日本代表のエース・福岡堅樹の可能性 「ラグビーW杯でスターになれる」

斉藤健仁

エディーHC「ケンキは今の方が断トツに速い」

韓国戦で3トライを奪った日本代表WTB福岡堅樹 【斉藤健仁】

 復活を印象づける、胸がすくようなハットトリックだった。

 9月にラグビーワールドカップ(W杯)を控えるラグビー日本代表は、5月9日、福岡・レベルファイブスタジアムで韓国代表と対戦し、10トライを挙げて66対10で快勝、今年から上位3カ国の総当たり戦という新しい形式となった「アジアラグビーチャンピオンシップ」の優勝を決めた。

 3トライと気を吐いて、福岡の競技場を一番盛り上げたのは、昨年6月(アメリカ戦とイタリア戦)以来、桜のジャージに袖を通した福岡高出身のWTB福岡堅樹(筑波大4年)だった。「世界に通用するスピードを持っている」と日本代表を率いるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)に高く評価されている韋駄天だ。「(福岡)ケンキは今の方が断トツに速くなりました。チャンスでトライを取ってほしい。試合が終わったら、おいしいラーメンを食べてほしい(笑)」という指揮官の起用に応えた形だ。

 前半1分、挨拶代わりの先制トライは、左サイドでラックに入った後、福岡はその場所で張っており、右サイドを4度攻めた後、スペースができたところで、CTB田村優(NEC)が正確なキックパスによりお膳立てした。個というよりチームで得たトライだった。だが、その後の2トライは福岡のランが生んだ素晴らしいトライだった。「ナチュラルに速い。復帰を非常にうれしく思います」(ジョーンズHC)

昨年はケガに苦しみ、今季は15人制に専念

2013年のスコットランド戦では2トライを奪う活躍を見せた。 【斉藤健仁】

 福岡は2012年、浪人の末、筑波大に進学。大学選手権の活躍が認められて日本代表経験者やトップリーガーとともにジュニア・ジャパンに選出され、すぐに頭角を現し、日本代表に昇格した。2013年4月に初キャップを獲得すると、その後は中軸の一人としてウェールズ代表の撃破にも貢献。秋にはアウェイで対戦したスコットランド代表からも2トライを奪取し「自信になった」。

 だが、2014年、若きエースは苦しんでいた。7人制代表にも挑戦するも、春の日本代表合宿ではすぐにケガで離脱、代表戦はたった2試合の出場に終わった。また秋も関東大学対抗戦で左太ももを故障し、日本代表の欧州遠征には不参加。その後、筑波大でのプレーも、残念ながら精細を欠いた。当初は再び7人制代表にも挑戦という話もあったが、W杯イヤーでもあり15人制に専念した。

「福岡はスペシャルなものを持っている」

フラン・ボッシュコーチ(右)は、福岡の潜在能力を高く評価している。 【斉藤健仁】

 2015年4月、宮崎で合宿がスタート。「試合に出られる状態だった」と本人は言うが、約1カ月間はほとんどボールを持つ練習には参加しなかった。スポットコーチのフラン・ボッシュ(スポーツサイエンスコンサルタント)とともに、ランニングフォームの改良に取り組んだ。スピードを高めるだけでなく、ケガをしない体作りも狙いだった。グラウンドの端で走る姿は、さしずめ陸上部のようだった。

 今年でウェールズ代表に関わって5年目、世界的WTBだったシェーン・ウィリアムズらも指導したボッシュは言う。「日本の選手は体の動かし方をあまりコーチングされていないので、指導すれば上達する。特に福岡はスプリンターで、スペシャルなものを持っている。かなりのポテンシャルの持ち主です」

 ボッシュコーチのトレーニングを経て福岡は変化を感じていた。「前傾姿勢はいいのですが、胸を張ったりして体が丸まらないようになってきました。足の振り方、蹴り方も意識しています。実感はありませんが、GPSでは良い数字が出たと言っていただきました。また疲れ方が以前と変わってきました。今まではふくらはぎや太ももの後ろなどが筋肉痛になりましたが、太ももの前とかお尻とかに来るようになり、体の全体が使えるようになってきました」

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント