高阪剛が語る「UFC189」2大王座戦 王者アルド欠場で「逆に面白味が増した」
王者アルドの負傷でメンデスとの王座決定戦に変更となったマクレガーだが「4分で仕留める」とビッグマウスさく裂 【(C)Photo Courtesy of UFC】
そして、もう1試合。王者ロビー・ローラーvs.挑戦者ローリー・マクドナルドのウェルター級タイトルマッチも組まれている。この2大タイトルマッチの見どころを、今回もWOWOW『UFC−究極格闘技-』解説者の高阪剛氏に語ってもらった。
ポイントはテイクダウンをされたあとのマクレガーの動き
ファンもUFCも、そして選手当人も本当に残念に思っているはずですけど、肋骨のケガというのは、練習でけっこう起こりうるケガの場所なんですよ。しかも、これだけの大一番となると、ケガと隣り合わせのギリギリまで追い込んだトレーニングをどうしても積まなきゃいけないから……。まあ、しょうがないんですけど、この欠場は大きいですよね。
――そして急きょ、チャド・メンデスvs.マクレガーのフェザー級暫定王座決定戦になったわけですけど。これはマクレガーにとっては、相性的にはアルド以上の強敵と言ってもいいんじゃないですか?
そうとも考えられますよね。アルドの最大の武器は、回転の早いパンチと、テイクダウンからの強いパウンドですけど、マクレガーってテイクダウンされて、上からパウンドを落とされるシーンっていうのは、これまでの試合でもほとんどなかったですからね。もちろん、テイクダウンディフェンスができているからこそ、下になるシーンがこれまでなかったんですけど。メンデスのようなレスリング力を持った選手との対戦経験がないのも確かなんですよね。
――メンデスのような、全米トップクラスのレスリングの猛者と対戦した経験がないことは、以前から指摘されていましたね。
ひとつの見方としては、もしテイクダウンをされたときのマクレガーの動きがどうなるのか。もしかしたら、初めて見せるテクニックがあるんじゃないかという期待もあるし、それと同時に、「寝かされたら何もできないんじゃないか?」という危惧もまたありますよね。
ただ、今回こうやってメンデス戦を受けたということは、もちろん勝算があると思っているから受けたんだろうし、テイクダウンを仕掛けてくる相手だということは百も承知のはずですから。何か持っているんだろうなって思うんですよ。本当にメンデスみたいなタイプが“天敵”であるならば、なんならこの試合はキャンセルしてもよかったわけだから。だから、マクレガーにはメンデス相手にも何かやってくれるような匂いはありますよね。
――マクレガー自身、これまでずっとテイクダウンディフェンスや、グラウンド技術の向上に取り組んできたんでしょうしね。
そうですね。ただ、マクレガーのあのスタイルで、メンデスにどう対応するのかとも思うんですよ。マクレガーの立ち方や構えを見るかぎり、いわゆる棒立ちなんですよね。腰を落としてタックルに備えるのではなく。腰を落としたと思ったら、後ろ回し蹴りを入れてきたり。おそらくテコンドーの動きですよね。だから、あの高い構えから、メレンデスのタックルへのディフェンスとか、それに対するカウンターの打撃というのがどこまでできるのか。そこは非常に興味がありますね。
――こと打撃に関しては、あの階級でもトップですもんね。
マクレガーはパンチにしろ蹴りにしろ、一見、軽く打っているように見えるんですけど、突き方とかが、体重を拳に集める打ち方をするんですよね。だから前回対戦したデニス・シヴァーは見るも無惨なくらい、ボコボコにされましたよね。あれは、格闘技をそこまで観ていない人は、「なんで、あんなに軽いパンチで血まみれにされているんだ?」って思うかもしれないけど。ホント、一発一発、打つ瞬間に体重を乗せる打ち方をしているんですよ。
――マクレガーは幻想がありながら、同時に「いつメッキが剥がれるか、いつ化けの皮が剥がされるのか」と言われていながら、ここまで圧勝続きできていますからね。
