入江陵介が挫折を経て取り戻した自信=世水の金メダルは「普通にいけば取れる」
前回大会は心と体の不安定さがタイムに出た
前日と比べ、試合が始まるとどんどん水温が下がってきたり、会場の冷房がすごく強くなって全体的に(体が)冷やされたりすることがありました。そこはなんとも言えないですけれど、どんなことであれみんな同じ条件なので、すぐに対応していかないといけないと思います。
――あらためて、2年前を振り返ってどんな大会でしたか?
正直あまり調子が良いとは言えない状態でした。肩の痛みがあり、自信を持って臨んでいたかと言えばそうではない大会だったので、自分の心と体の不安定さがタイムにも出ました。そういったところはすごく悔しい思いをした大会ではありますが、その経験があったからこそ、昨年良い結果を出すこともできました。今年はすごく調子が良くて、2年前に比べたら比較にならないほどの状態で来ています。そういった意味で比較対象になるのは良かったと思います。
けがをした時期があったからこそリフレッシュできた
今までできていた動きができなかったり、日常生活にも支障が出たり、水泳も100パーセント練習ができる状況ではありませんでした。大変ではありましたが、その時期があったからこそ、体をもう一回リフレッシュできたし、心もリセットできた。そこからまたもう一度一から作り直せたので、良い機会をもらえたと思います。
――焦りはなかったですか?
やはり13年が良くなかったので、周りの人たちからも1年ゆっくりしてもいいんじゃないかという助言もいただいていました。だから「来年はゆっくりしてもいいや」くらいの軽い感じでいられたので、焦りはまったくなかったです。
――ヘルニアから復帰した14年は好調でしたね。
アジア大会の記録は昨シーズンの世界ランク1位です。その前のパンパシフィック選手権は、冬のオーストラリアで屋外の大会だったので、なかなかタイムを出すことが厳しい条件でした。その中でも(100メートル背泳ぎで)優勝はできたし、昨年は良いシーズンだったと思っています。
――萩野選手がけがをして世界選手権を欠場することになりました。泳げない境遇を経験し、気持ちが分かる部分もあるのではないかと思います。萩野選手に何か声をかけましたか?
あえてしていないですね。やっぱり僕から何か言っても、萩野選手は申し訳ない気持ちでしか連絡できないと思うし、マイナスな気持ちの文章を送らせることも良くないと思うので。本人が一番悔やんでいると思いますし、誰よりも前向きにやっていると思います。そこを変に周りがどうこう言うものではないと今は思っています。
――あえてというのは、自分がけがをしたときに似た感覚があったからでしょうか?
周りの人に心配してもらえるのはありがたいけれど、だからと言ってできることも限られています。周りに心配をかけているという気持ちになるのも、やはり嫌でしたから。(萩野のけがは)選手生命に影響を及ぼすほどではないと聞いていますし、慎重にリハビリも積んでいると思うので、大丈夫だと思います。
世界選手権では100メートルを重視
やはりリオ五輪で結果を残したい、ただそれだけです。ロンドン五輪で3つメダルは取れましたが、金メダルが取れなかった。どうしても金を目指したいという気持ちが強いですし、そこを取らない限りは(現役を)辞めたくないという気持ちもあります。
――バルセロナ大会中には「自分は表彰台の真ん中に立てない人間かも」と言っていたこともありました。金メダルを取る自信は今どのくらいありますか?
それだけの練習もしっかりできていますし、自信もあります。普通にいけば取れるかなというくらいの大きな気持ちを持っています。
――その自信を持てるようになったのはいつ頃ですか?
昨年良い結果、良いタイムが出て前向きな気持ちになれました。今シーズンも順調に来ているので、そういったところだと思います。
――カザンでの世界選手権では、どんなストーリーを思い描いていますか?
(競技順は)100メートルが先なので、そこで良いタイムで優勝できたら、200メートルも問題なくいけると思います。大会の流れ的に100メートルを重視しています。流れに乗って、2つとも金メダルを取りたいですね。
(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)