ミッキークイーン「世代トップ」証明の脚 ルージュ無冠…3歳牝馬勢力図どうなる?

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「力が一枚上」……ルージュバックを力でねじ伏せた

次に狙うはもちろん秋華賞、主役として二冠獲りを狙う 【写真:中原義史】

 26歳の腕達者、その騎乗ぶりも実に冷静だった。「ミッキークイーンの走りやすいリズムで直線に向くことが一番」と、折り合いよく中団やや後方を外から追走。スタートに不安のある馬だが、この日は上手にゲートを出ることができ、「馬場も良かったので前残りだけは警戒していました」と、ある程度ポジションを取りに行った結果、前にルージュバック、クルミナルの実力馬2頭を見ながらという絶好の位置取りに収まった。

「前の2頭についていって、直線で真っ向勝負だと思いましたね」

 浜中が思い描いたとおり、最後の直線525メートルは内からルージュバック、クルミナル、そしてミッキークイーンによる三つ巴の末脚勝負。いったんはクルミナルを競り落としたルージュバックがそのまま押し切るかと思われたが、「自分の馬の方が切れるという自信がありましたから」と浜中。ミッキークイーンもそんな鞍上の期待に応えるカミソリ脚を繰り出し、ゴール前で一気の差し切りを決めてみせた。

「さすがに前の2頭も強いので、かわせるかな?と思っていました。でも、最後はミッキークイーンの力が一枚上だったと思います」

 まさに力でねじ伏せる勝利で、名実ともに3歳牝馬ナンバーワンを証明。池江調教師、浜中ともに最後の一冠、秋華賞(10月18日、京都競馬場2000メートル)での二冠獲りへ早くも自信を見せている。

「コーナー4つも得意ですし、右回りも上手。最後、もう一冠をきっちりと獲らせてあげたいですね」(池江調教師)

秋の決戦はますます熱く、面白く

春無冠に終わったルージュバック、逆襲はあるのか? 【写真:中原義史】

 春の牝馬クラシック二冠を終え、桜花賞はレッツゴードンキ、オークスはミッキークイーンと、関西馬2頭が一冠ずつを分け合った。ルージュバックが“怪物”と呼ばれ、桜花賞トライアルもことごとく関東馬が制した春先を思えば、意外な結果だったと言えるかもしれない。

 だが、ミッキークイーンの脚はまぎれもない“本物”で、池江調教師と浜中の惚れこみようを見れば、3歳牝馬の主役はこの日をもってルージュバックからミッキークイーンに移ったと受け取っていいだろうか?

 いや、オークスのレース内容としては、外めの好位を引っ張り、最後の直線も常に目標とされる位置にいながら、すぐ後ろから強襲してきたクルミナルを跳ね返したルージュバックの競馬は相当に強い。

 3着クルミナルにしても、桜花賞2着を含め良馬場ならば確実に脚を使う。それに「遅い5月生まれだから、まだまだ成長できる」と池添が秋の逆転を誓ったように、成長の伸びしろという点ではこの馬が一番だろう。

 また、大敗した桜花賞馬レッツゴードンキにしても、コーナーを4つ回る京都2000メートルの内回りならば距離をごまかせるのではないか。何よりこの日の敗因を岩田は「距離の前に、今日は桜花賞のようなスタートを切れず、ずっと力んでいた。自分のペースで行ければ」と話している。

 これらのことを考えると、秋華賞もそうすんなり収まると決めつけてしまうのはもったいない。ルージュバック、レッツゴードンキの逆襲はあるのか、クルミナルの逆転はあるのか、それとも一歩リードしたミッキークイーンがさらに突き放してしまうのか――そんな妄想をもう今から始めてしまいそうなくらい、秋の決戦は春以上に熱く、そして面白くなる。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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