飲み過ぎは逆効果?栄養ドリンク活用法 管理栄養士おすすめ!コンビニ飯の選び方

田中夕子

【Getty Images】

 新生活のスタートから1カ月が過ぎ、大型連休も終了。気付かぬうちにたまった疲労を感じる人も少なくないのではないでしょうか? そんな時、元気回復! とばかりに、気軽に手にする栄養ドリンク。缶入りや瓶入り、パッケージや値段もさまざまで、種類豊富な栄養ドリンクですが、ホントの中身を知らずに手にしている人も多いはずです。

 管理栄養士の川端理香さんに聞く「管理栄養士おすすめ!コンビニ飯の選び方」。シリーズ7回目は「意外と知らない栄養ドリンクのチェックポイント」をご紹介します。疲労回復のために、と思っていたら実はこんなにカロリーオーバー、という落とし穴もある栄養ドリンク。失敗しない選び方のポイントをお教えします。

「栄養ドリンク」と「エナジードリンク」の違いって?

 コンビニエンスストアに陳列されているドリンク類を見回すと、水やお茶、ジュースと一緒に、さまざまな「エナジードリンク」が並べられています。
 エナジードリンク、と聞いても今一つピンと来ない、という人も、レッドブルやオロナミンC、と聞けばイメージできるのではないでしょうか? テレビCMなどでも「疲労を解消して元気回復」とうたわれているように、少し疲れたけれど、少し値段のはる栄養ドリンクを飲むほどではないから、エナジードリンクで元気になろう、と手にする人もきっと少なくないはずです。

 では、そんなあなたに質問です。
 栄養ドリンクと、エナジードリンクの違いって、ご存じですか?
 目的はどちらも「元気」になることとされていますが、実際の中身は? と言うと大きく異なっています。具体的な効果や効能を明記できる栄養ドリンクに対して、エナジードリンクは「エネルギー」を摂取することを優先しています。ビタミン類が含まれているものもありますが、栄養ドリンクに比べると疲労回復要素はごくわずかなんです。 実は清涼飲料水と同じ、と言っても過言ではありません。

 エナジードリンクには人が活動するためのエネルギー源となる糖質がとても多く含まれています。ひょっとすると、エナジードリンクを手にする人の中には「脂肪燃焼」や「ダイエット」を目的にしている人もいるかもしれませんが、それはとても危険な勘違い。なぜなら、多くの糖分を含むエナジードリンクは「運動せずに痩せたい」という人にとっては、むしろ必要のないエネルギーをとってしまうことになりかねないのです。

 さらにパッケージを見ると、いかにも「燃えそう」と勘違いしがちなものもあり、普通のジュースを飲むよりは体にいい、と思ってしまうのかもしれませんが、含まれている糖分の種類はジュースと変わりません。むしろ「疲労回復」のためにエナジードリンクを手にするのならば、オレンジやグレープフルーツなどの果汁100%ジュースのほうが適しているのです。

栄養ドリンク選びのチェックポイント

1)「ビタミンB1」や「タウリン」が入っているか

 栄養ドリンクはエナジードリンクと異なり、疲労回復のための効果があるとされる栄養素が含まれています。
 たとえば疲労回復ならば、豚肉やうなぎに多く含まれるビタミンB1や、タコやイカに豊富に含まれるタウリンを摂取すると効果的だと言われています。そのため、栄養ドリンクを選ぶ際にもビタミンB1やタウリンが含まれているか、というところが第一のチェックポイントです。

 加えて、より早く効果を感じたいという場合は、カフェインが多く含まれているもののほうが即効性はあると考えられています。ただし、カフェインの効き目には個人差があり、ほんの少量を摂取しただけでも眠れなくなったりする人もいる一方で、毎日多量のコーヒーを飲むなど日頃からカフェインを摂取している人は、効きやすい人と同量を摂取してもあまり効果が感じられないこともあります。
2)値段の違いはどこにある? 大半は「カフェインの量」

 またよく聞かれるのが「同じ種類でも値段が全然違うけれど、やはり高いものを選んだほうがいいですか?」ということです。
 確かに、同じ銘柄のもので300円のものもあれば1,000円のものもある。そうなれば「高いほうが体にいい」と思うのが人間の心理です。

 では、成分表をよく見比べてみて下さい。大きな違いは何か? というと、大半はカフェインの量による違いです。つまり、カフェインを多く摂取すればそれだけ即効性を感じられるので「疲れがとれた」と錯覚してしまう。そのためにカフェインがより多く含まれたものに高い値段がついている場合もあるのです。
 中身(成分表)を見ずに、値段だけで「こっちのほうがよさそうだ」と手にするのではなく、何が違うのか、自分の目で見て判断する習慣をつけるようにしましょう。
3)疲労は体からのサイン!

 仕事や運動で疲れた体に栄養ドリンクを摂取すると、一時的とはいえ「疲れがとれた」と思うことがないわけではありません。
 ただし、忘れてはならない大きなポイントがあります。
 人間が疲労を感じる時は、体からの「休ませてくれ」という合図でもあります。適度な運動は体のため、とはいえ、強度な運動をすれば当然疲労もたまり、特に肝臓に負担がかかり、強い疲労感が生じます。そこで、「今日はたくさん走って疲れたから、明日の疲労回復のために」と栄養ドリンクを飲んだらどうなるか。実は、疲労回復どころか、疲れた内臓をさらに稼働させることになるので、むしろ疲労が増大してしまうのです。

 体を無理させて、酷使させると内臓の機能や細胞の機能も低下します。実は元アスリートでも、現役時代に体を酷使し続けたことによって、現役引退後に内臓疾患に苦しんでいるという人も少なくはありません。
 手軽に摂取できる栄養ドリンクは、魔法のドリンクのように思われるかもしれませんが、やはり大切なのは日頃の食事。疲れにくい体をつくるためには、体を回復させる食べ物を日常から摂取することが一番効果的なのです。

栄養ドリンクはあくまで“お助け飲料”

 眠くてたまらないけれど、どうしても明日の朝までに終わらせなければならない仕事があるという時には、栄養ドリンクの助けを借りることもあるでしょう。ですがそれはあくまで「どうしようもない時」のお助け飲料であり、日常的に摂取するものではありません。疲労回復に効くビタミンB1も、水溶性のビタミンなのであまり多く摂取すれば尿や汗となり体外に排出されますので、たくさん摂取したから疲れない、というわけではないのです。

 食事をセーブして栄養ドリンクやエナジードリンクを飲み、ダイエットするはずだったのにむしろ太ってしまった、とか、翌日に疲労を残さないために栄養ドリンクを飲んで寝たら、むしろ眠りが浅くなって疲労回復どころか余計に体が重たく感じる、ということは決して珍しいことではありません。
 安易に栄養ドリンクを濫用するのではなく、体のサインに耳を傾け、休む時は休む。それでもどうにもならない時は、しっかり成分表を見て、値段やパッケージに惑わされず、自分の目で見て適したものを選択して下さい。

川端理香プロフィール

管理栄養士。元日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ。スポーツ栄養Watsonia代表(http://kawabatarika.com/index.php)。Jリーグチームや選手、プロ野球、ゴルフ、柔道選手などのサポートをし、日本オリンピック委員会強化スタッフとして、全日本男子バレーボールチームなどを担当。トップアスリートからスポーツ愛好家まで、スポーツをする人の競技力アップのためのサポートに務めている。著書に『スポーツ選手の完全食事メニュー』『10代スポーツ選手の栄養と食事』『子供の身長を伸ばす栄養と食事』 など
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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