快進撃続く29歳スプリンター藤光謙司 自己新連発で「ピークがようやく来た」

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「自分のレースパターンが分かってきた」

好記録を連発する中、レースではさまざまな走り方を試したという 【スポーツナビ】

 長年の積み重ねが実を結び始める一方、一歩先を見据えて模索も続けている。今季序盤から好記録をたたき出したことで、「あまり状態が良くない中で記録が出ているということは、何かしらの要因がある」と分析。その“何か”を探るべく、あえて試合に出続け、さまざまな走り方を試した。

「世界のレースを走ると前半で置いていかれてしまったり、コーナー抜けのあたりで結構勝負がついていて、そこで置いていかれたらどうしようもない。去年と一昨年のシーズンに、僕も前半からいくレースを試してきましたが、前半からいこうと思うレースはやはり後半にもたないというのが自分の中であって。それで今年は最初、前半を抑えるレースをやっていて、ここ最近はまた前半からいってみようというレースを試しています」

 いろいろなパターンを試した結果、「何となく『自分のレースパターンはこれなのかな』というのは分かってきた」という。藤光がつかみ始めた、自分の走りとはどんなものなのか。

「前半からいこうと思うと力みが生まれたり体力を使うので、『(前半から)いこうとはしていないけど、(実際は)いけている走り』が一番の理想ですね。日本選手権で現段階での完成形まで(コンディションを)持っていきたいと思います。(記録的には)20秒1、2くらいでまずは勝負できればいいのかなと。そうすれば、世界選手権でその上のタイムを目指すための一つステップになりますから」

悲願の19秒台へ「勢いがあるうちに狙いたい」

5月の世界リレーで400メートルリレーの銅メダルに貢献するなど、リレーでの活躍も光る 【写真:ロイター/アフロ】

 長く競技人生を続けること自体、容易なことではない。藤光も学生時代はケガに苦しみ、11年テグ世界選手権、12年ロンドン五輪と2年連続で代表落ちした時は「潮時なのかな」と引退を考えたこともある。それでも「まだやり切れていない。まだまだ伸びしろはある」と信じて、日々、積み重ねてきたからこそ、今がある。

 今年最大の目標は今夏の世界選手権だ。ここ数年、リレー要員として代表に招集されることが多かったが、「個人で200メートルに出たいという思いが一番強いです。リレーはもちろん好きだし出たいですけど、今年の世界選手権は絶対に個人で出て、個人で勝負したい」と息巻く。そして「集大成の節目の年」と位置づける来年のリオデジャネイロ五輪では、表彰台を狙うつもりだ。

世界選手権の決勝進出、そして日本人未踏の19秒台へ、藤光の挑戦は続く 【スポーツナビ】

 メダルだけではない。日本人未踏の19秒台突入も視野に入れている。日本記録(20秒03)をはるかに上回るタイムだが、手応えを語る藤光の表情に一点の曇りもない。

「今年は(リオ五輪への)流れをつくる良いシーズンにしたいというか、きっかけを作る年にしたかったし、ある程度記録も狙っていきたいと思っていましたが、思っている以上に、もしかしたら記録も狙えるかもしれないなという状態に仕上がってきています。出せる時に出したいという気持ちはやっぱりあります。年齢も年齢なので、来年、再来年どうなっているか分からないというのもありますし、今、勢いがあって狙えるうちに記録も狙いたいなと思っています」

 まだやり切れていないからこそやり切りたいという渇望感と、もっとできるという自分に対する期待感。その2つを原動力に、マイペースを貫いてきた29歳のスプリンターはこれからも輝き続けるだろう。

(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)

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