リーチ主将が語る日本代表への思い 「日本はラグビーで僕を育ててくれた」

斉藤健仁

W杯に向けて身につけた「世界一のフィットネス」

フィジー戦ではSH田中らが合流し、FWに勢いが生まれた 【斉藤健仁】

 スーパーラグビーでは優勝こそできなかったが、リーチは確固たる自信を手に入れて帰国した。フィジー戦前には「すべてうまくプレーしたいけど、一番やりたいのは冷静で良い判断をすること。また試合を読むことをやりたいし、成長した跡を見せたい」と臨んだ。試合は惜敗したが、リーチだけでなくSH田中らスーパーラグビー組が合流したこともあって、FWには勢いが生まれた。「方向性としては満足しています。プレーの選択は良かった。試合中も冷静に考えることができていた。ただ接点でもボールキャリアでもパンチが足らなかった」(リーチ)

 W杯本番まで残り5試合、開幕まで50日を切った。リーチにとっては2度目のW杯を迎える。「前回大会は、個人的には全部出し切りました。ただチームとしては走り込みや戦術理解といった部分では『もっとこうやればよかった』と思うことがありました」。だが、現在の日本代表は戦術理解も深まり、フィジカルを高め、「世界一のフィットネス」(リーチ)も身につけた。

日本代表の主将就任で悩んだことも

試合中に選手と話し合い、戦術を確認するリーチ(背番号7) 【斉藤健仁】

 2年前にキャプテンに就任した。ジョーンズHCは「試合に出続けることができ、ワールドクラスの選手になれる可能性があり、ほかの選手の見本になれる」とリーチを選出した。ただNZ出身のリーチは「キャプテンは日本人選手がいいかなと思っていた。外国出身選手がキャプテンになったらファンが減ってしまうかも」と悩んだこともあった。だが、「2019年、日本開催のW杯を考えるとリーチがすべき」とほかの選手の後押しが大きかった。

 それまでも、外国人選手に国歌を教えるなど、日本人選手と外国人選手の橋渡しを積極的に行っていた(ラグビーでは3年居住や祖父母、または両親のいずれかがその国出身者などの条件をクリアすれば、代表選手になれる)。リーチも15歳で来日し、札幌山の手高校、東海大学を卒業し、大学2年で日本代表に初選出。ただ、それでもNZ国籍時はトップリーグでは「外国人」扱いだった。「日本代表で、日本の高校と大学を卒業しているのに、なんで?」と疑問を呈したこともあった。そのまま日本代表でプレーするには何ら問題もなかったが、悩んだ末に、日本国籍を取得した。

「昔から外国人選手がいるのが、トータルの日本のラグビー文化です。(トップリーグのオフ期間に)日本代表に来なくても給料がもらえて、グアムとかに行って休めます。そんな中で、みんな日本とそれぞれつながりがあって、家族との時間を犠牲にし、必死に頑張っています。ラグビーを知らない人にわかってもらうことは難しいと思うけど、日本代表を強くしたい思いがあってプレーしている」と、NZ国籍だった自分を重ねながら、率直な思いを語ってくれた。

「南アフリカ代表との対戦も怖くない」

日本、NZと両国に恩返しをするために、リーチは体を張り続ける 【斉藤健仁】

 リーチは9月19日に初戦を迎えるW杯に対して「2度目ですし、キャプテンですし、雰囲気を味わいたい。(初戦で対戦する)南アフリカ代表(世界ランキング2位。日本は13位)との対戦も怖くない。大事なのは気持ちを高めること。チーフスでもスキルやフィットネスも大事だけど、一番大切なのは勝ちたいという気持ちでした。そうした気持ちの部分を日本代表にも落とし込みたいし、それがキャプテンとしての自分の役割です」と意気込んでいる。

 日本国籍の取得後も、桜のエンブレムに対するプライドは「昔も今も変わらない」。リーチはまっすぐ記者の目を見て「NZで国を代表するように選手になれなかった。日本はラグビーで僕を育ててくれた国ですから」と力強く語った。
 日本、NZと両国に恩返しをするためにも、スーパーラグビーで大きく成長して戻って来たスキッパーは、W杯で誰よりも体を張って日本代表の勝利に向かって邁進する。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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