「運命感じる」東京五輪で金メダルを 自転車競技界の期待の星 橋本英也

スポーツナビ

12年からオムニアムを始める

昨年のアジア大会オムニアムで優勝。「勝ったことが大きい」と、アジアの頂点に立てたことの意味を話す 【写真は共同】

――12年に高校を卒業し、鹿屋体育大へ入学されました。この頃にはアジア選手権など海外のレースにも出場するようになりました。海外のレースではどんなことを感じましたか?

 緊張よりも、楽しい気持ちの方が大きかったですね。日本で戦えない選手がいるし、文化の違う選手と走ると、走り方や作戦も違うので。その中で自分の走りが通じるか試すことができるので、楽しかったです。

――そして昨年のアジア大会では男子オムニアムで優勝。オムニアムは五輪種目としては新しいですが、いつ頃からこの種目に取り組み始めましたか?

 12年以降です。そもそも日本にオムニアムという文化がなかったので、その頃から始まった感じです。

――2日間で6種目、長距離系の「スクラッチ」や「ポイントレース」、トラック1周250メートル(助走として2.5周も走る)のタイムを競う「フライングラップ」など、特色の違うレースで構成されますが、この種目の面白さは?

 自転車レースはほかの選手との駆け引きがあります。例えば、前の選手が100パーセントの力で走っていても、その後ろにつく選手は、風の抵抗を受けないため60パーセントの力で走れると。ですので、簡単に言うと、強い人が弱い人に負けることが頻繁に起こります。その駆け引きが面白いところです。

――特に橋本選手が得意な種目は?

 ポイントレースですね。もともとポイントレースをメーンに練習していました。オムニアムでは最近、ルール改正が行われ、ポイントレースの重要度が上がりました。自分にとっては有利なルール改正でした。

――ポイントレースは集団でコースを走り、決められた周回ごとの着順でポイントが加算され、さらに周回遅れの選手に追いつくとポイントをもらえるなど、得点を積み重ねていく種目です。そうなると、ほかの選手とのポイント差を計算しながら走っている感じですか?

 そうですね。レース場によってはモニターを見て得点を確認しながら走りますが、海外のレースでは結構モニターがないので、頭で計算しながら走っていたりもします。

――少し話を戻しまして、アジア大会で金メダルを取れたことは、どんな意味がありましたか?

 自転車競技において、金メダルは勝利のメダル。銀も銅も、負けのメダルです。勝ったということが大きかったですね。
 また、アジア大会は、ほかの競技も並行して行われていて、いろいろなメディアが集まっている中で優勝できたことで、自転車競技の名が売れたことが良かったかなと。自分としても世間への視野が広がるというか、自転車競技をもっといろいろな人に知ってもらいたいなと思いました。

2度の骨折も、見えた自身の課題

――アジア王者として迎えた2015年ですが、今年はリオ五輪の前年となります。五輪については、前よりも意識するようになりましたか?

 そうですね。具体的に見えるようになっています。レースで勝つことで、背負うものが増え、日本を背負っているという意識も強くなりました。

――リオ五輪に出場するためには、アジアに与えられる枠に入る必要があります。ここに入るためには、どんな過程を経ることになりますか?

 五輪に出るためには、UCI(国際自転車競技連合)オリンピックポイントを取得する必要があります。そのため、秋ごろ(10月)から始まるワールドカップに出場しなければいけません。今はそのワールドカップに出場するための枠取りの基準を満たすため、地方で行われている国際レースに出場しようとしています。

――ここまでの手応えは?

 今年の初めに2回、右の鎖骨を骨折してしまいました。そのため2月のアジア選手権(タイ)に出場できず、今になってしわ寄せがきているのですが、逆にそれを経験したことで、競技を客観的に見ることができました。それで自分の位置、立場を改めて再認識することができたので、次のステップを踏むために重要な時間だったと思います。

――課題が見えたと?

 そうですね。自分の課題はスピードです。スピードというのはパワーであって、力を出すには筋肉を増やすことが必要です。ですから、ウエイトトレーニングを積極的に取り入れて、筋肥大を目標にトレーニングしてきました。

――その効果はありましたか?

 JISS(国立スポーツ科学センター)で筋肉の太さを測るMRIがあるのですが、昨年と比べて、今年の方が筋力が上がり、太くなっているという結果が出ました。それが自信につながっています。

東京での金メダルへ「人生を注ぎたい」

今までは目標を立ててこなかったが、20年東京五輪の決定で、「東京で金メダル」が目標となった 【スポーツナビ】

――大きな目標となるのは、20年東京五輪かと思います。地元開催の五輪は、どんな意味を持っていますか?

 それまで目標なく、自転車に乗ることが好きだったのでやっていたのですが、東京に五輪が決まったことは大きかったです。テレビでその瞬間を見ていたのですが、「TOKYO」という文字が発表された時は、本当に驚きました。その時は体に電気が走ったというか。「ここが自分の目標なのかなと」思いました。

――東京に向けて、やらないといけないことは?

 今年の初めに立てた目標というのがあって、リオ五輪ではメダル、東京では勝つことだと。今は、そことのギャップを埋めるためのトレーニングをすることが、一番やらなければいけないことです。五輪を目標とすることで、意識が変わり、練習量も増やしています。いつまでも同じことをやっても強くならないので。

 今年の初めにはオーストラリアで合宿、またイタリアのレースに参加したりしましたが、海外は自分の想像のずっと上をいっていました。欧州の場合、6日間のレースの途中に2日間のオムニアムがあったりするのですが、そこで欧州の選手は優勝しています。そういうのを見ていて、自分ももっとタフにならないといけないと思いました。

――そのような選手たちと肩を並べることが重要だと。

 そうですね。そうしなければ、欧州の選手に五輪で勝てないので。

――最後に、東京五輪での金メダルという目標に向けて、意気込みをお願いします。

 五輪が東京に来るということは、自分が生まれた中で、短い選手期間の中で、なかなか起こることではないし、自分としては運命を感じています。そこに人生を注ぎたいと思っています。まずはそこに向けて、私利私欲を捨て、しっかりと上積みしていきたいです。

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

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