試合の結果で、そういう声をねじ伏せてきてますから、プロとして非常に成立している選手ですよね。またレコードを見ると17勝2敗で、メンデスも17勝2敗で、まったく同じなんですよね。それで、メンデスの2敗は、どちらもアルドに喫した敗戦で、どちらにしてもアルドが絡んでいるということで。マクレガーにしたら、ここでメンデス倒して、暫定王者のベルトを巻いた上で、逆に「ジョゼ・アルド、かかってこいよ」みたいなストーリーができあがっているんじゃないですかね。
マクレガーには人智を超えた何かを起こす期待感がある
王者アルドの欠場でタイトルマッチのチャンスが巡ってきたチャド・メンデス 【(C)Photo Courtesy of UFC】
そうですね。テイクダウンだけじゃなくなって、ボクシング技術もすごく上がっていて。もともと体幹が強いので、当たれば倒せるパンチを持っていたんですけど、さらに磨きをかけてきた感がありますよね。
――アルドとの二度目の対決では、1ラウンド開始早々からアルドをKO寸前まで追い込みましたからね。そして前回は、あのリカルド・ラマスを1ラウンドで圧倒していますし。
だからUFCのフェザー級っていうのは層が厚いなって、観るたびに思いますよね。
――その中でも、ジョゼ・アルド、チャド・メンデス、フランキー・エドガーの3人は、別次元の強さを見せているという。
3人とも、どれか決まれば倒せるという攻撃を、8連発、9連発してきますからね。普通、あそこまではできませんよ。しかも、このレベルの選手の試合はだいたいメインイベントなので、毎回5ラウンド戦なんですよね。それが1ラウンドからすごい運動量で、「おまえ、5ラウンドあるのはわかってる?」って言いたくなる闘い方ですから(笑)。
――この3人の直接対決となると、しょっぱなからアクセル全開ですもんね。
あれは普通、頭の片隅にでも「5ラウンド闘わなきゃいけない」って思ってたら、「ここで体力使ったら最後までもたねえな」とか。「逆に体力を削られて、向こうが有利になるんじゃないか」と考えて、攻撃の手を緩めがちなんですけど。あの3人からは、そういうところがまったく見えませんからね。
――そう考えると、5ラウンド制の試合で戦うというのは、マクレガーにとって不利に働きそうですよね。
だから、考えれば考えるほど、「よく受けたな」と思うんですよ。だいたい、アルド戦を目標にずっと練習していて、それが突然、メンデスに変わるって。そう簡単には気持ちの切り替えはできないはずなんですよね。戦術とか、練ってきた作戦。アルド対策で取り組んできた動きとかも、全部なしになってしまう。振り出しに戻るようなものなんですよ。それを考えると、よほどいまの自分に自信を持っているか……そう考えるしかないんですよね。
――早くもマクレガーは「チャド・メンデスを4分で仕留める」と言っていますしね。
1分とか3分じゃなく、4分というところが、ちょっとリアリティありますね(笑)。きっと3分間で痛めつけて、残り1分のところでトドメを刺すって考えているんでしょうね。いままでの試合を観ると、そんな感じなんで。だからある意味、アルドから変わったとはいえ、単純にカードとしては、面白味が増していますよね。
――では、マクレガーが、そのメンデスの動きを上回るほどの男なのかどうか。
そこを世界中のMMAファンが注目していると思いますよ。本当にメンデスをKOしてしまうんじゃないかという期待と、ホントはたいしたことないんじゃないかっていう疑念と。その両方の見方をする人が世界中にいると思うんで。そういう目をいい意味で裏切れるかどうかですよね。
――どちらが勝つかだけじゃなく、何かすごいものが観られるんじゃないかという期待感ってありますもんね。
いまのUFCというのは、闘い方がかなり確立されてきていると思うんですけど、マクレガーはその常識をひっくり返すんじゃないかという期待感はありますよね。なんとなくですけど、人智を超えた何かが起こる予感がしますね。