大山加奈が語るバレーW杯観戦ポイント

田中夕子

バレーボールW杯が22日に開幕! 元日本代表の大山加奈さんに今大会の見どころを聞いた 【スポーツナビ】

 8月22日に開幕するバレーボールワールドカップ(W杯)。上位2カ国に与えられるリオデジャネイロ五輪の出場権獲得を目指す、全日本女子の注目選手や観戦のポイントは何か。03年のW杯では「メグカナ」フィーバーを巻き起こし、04年のアテネ五輪にも出場した大山加奈さんに語ってもらった。

サーブの駆け引きにより試合の主導権を握る

全日本女子にとってサーブで主導権を握ることは非常に重要。攻守ともに鍵を握るのが木村沙織だ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 日本が世界で勝つために、まず大切なポイントとなるのがサーブです。

 どのコースにサーブを打てば、誰にトスが上がることが多いのか。その傾向はデータで蓄積されています。攻守のポイントとなる選手を各ローテーションで的確に狙い、プレッシャーをかけ、相手のレシーブを崩し、攻撃を単調にさせる。一般的に高さがあるほうが有利とされるバレーボールにおいて、決して高さに恵まれているわけではない全日本女子にとって、サーブで主導権を握ることはとても重要です。

 全日本女子チームの中で、相手にとって最も脅威となるサーブを打つのがキャプテンの木村沙織選手(東レ)です。フォームは変えずにボールヒットの瞬間に打ち分け、前にポトンと落としたり、ストレートに打つと見せかけてクロスへ打ったり。木村選手の自在なサーブは日本にとって大きな武器であることは間違いありません。

 サーブで誰を狙うか、チームによって細かな戦術の違いはありますが、サーブレシーブを担い、攻撃参加する選手を「できるだけ万全の状態で攻撃させないようにする」というのは、どのチームにとっても共通したこと。たとえば、少しでも速く攻撃に参加しようと少し前で構えている選手の胸元を狙ったサーブでのけ反らせたり、やや後方で構えている選手の前に打ち、膝をつかせることで助走に入るタイミングを遅らせる。小さなことのようですが、これも勝敗を分けるポイントになる駆け引きの1つです。

 全日本女子の中で、相手から「脅威」とされ、最も多くサーブで狙われるのが木村選手です。よく「木村選手はサーブレシーブが上手じゃないから狙われるんでしょ?」と言われることがあるのですが、それは大きな誤解であると、声を大にして言いたい。木村選手が狙われるのは相手にとっては、普通にプレーされるとそれだけ多くの得点を獲られかねない、重要な役割を担う選手だからです。

 狙われる=へた、ではなく、なぜ木村選手が狙われるのか。まずはその理由を知るだけでも、見方が変わってくるはずです。木村選手のところにサーブが打たれれば打たれるほど、相手は木村選手を恐れている、という裏付けでもあるのです。

世界のブロックに対抗するためには

相手のブロックを分散させるために、日本は「常に4枚が同時に攻撃参加する」ことが重要となる 【写真:アフロスポーツ】

 日本が目指すのは「常に4枚が同時に攻撃参加する」ことです。

 4枚というのは、セッターが後衛時ならば前衛の3人+後衛の選手のバックアタック、つまり4か所から異なる攻撃を一斉に仕掛けるということです。

 なぜ同時に複数の場所から攻撃する必要があるのか。それは、相手のブロックを少しでも分散させたいからです。ロシアや中国など高さのあるチームに「日本の攻撃はここしかない」と絞られてしまえば、対峙(たいじ)するアタッカーは常に2枚、さらには3枚のブロックが前にそびえ立つ状況でスパイクを打たなければならなくなり、打てるコースは限られ、相手のブロックを恐れるあまり、ミスによる失点につながることもあります。

 木村選手をはじめとした日本のサイド陣は、準備ができていればしっかりコースに打ち分けられる高い能力を持った選手がそろっています。攻撃力を生かすためにも、ミドルもしっかりアタックラインまで下がって助走に入り、前衛の選手と重ならないスペースをうまく使って、バックアタックも絡めた4枚攻撃を常に仕掛けられる状況がつくれれば、世界のブロック、高さに対しても日本の攻撃は十分通用するはずです。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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