500円でできる食事トレーニング 管理栄養士おすすめ!コンビニ飯の選び方

田中夕子

【Getty Images】

 寒さも和らぎ、見上げれば満開の桜の花が咲く季節。絶好のスポーツ日和の到来に、心も体もウズウズするという人も少ないのではないでしょうか。新学期や新年度、スタートの春に「今年こそフルマラソンデビュー!」「今年は4時間を切るぞ!」と意気込む方もいるのでは?
 
 管理栄養士の川端理香さんに聞く「管理栄養士おすすめ!コンビニ飯の選び方」。シリーズ4回目は、500円以内で食事トレーニングにもなる「ランナーのためのワンコインランチ」をご紹介します。普段の練習時や、レース前、よりよい体で気持ちよく走るために、賢い食事で周囲に差をつけましょう。

ランナーが意識すべきこと

1)ランナーは貧血になりやすい
 東京マラソンのように大きな市民マラソンも各地で開催され、ランニングブームの今、いろいろな場所で走る方々を目にすることが増えてきました。体重管理やスタミナ維持のために、きっと普段からいろいろと食事に気を付けている方々が多いとは思いますが、意外と見落とされがちなのが、ランナーの「貧血予防」です。

 実はコンクリートの道路を走ることで、足の裏に衝撃がかかり、血管がつぶれるために貧血になりやすいのはご存知でしょうか。普段から貧血を予防するためにタンパク質や鉄分、ビタミンCを意識的に摂取しているという方は問題ありませんが、「レース前はエネルギーをためなきゃ!」と炭水化物中心の食事にしたはずなのに、いざレースとなったら途中で貧血が悪化してしまい走れなかった、という人も決して少なくないのです。

2)マラソン挑戦するなら、食生活も準備しよう
 マラソンにチャレンジしようと思っても、ストレッチや練習のジョギングをせずにいきなり走ってもケガや体の不調を招くばかりであるように、ランナーに適した食生活も、レースの直前だけ気を付ければいいというわけではありません。マラソンに必要なエネルギーを蓄え、心肺機能や筋肉の神経系の働きを高めるために、トレーニングだけでなく食生活もじっくりと時間をかけて体を作り変えていくことが大切です。

カーボローディングの注意点

1)タンパク質は徐々に減らそう
 カーボ(グリコーゲン)ローディングという食事の方法を耳にしたことがある人も少なくないのではないでしょうか。これは、持久力を伸ばすための食事の方法で、食べたものをエネルギー、走るためのガソリンとして蓄えることを目的としています。

 エネルギーを蓄積できるのは肝臓と筋肉だけなので、より多くのエネルギーをためておくために、レースの3日前からごはんやめん類などの主食や、フルーツ、イモ、カボチャなど炭水化物が豊富なものを普段の1.5〜2倍摂取する。いつもごはんはお茶碗で1杯食べている、という人ならば、少し多めの1.5杯にするとか、ごはんにうどんやパスタをつけるイメージを持っていただければ分かりやすいでしょう。

 とはいえ食事量を増やしたら太るだけ。レースが近づき、練習量が減ればそれだけ筋肉へのダメージも少なくなるので、筋肉を組成するタンパク質の摂取を徐々に減らしていきましょう。

2)余分なカロリーに注意!
 さらに、レース前は余分なカロリーを取らないこと、脂肪の摂取を控えることも重要なポイントです。レース前に縁起を担いでトンカツを食べる、という人もいるかもしれませんが、豚肉のビタミンB1はエネルギーの代謝を良くしてくれるものではあるけれど、揚げ物の脂肪分は余計です。豚肉を食べるとしても、ゆでたり蒸したり油を使わない調理法、脂肪分の少ない部位を摂取するようにしましょう。

レースまでの食事スケジュール

 では実際のコンビニ飯は、どんなふうに選べばいいのか。レースまでのおすすめ食事スケジュールをご紹介します。

1)通常期:「納豆巻き」と「サバの缶詰」と「野菜ジュース」など
 カーボ(グリコーゲン)ローディングはレース3日前からの食事法ですので、普段の食事はエネルギーを摂取し、血液をつくるためのタンパク質、鉄分、ビタミンCを取り入れることが大切です。特に日本人は鉄分が少ないので、卵、豆乳、納豆などの植物タンパク質と、野菜ジュースやミカンなどのビタミンCを一緒に摂取する。

 貧血の方に聞くと、鉄分=レバー、というぐらい、レバーは鉄分が食材ですが、コンビニで買うのはなかなか難しい。アサリの缶詰やサバの缶詰は鉄分が高く、タンパク質も豊富です。やや塩分が高いのが気になるところですが、走って汗をかく時期であればさほど気にすることはありません。納豆巻きとサバの缶詰と野菜ジュースならば、十分ワンコイン(500円)で収まるはずですし、余裕があればゆで卵や、おでんを加えてもOK。
 鉄分を摂るというと特別なことのように感じるかもしれませんが、たとえば、丼ものを買って、ごはんにサバの缶詰の身をほぐして一緒に食べるだけでも効果は十分です。

2)レース3日前:「豚キムチや玄米おにぎり」「果汁100%ジュース」など
 レース3日前になったら、タンパク質を少なめにして炭水化物とビタミンB1を摂取するために、たとえば豚キムチやウナギのおにぎりや、ゴマや玄米のおにぎりにするとビタミンB1を摂取することができます。一緒に果汁100%のジュースや、野菜ジュースなどビタミンCや、梅に含まれるクエン酸を摂るとより効果的にエネルギーを蓄えることができます。

 3日前はまだ練習もしている時期ですので、筋肉や骨へのダメージもあるので、タンパク質を全く摂らないのではなく、まずは70〜80%にして、徐々に50%、20%と減らしていくように。脂肪を抑えて、タンパク質は控えめに、糖質の量を増やす。このポイントを忘れないようにしましょう。

3)レース当日:食事は「3時間半前」までに!
 レース当日はエネルギー以外、余計なものは必要ありません。むしろポイントはいかに消化させるか、ということなので、お赤飯や白飯のおにぎり、おもちなどの炭水化物をレースの3時間半前には食べ終わるように摂取するとよいでしょう。レース前日のトンカツのように、「体にいいから」とレース直前に野菜を食べている人も見かけますが、野菜はあまり消化のいいものではないので、迷信にとらわれず、体に必要なエネルギーを上手に取り入れることを意識して下さい。

川端理香プロフィール

管理栄養士。元日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ。スポーツ栄養Watsonia代表(http://kawabatarika.com/index.php)。Jリーグチームや選手、プロ野球、ゴルフ、柔道選手などのサポートをし、日本オリンピック委員会強化スタッフとして、全日本男子バレーボールチームなどを担当。トップアスリートからスポーツ愛好家まで、スポーツをする人の競技力アップのためのサポートに務めている。著書に『スポーツ選手の完全食事メニュー』『10代スポーツ選手の栄養と食事』『子供の身長を伸ばす栄養と食事』 など
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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