スピルバーグのピッチ走法を徹底分析 ラップタイムから見た英国G1の勝算

JRA-VAN

オルフェとは質が異なるピッチ走法

英国G1プリンスオブウェールズSに挑むスピルバーグ、独特の走法から勝算を占う 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 スピルバーグのG1プリンスオブウェールズS参戦まであと1週間。スピルバーグの走りの特徴を紹介しながら、レース展望をしてみたい。

 スピルバーグは馬体重が500キロ前後という比較的大柄な馬体ながらも、ストライド幅が小さいピッチ走法であるのが特徴的。トレヴやオルフェーヴルに代表されるピッチ走法タイプの馬は、馬群を一気に切り裂く瞬発力が持ち味であり、あるいはオルフェーヴルの全兄ドリームジャーニーのように、コーナー区間での加速力が抜群である傾向が見られるが、スピルバーグは一気の瞬発力を繰り出せず馬群から抜け出すのに手間取った2014年の毎日王冠のように、前述のピッチ走法タイプの馬とは明らかに質の異なった走りを見せる。このエンジンの掛かりが遅いという走りの特性により、最後の直線の長い東京競馬場に実績が偏っていると考えられるだろう。また、右回りコースでの実績が乏しい点は、3歳時の毎日杯以外のレースでは最後の直線が短いためコーナー区間での加速力が要求されてしまい、本来発揮すべく直線でのスパート力が削がれてしまったとも言えるだろう。スピルバーグはピッチ走法ながらも長い直線で真価を発揮する典型的なストレッチランナーだ。

力を入れずに走る省エネ走法

スピルバーグの本質は力を入れずに走る省エネ走法 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 スピルバーグのスパート時における完歩ピッチ(1完歩に要する秒数)のピークは、より馬体重が軽いオルフェーヴルと同等レベルまで脚を速く回転させるものの、スタート後、馬群に取り付くまでにひと苦労するというダッシュ力のなさも見せる。1完歩毎の推進力が弱い、言い換えれば力を入れずに走る省エネ走法というのが、このスピルバーグの走りの本質だろう。意図的にストライドを狭くしてピッチ走法を取り入れている人間のマラソンランナーをイメージすると良いかもしれない。

 では参考として渡英前の最後のレースとなった、今年の産経大阪杯でのスピルバーグ自身の個別ラップタイムを見ていこう。

14秒4−12秒8−12秒7−12秒1−12秒1−11秒6−11秒8−11秒8−11秒7−12秒8

 この日は良馬場開催と比較すれば、200mにつき0秒3ほど遅い馬場だったと推測されるほどの非常に時計の掛かる馬場状態。したがってスピルバーグはラスト1400mから実質200m11秒台での超ロングスパートを敢行したとも解釈できる。着順こそ4着だったが斤量58キロを背負った上での、このロングスパートの質だけを見れば同レースでの1、2着馬以上の評価を与えても良い内容であり、タフなレースとなる英国遠征に期待感を抱かせる走りだったと言えよう。

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