「岩下は悪くない」と語る大久保の願い 切望するJリーグと審判部の適切な対応

江藤高志

岩下の判断を尊重「チームのため」

G大阪戦で岩下から受けたファウルについて、大久保(右)は一定の理解を示した 【写真は共同】

 J1川崎フロンターレの大久保嘉人が、リーグと審判部について、率直な意見を語った。きっかけは、第12節のガンバ大阪戦で岩下敬輔から受けたラグビーまがいのタックル。1−1で迎えた後半アディショナルタイムでのプレーだった。手を使ったファウルに対し、ネットでは悪質だとの批判が沸き起こった。そんなプレーについて、大久保が自ら語った。

 大久保の論点は3つだ。

 まず1つ目。岩下は悪くないということ。大久保は「岩下は悪くない。チームのためにやった。レッド覚悟でやった」とそのプレーを肯定する。あの場面で、あの立場の選手は、ああしてでも止めるということ。つまり、当然だと。

 あのファウルをした岩下の判断を尊重しつつ、2つ目の論点として、レフェリーの判定に疑問符を投げかける。「あれは100%退場だよ。あれが退場にならんかったらどれも退場にならんよ」と一刀両断。もちろんレッドカードを出さなかった審判の判断について、それを肯定する意見もある。

 その一つがゴールまでの距離が遠いということ。さらには藤春廣輝が帰ってきていたという点。これをもって「決定機阻止」には当たらないのではないかとの声がある。ただ、それについてもレナトの存在について言及し、反論する。

「(岩下をかわし)抜けてたら藤春は来てたけど、レナトはおったからね。(人数は)2対1やもん。オレが決められんでもレナトが決めてた」。だからレッドだと断言する。

 さらに、3つ目の論点として、岩下への同情を口にした。
「あれは岩下がすごくたたかれているけど、岩下が悪いわけじゃない。リーグと審判団が悪い」

 どういうことか。
「岩下をたたく必要はないよ。リーグがその前に出場停止にしとけばよかった」

 岩下は川崎戦の前節のサンフレッチェ広島戦で物議を醸す行為に及んでいる。レフェリーが見ていない場所で相手選手に肘打ち。後日召喚された規律委員会にて事情聴取を受け、厳重注意にとどまったという件だ。結果的に出場停止にならなかったことで、そもそも批判の声があった。

「(あれで岩下を)出場停止にしなかったことで周りの人たちの『おかしいだろ』という思いが岩下にぶつかるわけよ。それは岩下がかわいそう。岩下が(広島戦での肘打ちで)出場停止になってたら何も言われない。でも、オレにやったあのプレーで、余計に『反省してない』とかって言われる」

 そう言葉をつなげた上で「(広島戦で)処分されないからあいつがかわいそう。リーグが岩下を助けてやれよと思う」と述べた。そして、これだけ問題のプレーが続いたことで「逆に追い詰めている」と同情した。

Jリーグが本来見せたいサッカーとは

岩下のタックルは、サッカーの本質とはかけ離れた行為。それゆえに大久保はレッドカードが妥当だという考えを示した(写真は昨シーズンのもの) 【写真:アフロスポーツ】

 ここであらためて論点をまとめてみる。

 まず大久保は、1つ目の論点で岩下のタックルを全面的に肯定している。プロフェッショナルファウルで問題はないと。その上で、2つ目の論点で適切な判定を審判に切望しているのだ。

 サッカーは審判団の判定も試合を作る要素となる。その認識を持った上で、あの岩下のタックルは手を使っているという点でも悪質だとの考えを持たねばならない。もし仮に、あのファウルがG大阪のゴールから遠いからという理由で、レッドでなかったのだとすれば、今後同じような危ないシーンで「ゴールから遠いためイエロー止まりだ」と高をくくり、手で止める選手が出かねない。ただ、Jリーグが本来見せたいサッカーは、あそこで手を使ったファウルで止めるプレーではないはずだ。

 本当のサッカーファンなら、そしてサッカーの面白さを伝えたいのであれば、岩下を抜き去った大久保のその後のドリブルを見たいことだろう。そして、カバーに戻る藤春の全力疾走を見たかったはずで、さらに大久保の進路をどう妨害するのかに興味は移っていく。

 また、パスを受けようと並走するレナトとの1対2を藤春がどう対処するのかという視点もある。すなわち、大久保の進路を妨害しつつ、レナトへのパスコースを切り、そして大久保のドリブルをどう遅らせるのか、という藤春のプレーだ。そして、これらの藤春の努力を無効化させる大久保とレナトのコンビネーションがそれに続き、最終的に大久保かレナトのどちらかがGK東口順昭との1対1に臨む場面へと移っていく。その上で、東口はポジションを修正しながら、どうにかしてコースを消そうとし、そしてシュートに立ち向かう。そんな瞬間瞬間で遷移する動的な局面での対応がサッカーの醍醐味で、それをJリーグは見せたいはずだ。

 ところが岩下は、サッカーとはかけ離れたプレーで、これらのプレーが実現する可能性をつぶした。上記した可能性が続いていたことを考えると、岩下のファウルが試合の大きな山場を消してしまったという認識を持つべきだ。このG大阪対川崎では、ゴールは1点ずつしか決まっていない。サッカー本来のプレーが、サッカーの本質とはかけ離れた行為で壊されたのだから、レッドであるべき。そういう思いが大久保の言葉には込められていた。

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著者プロフィール

1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にサッカーライターに転身。J2大分を足がかりに2001年から川崎の取材を開始。04年より番記者に。それまでの取材経験を元に15年よりウエブマガジン「川崎フットボールアディクト」を開設し、編集長として取材活動を続けている。

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