魅力に溢れた日本バスケットの“聖地” 有明と代々木第二にある大事なモノ
ブースターが憧れる“有明”
bjリーグファイナルが行われた有明コロシアム。日本中のブースターがこの地に来ることを夢見ている 【スポーツナビ】
会場となった有明コロシアムの周辺には、ひいきチームのカラーに身を包んだブースターたちの笑顔が溢れていた。同じ色のTシャツを着た外国人に片言の英語で話しかけて「トゥー・ザ・トップ!」とハイタッチを交わす者、フェイスペイントを施した親子、誰よりも目立とうと奇抜な帽子をかぶっている者、多くのファン・ブースターが思い思いの方法で特別な1日を楽しんでいた。
中でも目をひいたのが「ARIAKE」や「FINAL」の文字がプリントされたTシャツの多さ。秋田のチームカラーであるピンクも、浜松や3位決定戦を戦う岩手ビッグブルズの赤も、滋賀レイクスターズのブルーも、すべてのカラーでその文字を目にすることができた。ファイナルに向けた特別なTシャツは、もはやブースターにとっての必需品かのように思えたほどだ。それほどまでに、日本中のブースターが“有明”に憧れ、ここへ来ることを夢見ながら今シーズンを戦ってきたことがうかがえた。
ここにしかないエンターテインメント
この日が初の有明観戦だったというYUTAさん(右)とまなさん(左)。ブースターたちがこの地に憧れを抱く理由が分かったという 【スポーツナビ】
「もちろん選手が主役ではあるんですけれども、私たちはお客様を主役にしたいという思いがありました」と語るのはbjリーグの中野秀光社長。常にファン目線を意識し、客席を歩き回る中野社長は、この日も観客席の通路に立っていた。試合前のファンイベントを眺めているのかと思いきや、「お客さんの顔を見ているんです。このイベントを本当に楽しんでいただけているのかどうか。どんな反応や感想を言っているのか、いつも拝見させていただいています」(中野社長)。
この日が初の有明観戦という浜松ブースターのYUTAさんとまなさんはブースター歴2年目。「なんで皆があんなに有明、有明って言っているのか、正直分からなかったんです。でも今日来たら分かりました。これは来ないと分からない」(まなさん)。「お店とかいっぱいあって、まさにお祭りっていう感じです。でも会場の中に入ると真剣勝負のピリピリした感じがあって、まさに決戦の地という感じ」(YUTAさん)。
2人が話すように、会場の周辺はお祭りそのもの。数多くの出店が軒を並べ、対戦チームのホームタウンにちなんだご当地グルメやB級グルメに長蛇の列ができていた。充実しているのはグルメだけではない。子どもがプレーを楽しめるような簡易式のゴールが設置されたコートや、チームグッズ、バスケットボール関連の商品が充実した売店、各ホームタウンPRコーナーなどさまざまなブースが所狭しと並んでいる。
一歩アリーナへ足を踏み入れるとそこは異空間。アップテンポなBGMが鳴り響く。試合開始が近づくと会場は一気に暗転し、あちらこちらにブースターが持つペンライトが浮かび上がる。盛り上がりを煽るDJの声に1万人のブースターが歓声を挙げ、アリーナ中央に吊るされた大型ビジョンには、決戦に臨む両チームの軌跡が映し出された。
熱心な秋田のブースター、じゅにぃさんは有明の魅力をこうも表現する。「ここってスポーツの聖地じゃないですか。錦織圭(テニス)もプレーするし。いろいろなスポーツが行われてきた歴史ある舞台。でも、私たちにとってはbjリーグの聖地なんです。去年は本当に大興奮でした。来た瞬間に『来年も来たい!』ってすぐ思いました」
全国のブースターがここにしかないエンターテインメントを求め、聖地に思いを馳せながらシーズンを送る。チケットは昨年に続いて完売。選ばれし2チームのブースターたちは、非日常を感じながら愛するチームとともに日本一を目指し、この日も熱戦に声援を送り続けていた。