シーズンを通して試練に立ち向ったNBL 新リーグへバトンを渡すために必要な考え

堀井幹也

進めたいbjリーグとの情報共有

堀井副理事長はファイナルで有明コロシアムを1万人のブースターで埋め尽くしたbjリーグと「刺激し合いたい」と話した 【スポーツナビ】

 現在日本バスケ界全体で改革を推し進める中、2014−15シーズンはNBLにとってもターニングポイントとなるシーズンでした。FIBAによる制裁問題で皆さまには大変な心配とご迷惑をお掛けしてしまったことは、関係するものとして非常に心苦しく思っております。ただ、今回のタスクフォースの川淵チェアマンを始めとした一連の動きで16年からの新リーグ発足となりましたが、もともとNBLは新しいリーグへ行くためのステップという位置づけのリーグでした。それを大前提に各チームそれぞれが活動をされており、特にプロ形態のチームは行政との勉強会や連動などは以前より行っておりました。

 NBLの多くのチームはbjリーグに比べると、試合会場でのイベントや集客イベントなどは実施しているもののまだ少ないです。それが、「ちょっとやってみようかな」とか「他のチームに入場者数で越えられてしまった」といった意見をチーム関係者から聞くようになりました。そういった面では、新リーグに刺激を受けており、非常に喜ばしい状況だと考えております。bjリーグの試合会場では出店が多く並び、ビールを飲みながら観戦されている方も多くいます。もちろん体育館の問題でお店などを出せる出せないなどはありますが、やはりNBLでもそういったファンの皆さまに喜んでいただけるような会場作りに力をもっと入れていかなければならないと思います。

 NBLのチーム関係者は、bjリーグの多くファンがいらっしゃるチームへ勉強に行くことも一考です。バスケットボールで集客できている琉球ゴールデンキングスさんや新潟アルビレックスBBさん、秋田ノーザンハピネッツさんなどは、やはり人が集まるだけの理由があります。今回の新リーグでNBLとbjリーグの関係が近づいたわけで、全チームがフラットになりました。情報交換もしやすくなりましたし、私自身もbjリーグの方とお会いする機会が増えており、大変良いことだと捉えております。

 ここで一つ、エピソードをご紹介させていただきたいと思います。トヨタ自動車アルバルク東京は2014−15シーズン、演出面の強化を検討していた中、昨年9月にbjリーグの琉球ゴールデンキングスさんとプレシーズンマッチを行いました。琉球さんとの試合後トヨタ東京のフロントスタッフが、「大勢のお客さんの熱狂的な応援がチームを後押ししていて、非常に魅力あるバスケットの試合をされていることに大変感銘を受けた」と言っていました。それをチームに持ち帰り、トヨタ東京も同じように非日常の空間を創り、大勢のお客様に見ていただくことで素晴らしいバスケットをすることができるよう試行錯誤を繰り返し、照明も入れたり、ミラーボールを採用したりと演出に非常に工夫するようになりました。今まではそういった交流が少なかったため気付くことができない部分もありました。NBLの試合を見て刺激を受けるbjリーグの社長さんやGMの方もいらっしゃるようですので、これからますます交流が増えることで、お互いに刺激を受け合いながら、良いところを取り入れ、来年10月の新リーグへとつなげていけたらと思います。

NBLとしての最後のシーズンへ

 最後に2015−16シーズンに向けてのお話を少しだけさせていただきます。通常プレシーズンに組まれる開幕へ向けた強化試合は日本へキャンプに来ている韓国のチームと多く組まれることが多いのですが、韓国の国内リーグ開幕が9月12日と通年より早まり、今年は日本のチームとタイミングが合わなくなりそうです。そこで今年は、日本のチーム同士のプレシーズンマッチが非常に多く組まれることが想定されます。私の意見としては、NBLのチームとbjリーグのチームによる試合をぜひ積極的に行ってほしいと考えています。

 それ以外にも、川淵チェアマンが会見でおっしゃっていたチャンピオンゲームもぜひ行いたいと考えています。両リーグの優勝チームによる対戦で、真の日本一を争うチャンピオンゲームです。ルールの問題などもありますが、bjリーグも来季から外国人をオンザコート2人とするなど変更を行うようですし、ボールは前半と後半で変えるなどが現状では一番現実的かなと考えています。たまたま両チームが三河地域を拠点としているチームですし、地元も非常に盛り上がると思います。新リーグとどのように絡むかなどの詳細は今後つめていかなければいけませんが、NBLとしては実現に向けて前向きに動いていきたいと考えております。

 また、NBLでは2015−16シーズンより東西でカンファレンスを分けることをやめ、1カンファレンス制とすることといたしました。これは和歌山が参加しなくなった影響で、東西のチーム数にばらつきが生じてしまったためです。また、平日開催の試合も増えました。これは未来を見越しての変更です。現在FIBAはワールドカップ(W杯)の予選を17年からホーム&アウェーにしようと働きかけています。そのレギュレーションが決定すれば、代表選手はシーズン中に日本代表の試合を戦わなければいけなくなり、そうするとシーズンがどんどん短くなり、平日に試合日を設定せざるを得なくなります。サッカーでも似たような状況があると思いますが、今のうちから平日開催を増やし、平日だからこそ観戦に来ることができるお客様の層を増やしていくような努力を今のうちからしておきたいと考えています。さまざまな面で、W杯の予選に今から準備していくということです。

 なお、今後新リーグ参入を見越して、チーム名を変更するチームも出てくるということも聞いております。より地域密着とするには地域名を取り入れることは重要だと思います。企業チームも、企業の関係者だけではなく、一般のバスケットボールファンをいかに取り組んでいくことができるかが非常に重要です。

 リーグも、クラブも、過去にとらわれることなく、16年10月にスタートする新リーグ開幕をどのように迎えるのかを考え、ファン目線を大事にしながら、2015−16シーズンを迎えたいと思います。また、各チームは新リーグに向けて5000人規模のアリーナで、3000人、4000人とご来場いただけるようにしていかなければいけません。そのための土台を各チームが作れるよう、リーグとしては自分たちのチームに集中できるような環境を作らなければならないと感じております。NBLとしての最後のシーズンは、新リーグへしっかりとバトンを渡すための年となります。しっかりとバトンを渡せるよう努力してまいりたいと思いますので、応援のほどよろしくお願いします。

堀井幹也

堀井副理事長は「新リーグへしっかりとバトンを渡せるように努力したい」と意欲を示した 【スポーツナビ】

一般社団法人 日本バスケットボールリーグ 副理事長
1960年生まれ、大阪府出身。高校時代は名門洛南高校でバスケットボール部に所属し、インターハイ優勝、全国高校選抜ではキャプテンを務めた。その後、同志社大でインカレに常時出場、東西対向オールスターでは最優秀選手に輝いた。東京海上火災へ入社後はJBL2(日本リーグ2部)で新人王獲得、引退後は業務の傍らミニバスやジュニア、東京海上日動ビッグブルー(現NBDL)でコーチを務めた。2012年7月にはJBA理事とNBA幹事に就任。14年4月にJBA強化副本部長へ就任し、15年4月には兼務でNBL副理事長に就任した。

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